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16:ランクマッチ
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ランクマは俺もシーズンが始まると回し始めるが、今までマスターに昇格したことは無い。上を目指せば目指すほどプレイ時間が必要になる。俺の場合は仕事を犠牲にしないと無理だろう。そこまでして目指そうと思ったことがない。配信業をやってるマキやヤカモレさんとも誘われない限りプレイしなかったし、マスター昇格を目指してプレイ時間を増やした2人に割り込もうとも思わなかった。
平日の帰宅後、土日、俺は俺でゲームしながら2人の配信を垂れ流していた。『もうダイヤ?』『マキ上手くなってる』『教官に鍛えられただけある』そんなコメント欄を見る。俺もそう思った。俺より早くダイヤ帯に上がったマキに少し誇らしく思う。しかしこのままマスターを目指せるかというと、どうだろう。マキはとにかく障害物を挟んだ中~遠距離の撃ち合いが下手だが、FPSってのは本来そういうものだ。馬鹿みたいにいきなり殴りかかるようなものじゃない。上に上がれば上がるほど、得意分野だけじゃ対応出来なくなる。
「やっぱ索敵キャラほしいな」
遮蔽物に隠れた敵をマキが察知できるよう、ヤカモレさんが提案した。居た方が良い。索敵キャラと移動に特化したキャラがパーティに居ると立ち回りが楽になる。移動に特化したキャラは今まで俺が担当していた。2人構成になった今、どうするつもりか見ていたらヤカモレさんが上下の移動が出来る飛行キャラに変更していた。移動に特化したキャラだ。つまり、今まで通りのキャラで俺がこの二人に加わっても俺の必要性が薄れてしまう。
――だからどうした、という話だが。呼ばれてすら居ない。俺は遠距離から狙撃後にキャラ特有の能力で高速移動して詰めて追撃する、一人で完結した戦い方が好きだ。ソロプレイはこれが一番安定する。たかが趣味のゲーム、自分の好きなスタイルでプレイした方が良い。
『ヤカモレがジェット使うなら教官どうするんだ』
『ぜっとさん索敵すんの?』
リスナーの間では俺が加わる前提でコメントがされている。知らん。そもそも2人から声がかかってない。俺は俺でやる。さっさとダイヤに上がろうと野良のソロプレイを続けた。
しばらくして俺もダイヤ帯に上がり、激増したチーターを目の当たりにして真剣に攻略法を考えていたらマキから「手伝って」と連絡が来た。久しぶりに配信で会うマキは至極悔しそうで、なるほどやはりと俺を呼ばなくなった理由を察した。俺が下手だの馬鹿だの罵るのが嫌だったんだろう。嫌われたもんだ。だがそれよりも俺自身の実力が買われていることの方が気分が良い。マキが切羽詰まってどうしようもなくなったら呼ぶ相手は、俺だったのだ。
「ぜっとさんはさあ、マスター上がろうと思ってる? あんま無理しなくていいよ~」
一緒にやりたいんだか、やりたくないんだか、唇を尖らせたマキが色んな感情を含ませて俺を気遣う。2人と違ってマスターを目指さない俺を、自分たちに付き合わせるのは悪いといった体だ。今更過ぎる。
俺は固定メンバーを持つのは本当に久しぶりだ。打ち解けるまで大分かかったし、今でも息が合ってるかどうか分からないが、久しぶりに目的を持ってゲームして、戦略を考えて、真面目にプレイしてる。やりがいを感じていて、頼られると嬉しい。……楽しいんだ。
もう単純に楽しいから、俺はマキともヤカモレさんともゲームしてる。
でもそう素直には言ってやらない。
「……お前、マスター昇格するって大見得切ったんだろ? 手伝ってやるよ」
「はあ~~~~、すみませんねぇ!」
盛大に溜め息をついてわざとらしく謝ったあと、「よろしくお願いします!」とマキは畏まった。自分の立ち位置が分かっているのだ。クソデカボイスにヤカモレさんが笑う。マキのいつも通りの態度に、俺も何も気にせず今まで通りマキやヤカモレさんに接した。
ただ、俺の操作キャラだけは索敵キャラへと鞍替えした。
平日の帰宅後、土日、俺は俺でゲームしながら2人の配信を垂れ流していた。『もうダイヤ?』『マキ上手くなってる』『教官に鍛えられただけある』そんなコメント欄を見る。俺もそう思った。俺より早くダイヤ帯に上がったマキに少し誇らしく思う。しかしこのままマスターを目指せるかというと、どうだろう。マキはとにかく障害物を挟んだ中~遠距離の撃ち合いが下手だが、FPSってのは本来そういうものだ。馬鹿みたいにいきなり殴りかかるようなものじゃない。上に上がれば上がるほど、得意分野だけじゃ対応出来なくなる。
「やっぱ索敵キャラほしいな」
遮蔽物に隠れた敵をマキが察知できるよう、ヤカモレさんが提案した。居た方が良い。索敵キャラと移動に特化したキャラがパーティに居ると立ち回りが楽になる。移動に特化したキャラは今まで俺が担当していた。2人構成になった今、どうするつもりか見ていたらヤカモレさんが上下の移動が出来る飛行キャラに変更していた。移動に特化したキャラだ。つまり、今まで通りのキャラで俺がこの二人に加わっても俺の必要性が薄れてしまう。
――だからどうした、という話だが。呼ばれてすら居ない。俺は遠距離から狙撃後にキャラ特有の能力で高速移動して詰めて追撃する、一人で完結した戦い方が好きだ。ソロプレイはこれが一番安定する。たかが趣味のゲーム、自分の好きなスタイルでプレイした方が良い。
『ヤカモレがジェット使うなら教官どうするんだ』
『ぜっとさん索敵すんの?』
リスナーの間では俺が加わる前提でコメントがされている。知らん。そもそも2人から声がかかってない。俺は俺でやる。さっさとダイヤに上がろうと野良のソロプレイを続けた。
しばらくして俺もダイヤ帯に上がり、激増したチーターを目の当たりにして真剣に攻略法を考えていたらマキから「手伝って」と連絡が来た。久しぶりに配信で会うマキは至極悔しそうで、なるほどやはりと俺を呼ばなくなった理由を察した。俺が下手だの馬鹿だの罵るのが嫌だったんだろう。嫌われたもんだ。だがそれよりも俺自身の実力が買われていることの方が気分が良い。マキが切羽詰まってどうしようもなくなったら呼ぶ相手は、俺だったのだ。
「ぜっとさんはさあ、マスター上がろうと思ってる? あんま無理しなくていいよ~」
一緒にやりたいんだか、やりたくないんだか、唇を尖らせたマキが色んな感情を含ませて俺を気遣う。2人と違ってマスターを目指さない俺を、自分たちに付き合わせるのは悪いといった体だ。今更過ぎる。
俺は固定メンバーを持つのは本当に久しぶりだ。打ち解けるまで大分かかったし、今でも息が合ってるかどうか分からないが、久しぶりに目的を持ってゲームして、戦略を考えて、真面目にプレイしてる。やりがいを感じていて、頼られると嬉しい。……楽しいんだ。
もう単純に楽しいから、俺はマキともヤカモレさんともゲームしてる。
でもそう素直には言ってやらない。
「……お前、マスター昇格するって大見得切ったんだろ? 手伝ってやるよ」
「はあ~~~~、すみませんねぇ!」
盛大に溜め息をついてわざとらしく謝ったあと、「よろしくお願いします!」とマキは畏まった。自分の立ち位置が分かっているのだ。クソデカボイスにヤカモレさんが笑う。マキのいつも通りの態度に、俺も何も気にせず今まで通りマキやヤカモレさんに接した。
ただ、俺の操作キャラだけは索敵キャラへと鞍替えした。
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