15 / 45
zh@
15:固定配信
しおりを挟む
固定をやると決めたときの俺をぶん殴りたい。忘れていた、馬鹿なんだ、こいつは。
「ぜっとさんぜっとさん、まず俺を守ってぇ!?」
「守る意味ねーんだよ」
「ファイトなら勝てる! ファイトなら勝てるって! 俺を信じろ!!」
何でわざわざ安地外走ってるやつを俺が助けなきゃならない。別パに突っ込んでいってる馬鹿を放置して目の前の敵をやっているとヤカモレさんが「うるっせぇ」と延々と騒がしいマキを笑っていた。ずっと何か言ってる。聞いてられなくて流石に口を出す。
「お前まじで必要なキャリー要請しろよ、さっきの試合じゃ安地回って蘇生中のブデルとかち合って2対1で相手して落ちてんじゃねーか。必要なのはそういうときだろ」
「だって蘇生中の初期ブデが目の前居たら攻撃するって」
「それはいいんだよ、報告来て俺かヤカモレさんがキャリーしてたら繋がってたっつってんだよ、何で一人でやろうとしてんだ、ドームファイト舐めてんのか」
「今は!?」
「今はお前守る意味ねぇ」
「何で!?」
「なんっ……お前話聞いてるか!?」
「ね、も、わらっ、笑ってッ、画面見れな」
俺とマキのやりとりにひいひいヤカモレさんが笑い続ける。試合中に駄目出しするとアドレナリン出てるマキにやたら口答えされてヤカモレさんが笑い死ぬから出来るだけ控えてるんだが、まじでうるせぇからつい言ってしまう。試合終わってからまとめて言ったらそれはそれで鬼詰めしてしまうしな。おかげでついたあだ名が「教官」だ。こんな馬鹿を生徒に持つんじゃなかった。
ゲームをプレイ中はとにかく突っ込んで行くキャラしか画面に映らないからそういうbotか前にしか進めない猪にしか見えないんだが、実物はやたら顔がいいからタチが悪い。ムカついてもうこいつとやるのを辞めようと何度思っても配信画面でマキの顔を見るとフレンドを切れない。
初めて3人で飲みに行ったときも最悪だった。
マキは俺の姿を見た途端、「うわ~、想像通りのイケメンが来たぁ」と笑った。その顔がずっと頭から離れない。まいった。俺は想像以上だった。顔が良過ぎる。破顔してても顔が良いのが分かる。尻が切れ上がった涼やかな目元も角ばった輪郭もスッと通った高い鼻筋も男らしく線が真っ直ぐなのに、くっきりとした二重や黒々した長いまつ毛、本人の性格から出る柔らかい表情が万人にウケるように調整されている。これをイケメンと呼ばない人間はいない。見てられなくて不自然に目をそらしてしまった。俯いたら今度はシンプルなTシャツに浮き上がる筋肉と引き締まったウエストが目に入るからたまらない。目のやり場がない。タイプ過ぎる。この日は飲み過ぎてしまった。日本酒を水のように飲んで酔いが回ってようやく言いたいことが言えた。次の日の体調は最悪だった。
会うべきじゃなかった。ゲームをしている限りは声しか聞こえないからただの騒がしい突っ込んで行くだけのbotなのに、もう俺からこいつを切ることは出来ない。
「ごめんって! まじでぜっとさんうるさい~~~!」
試合後にマキに改めて鬼詰めしたら不満げに文句を言われた。
「文句があるなら上手くなれ」
そう告げると黙った。
しばらくしてマキとヤカモレさんは突然マスターを目指すと言って、俺を配信に誘わなくなった。
「ぜっとさんぜっとさん、まず俺を守ってぇ!?」
「守る意味ねーんだよ」
「ファイトなら勝てる! ファイトなら勝てるって! 俺を信じろ!!」
何でわざわざ安地外走ってるやつを俺が助けなきゃならない。別パに突っ込んでいってる馬鹿を放置して目の前の敵をやっているとヤカモレさんが「うるっせぇ」と延々と騒がしいマキを笑っていた。ずっと何か言ってる。聞いてられなくて流石に口を出す。
「お前まじで必要なキャリー要請しろよ、さっきの試合じゃ安地回って蘇生中のブデルとかち合って2対1で相手して落ちてんじゃねーか。必要なのはそういうときだろ」
「だって蘇生中の初期ブデが目の前居たら攻撃するって」
「それはいいんだよ、報告来て俺かヤカモレさんがキャリーしてたら繋がってたっつってんだよ、何で一人でやろうとしてんだ、ドームファイト舐めてんのか」
「今は!?」
「今はお前守る意味ねぇ」
「何で!?」
「なんっ……お前話聞いてるか!?」
「ね、も、わらっ、笑ってッ、画面見れな」
俺とマキのやりとりにひいひいヤカモレさんが笑い続ける。試合中に駄目出しするとアドレナリン出てるマキにやたら口答えされてヤカモレさんが笑い死ぬから出来るだけ控えてるんだが、まじでうるせぇからつい言ってしまう。試合終わってからまとめて言ったらそれはそれで鬼詰めしてしまうしな。おかげでついたあだ名が「教官」だ。こんな馬鹿を生徒に持つんじゃなかった。
ゲームをプレイ中はとにかく突っ込んで行くキャラしか画面に映らないからそういうbotか前にしか進めない猪にしか見えないんだが、実物はやたら顔がいいからタチが悪い。ムカついてもうこいつとやるのを辞めようと何度思っても配信画面でマキの顔を見るとフレンドを切れない。
初めて3人で飲みに行ったときも最悪だった。
マキは俺の姿を見た途端、「うわ~、想像通りのイケメンが来たぁ」と笑った。その顔がずっと頭から離れない。まいった。俺は想像以上だった。顔が良過ぎる。破顔してても顔が良いのが分かる。尻が切れ上がった涼やかな目元も角ばった輪郭もスッと通った高い鼻筋も男らしく線が真っ直ぐなのに、くっきりとした二重や黒々した長いまつ毛、本人の性格から出る柔らかい表情が万人にウケるように調整されている。これをイケメンと呼ばない人間はいない。見てられなくて不自然に目をそらしてしまった。俯いたら今度はシンプルなTシャツに浮き上がる筋肉と引き締まったウエストが目に入るからたまらない。目のやり場がない。タイプ過ぎる。この日は飲み過ぎてしまった。日本酒を水のように飲んで酔いが回ってようやく言いたいことが言えた。次の日の体調は最悪だった。
会うべきじゃなかった。ゲームをしている限りは声しか聞こえないからただの騒がしい突っ込んで行くだけのbotなのに、もう俺からこいつを切ることは出来ない。
「ごめんって! まじでぜっとさんうるさい~~~!」
試合後にマキに改めて鬼詰めしたら不満げに文句を言われた。
「文句があるなら上手くなれ」
そう告げると黙った。
しばらくしてマキとヤカモレさんは突然マスターを目指すと言って、俺を配信に誘わなくなった。
69
あなたにおすすめの小説
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
【完結】おじさんダンジョン配信者ですが、S級探索者の騎士を助けたら妙に懐かれてしまいました
大河
BL
世界を変えた「ダンジョン」出現から30年──
かつて一線で活躍した元探索者・レイジ(42)は、今や東京の片隅で地味な初心者向け配信を続ける"おじさん配信者"。安物機材、スポンサーゼロ、視聴者数も控えめ。華やかな人気配信者とは対照的だが、その真摯な解説は密かに「信頼できる初心者向け動画」として評価されていた。
そんな平穏な日常が一変する。ダンジョン中層に災厄級モンスターが突如出現、人気配信パーティが全滅の危機に!迷わず単身で救助に向かうレイジ。絶体絶命のピンチを救ったのは、国家直属のS級騎士・ソウマだった。
冷静沈着、美形かつ最強。誰もが憧れる騎士の青年は、なぜかレイジを見た瞬間に顔を赤らめて……?
若き美貌の騎士×地味なおじさん配信者のバディが織りなす、年の差、立場の差、すべてを越えて始まる予想外の恋の物語。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ヤンデレ王子と哀れなおっさん辺境伯 恋も人生も二度目なら
音無野ウサギ
BL
ある日おっさん辺境伯ゲオハルトは美貌の第三王子リヒトにぺろりと食べられてしまいました。
しかも貴族たちに濡れ場を聞かれてしまい……
ところが権力者による性的搾取かと思われた出来事には実はもう少し深いわけが……
だって第三王子には前世の記憶があったから!
といった感じの話です。おっさんがグチョグチョにされていても許してくださる方どうぞ。
濡れ場回にはタイトルに※をいれています
おっさん企画を知ってから自分なりのおっさん受けってどんな形かなって考えていて生まれた話です。
この作品はムーンライトノベルズでも公開しています。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる