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気まぐれにしてみる
おぼろげに
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「えっと?」
さっと辺りを見回す。
なぜ駅にいるのか。一瞬前は稲荷社の中にいたはずだけど。
幸いなのは駅のホームではなく、発券機近くの待ち合い場所にいることだ。ホームにいたらお金を払って出る必要があったのだ。
「宇迦之御魂が意識を外したから吐き出されたようですね」
ふと横から声が聞こえる。
高良玉垂命が横にならんで立っていた。
「意識から外れたから?」
「ええ、あの空間は彼女が作り出しているものですから、そこに私たちがいないと彼女が少しでも思えば…」
「吐き出される?」
彼女が頷く。
なんとなく理解したようで、全く理解できていない。ひとまずあの少女が神的存在だということが肌で感じられた。
「でもなんでここなのでしょう?」
疑問を口にする。
高良玉垂命は辺りを見回すと、すっと指を指し示す。そこは駅舎の隅、庇で雨が辛うじて当たらない程度の所に小さな社があった。
「稲荷神社?」
小さな木でできた社だ。かなり古いものなのか、木には微かに苔が生えている。扉は開けてあり中には小さな鏡がある。
「篠乃木さんはここによく来られるんですか?」
彼女が社を覗きながら聞く。
「大学の通学に使っていますよ。ただ、最近は車を使うことも多いのですけど」
「篠乃木さんに縁があって、都合よく社の扉が開いてい……」
『ピロン』
彼女の言葉は甲高い電子音によって遮られる。ふと見ると彼女の手にスマートフォンが握られていた。
神でもスマートフォンを持っているようだ。若干の驚きを持って彼女を見ていると、慣れた手つきで操作し始める。
「宇迦之御魂からでした」
彼女がスマートフォンの画面をこちらに向ける。有名なSNSのチャット画面だ相手は宇迦之御魂と書いてある。
『すまない!』
『ミスじゃ』
『少し意識を外したばっかりに…』
その文面の下には、ごめんなさいをしているスタンプが送信してある。
普通に使いこなしている。たぶん、僕よりは確実に上手そう。
「お稲荷様も驚いたのですかね?」
「気づいたら私達がいなかったわけですから、かなり驚いていたと思いますよ」
彼女は手を引っ込める。一瞬目を離した隙に手からスマートフォンが消えている。
「なんとなく人間味溢れる感じがします。神様がスマホを持っていたり、うっかりミスをしたり」
高良玉垂命は困った顔をして。
「そう言われると、やっぱりむず痒い感覚になります。私達は人ではないのですから」
覚えのある会話だ。
神様が人間的であることに少し違和感を感じつつも、なんとなくしっくり納得してしまう。
「では、そろそろ帰りましょうか」
空を見上げると日が沈みかけていた。まだ秋とはいえ、あと少しもしたら日が暮れてしまうだろう。
「そうします。またお会いましょう」
「ええ、後日」
高良玉垂命は北に向かって歩き始める。僕の家は南だ。自然と逆方向に足を向ける。
「あ、そう言えば、喫茶店は開かな…」
振り向いて言おうとした言葉は最後まで言えなかった。と言うのも、一瞬前までいたはずの彼女の姿が消えていたからだ。
「……やはり、神なんですね」
さっと辺りを見回す。
なぜ駅にいるのか。一瞬前は稲荷社の中にいたはずだけど。
幸いなのは駅のホームではなく、発券機近くの待ち合い場所にいることだ。ホームにいたらお金を払って出る必要があったのだ。
「宇迦之御魂が意識を外したから吐き出されたようですね」
ふと横から声が聞こえる。
高良玉垂命が横にならんで立っていた。
「意識から外れたから?」
「ええ、あの空間は彼女が作り出しているものですから、そこに私たちがいないと彼女が少しでも思えば…」
「吐き出される?」
彼女が頷く。
なんとなく理解したようで、全く理解できていない。ひとまずあの少女が神的存在だということが肌で感じられた。
「でもなんでここなのでしょう?」
疑問を口にする。
高良玉垂命は辺りを見回すと、すっと指を指し示す。そこは駅舎の隅、庇で雨が辛うじて当たらない程度の所に小さな社があった。
「稲荷神社?」
小さな木でできた社だ。かなり古いものなのか、木には微かに苔が生えている。扉は開けてあり中には小さな鏡がある。
「篠乃木さんはここによく来られるんですか?」
彼女が社を覗きながら聞く。
「大学の通学に使っていますよ。ただ、最近は車を使うことも多いのですけど」
「篠乃木さんに縁があって、都合よく社の扉が開いてい……」
『ピロン』
彼女の言葉は甲高い電子音によって遮られる。ふと見ると彼女の手にスマートフォンが握られていた。
神でもスマートフォンを持っているようだ。若干の驚きを持って彼女を見ていると、慣れた手つきで操作し始める。
「宇迦之御魂からでした」
彼女がスマートフォンの画面をこちらに向ける。有名なSNSのチャット画面だ相手は宇迦之御魂と書いてある。
『すまない!』
『ミスじゃ』
『少し意識を外したばっかりに…』
その文面の下には、ごめんなさいをしているスタンプが送信してある。
普通に使いこなしている。たぶん、僕よりは確実に上手そう。
「お稲荷様も驚いたのですかね?」
「気づいたら私達がいなかったわけですから、かなり驚いていたと思いますよ」
彼女は手を引っ込める。一瞬目を離した隙に手からスマートフォンが消えている。
「なんとなく人間味溢れる感じがします。神様がスマホを持っていたり、うっかりミスをしたり」
高良玉垂命は困った顔をして。
「そう言われると、やっぱりむず痒い感覚になります。私達は人ではないのですから」
覚えのある会話だ。
神様が人間的であることに少し違和感を感じつつも、なんとなくしっくり納得してしまう。
「では、そろそろ帰りましょうか」
空を見上げると日が沈みかけていた。まだ秋とはいえ、あと少しもしたら日が暮れてしまうだろう。
「そうします。またお会いましょう」
「ええ、後日」
高良玉垂命は北に向かって歩き始める。僕の家は南だ。自然と逆方向に足を向ける。
「あ、そう言えば、喫茶店は開かな…」
振り向いて言おうとした言葉は最後まで言えなかった。と言うのも、一瞬前までいたはずの彼女の姿が消えていたからだ。
「……やはり、神なんですね」
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