32 / 45
ひととなか
ひまたぎにて
しおりを挟む
ここは朝食の会場だ。バイキング形式の朝食で、好きなものを取って食べられるのだけど、ついつい取りすぎてしまうのは僕だけじゃないはずだ。
「ふぅ、よく寝ました」
向かいに座る夏奈子は言う。
「それは何より、僕はあんまり眠れなかったよ」
「そうなんですか?」
「恥ずかしい話だけど、場所がかわると眠れなくなっちゃうんだよね」
「ああー、分かります。私も小さい頃はそんな感じになってました」
夏奈子は大きくうなずく。
ーー ーー ーー
ここは、出雲大社。
「昨日、面白いものを見たのだ」
名も無き神が声を潜めて、そんなことを話す。
「また戯言か。良いだろう、言ってみろ」
「………………神域に人の子がおった」
たっぷりと溜めて言ったことはそんなことで、名も無き神は自信ありげな表情を作る。
「人の子じゃと?」
「そうだ。女子と男子だった」
「ふぅん、興味深い話じゃが、意味のない話じゃ。人の子など歩けば当たるほどにおるし、たまたまであろう」
女神は名も無き神にそう言う。
「たまたまであってもだ。人の子は神が見えておったのだ。人が彼岸の者を見たのはいつ以来かわからんぞ?」
「ふむ、一理あるか。まあ、我々にして見れば、些細なことじゃ」
女神は興味深げに一考するが、すぐにどうでも良いといった具合に、目の前の菓子に注意を向ける。
「些細なこと、か。ただ、その些細なことでさえも、今は面白い」
「神はみな、暇なものじゃろう?」
女神は言い聞かせるように言う。
「そうだな…ただ、何か刺激が欲しい」
名も無き神はそう口にする。女神はというと、また少し興味深げな表情をしていた。
ーー ーー ーー
「そう言えば、昨日は君と仲良くしている人の子とあったぞ」
大国主神は高良玉垂命に言う。
高良玉垂命はというと、ちょうど口に運んでいたご飯を落としてしまったところだ。
「し、科斗さんが?」
「うん、境内を歩いているところを見かけてね、少しだけ話をしたんだ。あと、女の子も一緒だったな」
大国主神はそう言い、手元にあった牛乳を飲む。
「夏奈子さんまで…」
高良玉垂命はそう言い、頭を抱える。
「神無月にここにくるのは少しばかり、まずいかもしれんのぉ」
となりに座っている宇迦之御霊が口を開く。
高良玉垂命は頷く。頭を抱えたまま。
「神々の気を引きすぎるでしょう」
「うん、僕も少し心配だから、気をつけるように言っておいたけど…」
「ありがとう。ただ…」
「…ただ?」
宇迦之御霊が言葉の先を促す。
「ただ、少し嬉しい」
そんな女神の呟きは、聞き取れないほどに小さくて、だけどはっきりと聞こえる。
「まあ、なんとかなるじゃろ」
ーー ーー ーー
「ふー、少し食べ過ぎたかも」
膨れてしまったお腹を擦りながら、ベルトを少し緩める。
やはり、朝食バイキングは悪魔的に誘惑があるというか、気がつくとお皿にものがのっているような気がする。
すっかりと平らげた皿を見て、やはりあの量を朝に食べるべきではないなと思う。
「私もいつもより食べてしまいました」
夏奈子も満足げだ。
「そうだよなぁ」
夏奈子の言葉に力強く頷きつつ、さてとと腰をあげる。
「また、出雲大社に行くもの、なんか変な感じがするけど、そろそろ行こうか」
「はい」
夏奈子は静かに元気よく、立ち上がる。
「なんか今日は面白いことになりそうな気がするんだよなぁ」
「ふぅ、よく寝ました」
向かいに座る夏奈子は言う。
「それは何より、僕はあんまり眠れなかったよ」
「そうなんですか?」
「恥ずかしい話だけど、場所がかわると眠れなくなっちゃうんだよね」
「ああー、分かります。私も小さい頃はそんな感じになってました」
夏奈子は大きくうなずく。
ーー ーー ーー
ここは、出雲大社。
「昨日、面白いものを見たのだ」
名も無き神が声を潜めて、そんなことを話す。
「また戯言か。良いだろう、言ってみろ」
「………………神域に人の子がおった」
たっぷりと溜めて言ったことはそんなことで、名も無き神は自信ありげな表情を作る。
「人の子じゃと?」
「そうだ。女子と男子だった」
「ふぅん、興味深い話じゃが、意味のない話じゃ。人の子など歩けば当たるほどにおるし、たまたまであろう」
女神は名も無き神にそう言う。
「たまたまであってもだ。人の子は神が見えておったのだ。人が彼岸の者を見たのはいつ以来かわからんぞ?」
「ふむ、一理あるか。まあ、我々にして見れば、些細なことじゃ」
女神は興味深げに一考するが、すぐにどうでも良いといった具合に、目の前の菓子に注意を向ける。
「些細なこと、か。ただ、その些細なことでさえも、今は面白い」
「神はみな、暇なものじゃろう?」
女神は言い聞かせるように言う。
「そうだな…ただ、何か刺激が欲しい」
名も無き神はそう口にする。女神はというと、また少し興味深げな表情をしていた。
ーー ーー ーー
「そう言えば、昨日は君と仲良くしている人の子とあったぞ」
大国主神は高良玉垂命に言う。
高良玉垂命はというと、ちょうど口に運んでいたご飯を落としてしまったところだ。
「し、科斗さんが?」
「うん、境内を歩いているところを見かけてね、少しだけ話をしたんだ。あと、女の子も一緒だったな」
大国主神はそう言い、手元にあった牛乳を飲む。
「夏奈子さんまで…」
高良玉垂命はそう言い、頭を抱える。
「神無月にここにくるのは少しばかり、まずいかもしれんのぉ」
となりに座っている宇迦之御霊が口を開く。
高良玉垂命は頷く。頭を抱えたまま。
「神々の気を引きすぎるでしょう」
「うん、僕も少し心配だから、気をつけるように言っておいたけど…」
「ありがとう。ただ…」
「…ただ?」
宇迦之御霊が言葉の先を促す。
「ただ、少し嬉しい」
そんな女神の呟きは、聞き取れないほどに小さくて、だけどはっきりと聞こえる。
「まあ、なんとかなるじゃろ」
ーー ーー ーー
「ふー、少し食べ過ぎたかも」
膨れてしまったお腹を擦りながら、ベルトを少し緩める。
やはり、朝食バイキングは悪魔的に誘惑があるというか、気がつくとお皿にものがのっているような気がする。
すっかりと平らげた皿を見て、やはりあの量を朝に食べるべきではないなと思う。
「私もいつもより食べてしまいました」
夏奈子も満足げだ。
「そうだよなぁ」
夏奈子の言葉に力強く頷きつつ、さてとと腰をあげる。
「また、出雲大社に行くもの、なんか変な感じがするけど、そろそろ行こうか」
「はい」
夏奈子は静かに元気よく、立ち上がる。
「なんか今日は面白いことになりそうな気がするんだよなぁ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
お疲れOLあかりの、今日のごほうびスイーツ
鈴樹
キャラ文芸
ルート営業OL・あかり(表示名:お疲れOL)が開設したピンスタグラムのアカウント。
ローカルコンビニ「39ストア」のスイーツ情報を中心に投稿。
頑張った自分へのごほうび✨日々の小さな幸せスイーツをお届け!
――と、見せかけて、実は甘い匂わせ満載⋯⋯!?
※本作は「お疲れOLと無愛想店員」シリーズの、あかりの架空SNS風スピンオフです。
※登場するコンビニやスイーツ情報はすべて架空です。実在するコンビニや商品とは一切関係ありません。
※本編の作中時間と連動して、随時投稿。
※未読でも、本編ストーリーの理解に支障はありませんが、読むと二度美味しい仕掛けです
※横書き表示推奨
【シリーズ作品リスト】
●本編1作目《短編集・3作品収録/完結》
『お疲れOLと無愛想店員〜雪の夜の、コンビニで』(本編/哲朗編/余話)
※あかりと哲朗、始まりの物語&黒歴史の秘密
●本編2作目《短編・全8話/完結》
『お疲れOLと無愛想店員〜春の嵐と、まわり道』
※上京とドライブデート(?)のロードムービー風のお話
●本編3作目《短編・4月上旬より作中時間と連動して公開予定》
『お疲れOLと無愛想店員〜初夏のきらめき、風のざわめき』
※全7話執筆済み。慶介メインのライトな謎解き風のお話
●本編4作目《現在構想中》
シリーズ作品タグ:
#お疲れOLと無愛想店員
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる