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槇人
27:おうちデート
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zh@の家は距離的に言えばチャリでも行ける。マウンテンバイク持ってるからそれで行こうかとも思ったけど、買い物があるから電車に乗った。駅に隣接したスーパーで適当に惣菜とお菓子と酒を買って、zh@の家まで歩いた。
zh@の家は築年数がそれなりにありそうなオートロックマンションだった。着いたと連絡すると部屋番号が返ってきた。インターホンに入力すると無言でドアが開く。部屋前のインターホンでも同じで、ピンポンを鳴らしたらすぐzh@が出迎えた。
「うす」
玄関ドアを開いて俺の顔を見るzh@に短い挨拶をする。zh@はさっきまでチャットアプリで見てた通り、白のロンTを着ていた。襟がよれてて前かがみになると鎖骨が見える。下はグレーのスウェットで裸足で、完全に部屋着だ。無防備な姿に、本当にzh@の家に来たんだなってちょっとグッと来てしまった。着替えて出かけてきた俺の格好は気合を入れ過ぎてしまったかもしれない。今日はベイカーパンツに白シャツを合わせてる。いつもより綺麗めだ。デートか。勝手に気まずくなってお気に入りのキャップをその場で脱いだ。
「何日居るつもりだ」
zh@は挨拶を返さず俺の買い物袋を見る。大袋を2つ買ってきていた。大荷物に見えるが、スナック菓子が多い。
「ぜっとさん何食うか分かんなかったから、俺が好きなやつ全部買ってきた」
「菓子ばっかじゃねぇか」
「酒もあるよ。飲も」
中身を見せようと袋の口を開いたが、zh@の覗き込む姿に俺が焦ってしまった。部屋着のロンTは鎖骨どころかその下のものまで見えてしまうんじゃないかと思うくらい伸びている。その先は散々俺がオカズとして頂いてしまった乳首が。目をそらすどころかそのまま凝視していたが、流石にそこまでは見えずにzh@は「まあ、入れよ」と身を翻した。
やばい。俺もう意識してる。今日はあのキスをした飲み会の延長線じゃない。普通に遊びに来ただけ、と思い直してから部屋に上がった。
zh@の部屋はよくある男の一人暮らしのそれで、しかもゲーマー仕様だった。PCの排熱と配線を意識して、L型のゲーミングデスクを椅子が壁際になるように設置している。モニターの背面と背中合わせになるようにソファが設置されて、ソファ下のロボット掃除機がぎりきり入るくらいの隙間に配線がまとめられていた。埃1つ残さない働き者のお掃除ロボは、部屋の角で充電中だ。ソファの向かいにある薄型のテレビは黒のスチーム素材のテレビラックの一番上に鎮座して、下の段には据え置き型のゲームが並んでいる。テレビのすぐ横にはスライド式の扉があり、狭い部屋を少しでも広く見せるために開け放たれ、よくある1ldkの間取りで寝室だった。思わずその部屋からは目をそらそうとしたけど、壁に飾られたものを発見すると目が離せなくなった。
「単スナ!」
モデルガンだ。俺らがやってるゲームの。実物大。
「限定生産のめちゃくちゃ高いやつだ!」
「気付いたら買ってた」
「えーっ、触っていい!?」
「いいぞ」
zh@はにたりと得意げな顔をした。さてはこれ見せるためにわざわざ部屋のドア開けてたな。発売が決まった時にネットニュースになったけど、気づいたら買えるみたいな値段じゃなかった。金持ちめ~!
「バンッ!」
思ったより重量のあるおもちゃの銃を手に取り、zh@に向けて撃った。スコープもちゃんとついてて覗ける。
「78」
スコープの中でzh@がダメージ報告した。
「いやもっとダメージあるし! ヘッドショット! 一撃ノック!」
「お前のエイムでヘッショなわけない」
「この距離なら当たるわ!」
ぎゃんぎゃん言い返すと、笑いながらzh@は俺が買ってきた買い物袋の中から冷蔵商品を取ってキッチンへ向かった。背の低い一人暮らし用の冷蔵庫を開けて中に入れている。その間、俺はしげしげとモデルガンを眺めていた。ゲームのキャラは軽々持ち上げてるけど、重量もあるし結構でかい。
「これ手に持って撃つの無理じゃね?」
「元ネタの銃はもっと重いらしいぞ。床に設置して撃つらしい」
「へえ~」
やたら完成度の高いモデルガンを手に持ったまま、zh@のうんちくを聞く。元ネタは重いから分解して二人がかりで運ぶんだとか、だからこれも分解出来るようになってる、ボルトアクション式でここのハンドルでロック解除できる、ゲームのモーションでもこういう――銃を手に持ったままの俺に近付いてきて、構造を指差しながら話すもんだから、結構距離が近い。相槌打ちながら聞いてたら、ふと顔を上げたzh@と目が合った。
「……金払う」
途端に顔を背けて財布取りに行っちゃった。買い物袋に入れたままだったレシートを見て、半額の端数を切り上げた札を俺に差し出してくる。ばつの悪そうな顔を見て再確認した。
「ぜっとさん、本当に好きなんだなあ」
俺のことが。
「……悪かったな、オタクで」
zh@はゲームのことを言われたと思ったらしい。あー、うん、それもね。でも俺もゲーム好きだし、もっと語ってほしい。zh@の耳心地の良い声を聞くのは前から結構好きだった。
「いいじゃん。ゲームしようよ」
いくつかスナック菓子を手にとって、勝手にテレビ前のソファに座った。
zh@の家は築年数がそれなりにありそうなオートロックマンションだった。着いたと連絡すると部屋番号が返ってきた。インターホンに入力すると無言でドアが開く。部屋前のインターホンでも同じで、ピンポンを鳴らしたらすぐzh@が出迎えた。
「うす」
玄関ドアを開いて俺の顔を見るzh@に短い挨拶をする。zh@はさっきまでチャットアプリで見てた通り、白のロンTを着ていた。襟がよれてて前かがみになると鎖骨が見える。下はグレーのスウェットで裸足で、完全に部屋着だ。無防備な姿に、本当にzh@の家に来たんだなってちょっとグッと来てしまった。着替えて出かけてきた俺の格好は気合を入れ過ぎてしまったかもしれない。今日はベイカーパンツに白シャツを合わせてる。いつもより綺麗めだ。デートか。勝手に気まずくなってお気に入りのキャップをその場で脱いだ。
「何日居るつもりだ」
zh@は挨拶を返さず俺の買い物袋を見る。大袋を2つ買ってきていた。大荷物に見えるが、スナック菓子が多い。
「ぜっとさん何食うか分かんなかったから、俺が好きなやつ全部買ってきた」
「菓子ばっかじゃねぇか」
「酒もあるよ。飲も」
中身を見せようと袋の口を開いたが、zh@の覗き込む姿に俺が焦ってしまった。部屋着のロンTは鎖骨どころかその下のものまで見えてしまうんじゃないかと思うくらい伸びている。その先は散々俺がオカズとして頂いてしまった乳首が。目をそらすどころかそのまま凝視していたが、流石にそこまでは見えずにzh@は「まあ、入れよ」と身を翻した。
やばい。俺もう意識してる。今日はあのキスをした飲み会の延長線じゃない。普通に遊びに来ただけ、と思い直してから部屋に上がった。
zh@の部屋はよくある男の一人暮らしのそれで、しかもゲーマー仕様だった。PCの排熱と配線を意識して、L型のゲーミングデスクを椅子が壁際になるように設置している。モニターの背面と背中合わせになるようにソファが設置されて、ソファ下のロボット掃除機がぎりきり入るくらいの隙間に配線がまとめられていた。埃1つ残さない働き者のお掃除ロボは、部屋の角で充電中だ。ソファの向かいにある薄型のテレビは黒のスチーム素材のテレビラックの一番上に鎮座して、下の段には据え置き型のゲームが並んでいる。テレビのすぐ横にはスライド式の扉があり、狭い部屋を少しでも広く見せるために開け放たれ、よくある1ldkの間取りで寝室だった。思わずその部屋からは目をそらそうとしたけど、壁に飾られたものを発見すると目が離せなくなった。
「単スナ!」
モデルガンだ。俺らがやってるゲームの。実物大。
「限定生産のめちゃくちゃ高いやつだ!」
「気付いたら買ってた」
「えーっ、触っていい!?」
「いいぞ」
zh@はにたりと得意げな顔をした。さてはこれ見せるためにわざわざ部屋のドア開けてたな。発売が決まった時にネットニュースになったけど、気づいたら買えるみたいな値段じゃなかった。金持ちめ~!
「バンッ!」
思ったより重量のあるおもちゃの銃を手に取り、zh@に向けて撃った。スコープもちゃんとついてて覗ける。
「78」
スコープの中でzh@がダメージ報告した。
「いやもっとダメージあるし! ヘッドショット! 一撃ノック!」
「お前のエイムでヘッショなわけない」
「この距離なら当たるわ!」
ぎゃんぎゃん言い返すと、笑いながらzh@は俺が買ってきた買い物袋の中から冷蔵商品を取ってキッチンへ向かった。背の低い一人暮らし用の冷蔵庫を開けて中に入れている。その間、俺はしげしげとモデルガンを眺めていた。ゲームのキャラは軽々持ち上げてるけど、重量もあるし結構でかい。
「これ手に持って撃つの無理じゃね?」
「元ネタの銃はもっと重いらしいぞ。床に設置して撃つらしい」
「へえ~」
やたら完成度の高いモデルガンを手に持ったまま、zh@のうんちくを聞く。元ネタは重いから分解して二人がかりで運ぶんだとか、だからこれも分解出来るようになってる、ボルトアクション式でここのハンドルでロック解除できる、ゲームのモーションでもこういう――銃を手に持ったままの俺に近付いてきて、構造を指差しながら話すもんだから、結構距離が近い。相槌打ちながら聞いてたら、ふと顔を上げたzh@と目が合った。
「……金払う」
途端に顔を背けて財布取りに行っちゃった。買い物袋に入れたままだったレシートを見て、半額の端数を切り上げた札を俺に差し出してくる。ばつの悪そうな顔を見て再確認した。
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