神様の喫茶店 ~こだわりの珈琲とともに~

早見崎 瑠樹

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気まぐれにしてみる

いなり

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 神社のなかにいる。

 カーペットがひかれ、こたつが置いてある。奥にはシステムキッチンがあり、コンロには銀色のポットから湯気が立ち上っている。

 ここが神社のなか。

「とりあえず、座るのじゃ」

 どう上に見ても、中学生以上には見えない少女が座布団を指し示す。和衣装に身を包んだその少女はまたもや美しい顔立ちで、もし同年代だったら、恋に落ちていたこと間違いない。

 とりあえず座っておく。身近な座布団にお尻を落ち着かせると、少女と高良玉垂命こうらたまたれのみことも座布団に座る。

「我は宇迦之御魂うかのみたまじゃ。人は稲荷とも呼んでおる。して、お前は何者じゃ?」

 少女の声でありながら、言われた言葉には貫禄があって、それだけ長く生きてきたのだと感じられた。

「しn…」
篠乃木しののぎ 科斗しなとさんです」

「…です」

「…そうか、それで何用じゃ?」

「コーヒーをのみに来た」

「…そうかい」

 そう言うと宇迦之御魂命は手招きをする。

「コーヒーですね?」

 真横から声が聞こえる。

 慌てて横を向くと狐がいた。狐らしく目が鋭いが、表情は穏やかに感じる。

「うむ、彼女らにコーヒーを出してやってくれ」
「分かりました」

 彼は四足でキッチンの方に向かい、キッチンに飛び乗ると器用に作業を始めた。あのぷにぷに肉球でどんな風にして物を持っているのか。

「あの狐は我の神使じゃ。あやつを助けて以来ずっと助けてくれておる」

 宇迦之御魂命は彼を見つめる。

「律儀な奴じゃ」

「狐が神使だから、稲荷神社は狐の石像があるんですね」

「そうじゃよ、神使は神の顔の役割も持っていてな。人は神使の姿に神を見出だし信仰するんじゃ」

「宇迦之御魂の姿が狐だと思っている人も多いよね」

 高良玉垂命が言う。

 そう言えば、僕自信もそう思っていた。ライトノベルや漫画、神社の狐もそうだが、あまりにも狐を前に出しすぎて、稲荷は狐というイメージが出来上がっているように思う。

「それじゃよ、神ではなく神使に焦点が行きすぎて、我は力が衰えるばかりじゃ」

 幼き見目の稲荷は頭を抱える。

「お待たせしました。コーヒーです」

 肉球を器用に使って盆を持ってくる。本当にあの肉球はどうなっているのだ。

 こたつ机の上にひょこっと顔を出している様子は見ていて可愛らしいが、ふと遥かに自分よりも格上の存在だと思うと、不思議な感覚になる。

「ありがとう…ございます」

 何か不思議な感覚だ。

「ありがとう」

 高良玉垂命も礼を言う。

 秋の冷たい風で冷えた手をコーヒーカップで温める。じんわりと熱が手に伝わる。

「ふう、暖かい。あ、いたただきます」

 一口、あの喫茶店で飲んだものと同じ薫りが口の中に広がる。

「…これって?」

「あ、分かりますか?とある方から仕入れているといいましたけど、宇迦之御魂のことなんですよ」

「食物と言えば、お稲荷さんですもんね。納得です」

「大した違いはないと思うのじゃが。ただ、自信は持っておるかの」

 稲荷はクックッと笑う。幼い見た目なのにその行為がどうに入っていて、少し面白い。

「どうかしたかね?」
「いえ、美味しいです」

 稲荷は満足げに頷く。

「ところで、科斗よ」

「はい?」

「お前は我らが見えるのか?」

 思い出したようにそれを聞いてくる。
 稲荷は真っ直ぐにこちらを見つめている。

「ええ、見えます」

「不思議ですね。私のお店に来たとき驚きました。現代ではなかなかお目にかかれませんよ」

「そうじゃな、面白いものじゃ」

 二柱はじっとこちらを見る。どうにも恥ずかしい。友達がほとんどいない僕にとって注目されると言うのは不思議な体験だ。

宇迦様うかさま

 狐が言う。

「おっと、すまぬな」

 宇迦之御魂命はふっと目を外した。

ーー ーー ーー

 気づくと僕は近所の駅にいた。

「…………え?」
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