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欲しいものとは
件の社
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しばらく歩くと、記憶の混乱も落ち着き始める。相も変わらず、頭の中には朧気の記憶が流れ込み続けているが、なんと言えば良いのだろうか。これはあくまでも他人の記憶なのだ。
「朧気は何の神様として祭られているんですか?」
ふとした疑問を口にする。
「確か、知恵の神様だったはずですよ。地域で困ったとき、朧気に祈りを捧げると、それを解決するような知恵が村人たちに与えたとか」
「へええ、すごい神様なんですね」
「なんと言っても神様ですからね。どんな神様でも、何かしら凄いんですよ」
高良玉垂命ははにかんだように言う。誰であったとしても、褒められることは、嬉しいことなのだ。
「話は変わりますけど、だいぶん様子が変わってきましたね」
周りを見渡すと、開けた丘の風景から森に変わっていた。杉が頭上高いところで枝を広げ、心地よかった太陽の光を遮っている。光があまり届かないためか、なんとなく暗い雰囲気が漂う。
「そうですね、朧気の社はこの先なのですけど、なにか森に元気がないようです」
「森に元気がない?」
「朧気は土地神なのですが、土地神というのはその土地そのものといっても過言じゃないんです」
「つまり、森に元気がないというのは…」
「朧気に異常があるということだと思います」
普通に見てもただの森に見える。ただの暗い森。だが、やはり元気がないという表現はこの森にぴったりだと感じてしまう。
ーー ーー ーー
どれくらい歩いただろうか、神社を出てからすでに一時間近く歩いた気がする。
「ここです!」
高良玉垂命が立ち止まる。
視線を彼女に向けると、彼女は小さな山道に目を向けていた。
「ここは?」
「朧気の社への参道です」
高良玉垂命が後ろを向く。
つられてそちらを見ると、道を挟むようにして道が続いている。どうやら、ダム湖に続いているようだ。ただ、その道は鎖で封鎖され、侵入を阻まれていた。
「前までは、この道を使って村から参拝に来ていたようですね」
「…………」
「さあ、行きましょう」
高良玉垂命はそう言うと、歩き始める。
朧気も神で彼女もまた神様だ。同じ神様として思うことがあるのだろう。頭の中でうごめく慰めの言葉は、結局彼女に言えない。
「………はいっ」
少し進むと、すぐに階段になり、道が上に続いていく。
上を見ると、近いところに鳥居が見えるので、それほど長い階段ではない。階段には落ち葉が重なり、最近はほとんど道が使われていないことがわかる。
間も無く、階段を上りきったのだが、そこには小さな神社があった。小さいと言っても、祠という大きさではなく、かなり小さい家と表現できるほどの大きさだ。
全く手入れされていないせいか、雑草がそこかしこに生えており、神社の瓦の屋根にもうっすらと苔が生えている。
「ここが朧気の社…」
拝殿に近づく。
小さめのお賽銭箱がおいてある。扉は閉じられて中は見えない。
「これは、まるで人から忘れられたような……」
僕は振り向き、高良玉垂命を見る。
高良玉垂命は怒ったような、悲しそうな顔をしていた。
「高良玉垂命さん…?」
高良玉垂命は無言で僕のとなりを通りすぎると、拝殿の扉を叩く。
「朧気!ここを開けなさい」
彼女の声は静かだが、それでも良く響く声でそう言った。
「………高良玉垂命様?」
低く威厳がある声が、疑問の韻をたたえて聞こえてくる。
いつの間にか、僕の横にその人が立っていた。僕の脳に流れ込む記憶の主、だが、横に立っている人はあの喫茶店に現れた人ではなかった。
「お久しぶりです」
穏やかな声を出したその人の容姿は、威厳があり、聡明で、美しい見目をした男神だった。
「だったら、あの妖怪は一体……」
「朧気は何の神様として祭られているんですか?」
ふとした疑問を口にする。
「確か、知恵の神様だったはずですよ。地域で困ったとき、朧気に祈りを捧げると、それを解決するような知恵が村人たちに与えたとか」
「へええ、すごい神様なんですね」
「なんと言っても神様ですからね。どんな神様でも、何かしら凄いんですよ」
高良玉垂命ははにかんだように言う。誰であったとしても、褒められることは、嬉しいことなのだ。
「話は変わりますけど、だいぶん様子が変わってきましたね」
周りを見渡すと、開けた丘の風景から森に変わっていた。杉が頭上高いところで枝を広げ、心地よかった太陽の光を遮っている。光があまり届かないためか、なんとなく暗い雰囲気が漂う。
「そうですね、朧気の社はこの先なのですけど、なにか森に元気がないようです」
「森に元気がない?」
「朧気は土地神なのですが、土地神というのはその土地そのものといっても過言じゃないんです」
「つまり、森に元気がないというのは…」
「朧気に異常があるということだと思います」
普通に見てもただの森に見える。ただの暗い森。だが、やはり元気がないという表現はこの森にぴったりだと感じてしまう。
ーー ーー ーー
どれくらい歩いただろうか、神社を出てからすでに一時間近く歩いた気がする。
「ここです!」
高良玉垂命が立ち止まる。
視線を彼女に向けると、彼女は小さな山道に目を向けていた。
「ここは?」
「朧気の社への参道です」
高良玉垂命が後ろを向く。
つられてそちらを見ると、道を挟むようにして道が続いている。どうやら、ダム湖に続いているようだ。ただ、その道は鎖で封鎖され、侵入を阻まれていた。
「前までは、この道を使って村から参拝に来ていたようですね」
「…………」
「さあ、行きましょう」
高良玉垂命はそう言うと、歩き始める。
朧気も神で彼女もまた神様だ。同じ神様として思うことがあるのだろう。頭の中でうごめく慰めの言葉は、結局彼女に言えない。
「………はいっ」
少し進むと、すぐに階段になり、道が上に続いていく。
上を見ると、近いところに鳥居が見えるので、それほど長い階段ではない。階段には落ち葉が重なり、最近はほとんど道が使われていないことがわかる。
間も無く、階段を上りきったのだが、そこには小さな神社があった。小さいと言っても、祠という大きさではなく、かなり小さい家と表現できるほどの大きさだ。
全く手入れされていないせいか、雑草がそこかしこに生えており、神社の瓦の屋根にもうっすらと苔が生えている。
「ここが朧気の社…」
拝殿に近づく。
小さめのお賽銭箱がおいてある。扉は閉じられて中は見えない。
「これは、まるで人から忘れられたような……」
僕は振り向き、高良玉垂命を見る。
高良玉垂命は怒ったような、悲しそうな顔をしていた。
「高良玉垂命さん…?」
高良玉垂命は無言で僕のとなりを通りすぎると、拝殿の扉を叩く。
「朧気!ここを開けなさい」
彼女の声は静かだが、それでも良く響く声でそう言った。
「………高良玉垂命様?」
低く威厳がある声が、疑問の韻をたたえて聞こえてくる。
いつの間にか、僕の横にその人が立っていた。僕の脳に流れ込む記憶の主、だが、横に立っている人はあの喫茶店に現れた人ではなかった。
「お久しぶりです」
穏やかな声を出したその人の容姿は、威厳があり、聡明で、美しい見目をした男神だった。
「だったら、あの妖怪は一体……」
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