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てか俺が誰かなんて俺が知りたい。
約一年ほど前の話だ。気付いたら公園に突っ立ってた。あれ、俺、さっき死んだよね?
単車乗っててトラックにぶつかったのを境に記憶が途切れている。でもあの距離感だと絶対死んでる。横の壁とバンパーに挟まれて死んでる。夢?
ふらふらと歩いてトイレに向かった。洗面台で顔洗って鏡見たら知らない男が映ってた。
いや、誰だよ。
どうやら俺は一度死んで生まれ変わったらしい。いや、生まれ変わりなら普通は赤ん坊からやり直すと思うから、転生したと言うべきか。無地のTシャツジーパンという、ここがメタバース空間なら初期設定の格好のまま突っ立ってた。ただ鏡に映ってた顔は生前の俺より男前だ。体格も良いらしく、歩いてるだけでも地面までの距離感がバグってる。まるっきり他人。死ぬ前の自分とは別の人物。いや、誰だよ。
途方に暮れて区役所に行って自分の死亡を確認した。ちゃんと記憶通りの日付に死んでた。あとこの見覚えのない自分が誰かも確認しようとしたが、無理だった。デフォルトアバターの俺は免許証も財布も何も持ってなかった。役所の職員に誰だと聞かれたら死んだ人間の住所と名前と生年月日を答えた。何なら親兄弟の名前なり年齢なり戸籍情報も全部言った。すごい目で見られた。
「それでしたらご両親を訪ねられたらどうですか」
道理だ。訪ねにいった。
息子が死んで1ヶ月、突然現れた「俺が息子だ」という赤の他人に母は気が狂ったように塩を投げつけた。本当に俺が俺でなくなったことと、頼れないことを悟った。
俺は一体誰だ。
……そこからが大変だった。
まず金が無い。区役所に戻って記憶喪失ということにして生活保護の申請をした。NPOが運営する身寄りがない人向け宿泊所を紹介され、日雇いのバイトをしながら医者の診断を受けた。保険証がないから十割負担だ。何十万とかかって特に異常なし。
次は戸籍取得。これには弁護士を経由して一年かかった。裁判所が提示する「本当に無戸籍か」を確認するクエストを一つずつ解消していってようやく認められた。
その間に俺は生前の俺を知る人間に一人ずつ会いに行ったが、結果は散々だ。新手の宗教勧誘を疑われ「馬鹿にしてんのか」「死者を冒涜するな」と怒鳴られた。怒鳴られ揶揄され過ぎて追い詰められ、「俺がわからないのか」と襟を持って問い詰めるようになったら狂人扱いされた。おかしい。どうしてみんな俺が分からない。同じ時を過ごした思い出を語れば「どうして知ってる」と瞳の恐怖の色を強くした。俺がおかしいのか。
――でもお前は俺が分かるだろ?
「こんなところに居たのかぁ」
恋人だった。
同棲してた。
一緒に住んでたはずの部屋に帰ったらとっくに引き払われててどこに行ったか分からなくなってた。職場もやめたらしくてずっと見つけられなかったけど、ようやく見つけた。
約一年ほど前の話だ。気付いたら公園に突っ立ってた。あれ、俺、さっき死んだよね?
単車乗っててトラックにぶつかったのを境に記憶が途切れている。でもあの距離感だと絶対死んでる。横の壁とバンパーに挟まれて死んでる。夢?
ふらふらと歩いてトイレに向かった。洗面台で顔洗って鏡見たら知らない男が映ってた。
いや、誰だよ。
どうやら俺は一度死んで生まれ変わったらしい。いや、生まれ変わりなら普通は赤ん坊からやり直すと思うから、転生したと言うべきか。無地のTシャツジーパンという、ここがメタバース空間なら初期設定の格好のまま突っ立ってた。ただ鏡に映ってた顔は生前の俺より男前だ。体格も良いらしく、歩いてるだけでも地面までの距離感がバグってる。まるっきり他人。死ぬ前の自分とは別の人物。いや、誰だよ。
途方に暮れて区役所に行って自分の死亡を確認した。ちゃんと記憶通りの日付に死んでた。あとこの見覚えのない自分が誰かも確認しようとしたが、無理だった。デフォルトアバターの俺は免許証も財布も何も持ってなかった。役所の職員に誰だと聞かれたら死んだ人間の住所と名前と生年月日を答えた。何なら親兄弟の名前なり年齢なり戸籍情報も全部言った。すごい目で見られた。
「それでしたらご両親を訪ねられたらどうですか」
道理だ。訪ねにいった。
息子が死んで1ヶ月、突然現れた「俺が息子だ」という赤の他人に母は気が狂ったように塩を投げつけた。本当に俺が俺でなくなったことと、頼れないことを悟った。
俺は一体誰だ。
……そこからが大変だった。
まず金が無い。区役所に戻って記憶喪失ということにして生活保護の申請をした。NPOが運営する身寄りがない人向け宿泊所を紹介され、日雇いのバイトをしながら医者の診断を受けた。保険証がないから十割負担だ。何十万とかかって特に異常なし。
次は戸籍取得。これには弁護士を経由して一年かかった。裁判所が提示する「本当に無戸籍か」を確認するクエストを一つずつ解消していってようやく認められた。
その間に俺は生前の俺を知る人間に一人ずつ会いに行ったが、結果は散々だ。新手の宗教勧誘を疑われ「馬鹿にしてんのか」「死者を冒涜するな」と怒鳴られた。怒鳴られ揶揄され過ぎて追い詰められ、「俺がわからないのか」と襟を持って問い詰めるようになったら狂人扱いされた。おかしい。どうしてみんな俺が分からない。同じ時を過ごした思い出を語れば「どうして知ってる」と瞳の恐怖の色を強くした。俺がおかしいのか。
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