神様の喫茶店 ~こだわりの珈琲とともに~

早見崎 瑠樹

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ひととなか

ひまたぎにて

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 ここは朝食の会場だ。バイキング形式の朝食で、好きなものを取って食べられるのだけど、ついつい取りすぎてしまうのは僕だけじゃないはずだ。

「ふぅ、よく寝ました」

 向かいに座る夏奈子は言う。

「それは何より、僕はあんまり眠れなかったよ」
「そうなんですか?」

「恥ずかしい話だけど、場所がかわると眠れなくなっちゃうんだよね」

「ああー、分かります。私も小さい頃はそんな感じになってました」

 夏奈子は大きくうなずく。

ーー ーー ーー

 ここは、出雲大社。

「昨日、面白いものを見たのだ」

 名も無き神が声を潜めて、そんなことを話す。

「また戯言か。良いだろう、言ってみろ」 
「………………神域に人の子がおった」

 たっぷりと溜めて言ったことはそんなことで、名も無き神は自信ありげな表情を作る。

「人の子じゃと?」
「そうだ。女子おなご男子おのこだった」

「ふぅん、興味深い話じゃが、意味のない話じゃ。人の子など歩けば当たるほどにおるし、たまたまであろう」

 女神は名も無き神にそう言う。

「たまたまであってもだ。人の子は神が見えておったのだ。人が彼岸の者を見たのはいつ以来かわからんぞ?」

「ふむ、一理あるか。まあ、我々にして見れば、些細なことじゃ」

 女神は興味深げに一考するが、すぐにどうでも良いといった具合に、目の前の菓子に注意を向ける。

「些細なこと、か。ただ、その些細なことでさえも、今は面白い」

「神はみな、暇なものじゃろう?」

 女神は言い聞かせるように言う。

「そうだな…ただ、何か刺激が欲しい」

 名も無き神はそう口にする。女神はというと、また少し興味深げな表情をしていた。
 
ーー ーー ーー

「そう言えば、昨日は君と仲良くしている人の子とあったぞ」

 大国主神は高良玉垂命に言う。
 高良玉垂命はというと、ちょうど口に運んでいたご飯を落としてしまったところだ。

「し、科斗さんが?」

「うん、境内を歩いているところを見かけてね、少しだけ話をしたんだ。あと、女の子も一緒だったな」

 大国主神はそう言い、手元にあった牛乳を飲む。

「夏奈子さんまで…」

 高良玉垂命はそう言い、頭を抱える。

「神無月にここにくるのは少しばかり、まずいかもしれんのぉ」

 となりに座っている宇迦之御霊が口を開く。
 高良玉垂命は頷く。頭を抱えたまま。

「神々の気を引きすぎるでしょう」

「うん、僕も少し心配だから、気をつけるように言っておいたけど…」

「ありがとう。ただ…」

「…ただ?」

 宇迦之御霊が言葉の先を促す。

「ただ、少し嬉しい」

 そんな女神の呟きは、聞き取れないほどに小さくて、だけどはっきりと聞こえる。

「まあ、なんとかなるじゃろ」

ーー ーー ーー

「ふー、少し食べ過ぎたかも」

 膨れてしまったお腹を擦りながら、ベルトを少し緩める。

 やはり、朝食バイキングは悪魔的に誘惑があるというか、気がつくとお皿にものがのっているような気がする。

 すっかりと平らげた皿を見て、やはりあの量を朝に食べるべきではないなと思う。

「私もいつもより食べてしまいました」

 夏奈子も満足げだ。

「そうだよなぁ」

 夏奈子の言葉に力強く頷きつつ、さてとと腰をあげる。

「また、出雲大社に行くもの、なんか変な感じがするけど、そろそろ行こうか」
「はい」

 夏奈子は静かに元気よく、立ち上がる。

「なんか今日は面白いことになりそうな気がするんだよなぁ」
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