神様の喫茶店 ~こだわりの珈琲とともに~

早見崎 瑠樹

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ひととなか

神議り

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「定例、報告をします」

 高良玉垂命は広い空間に、そう宣言する。
 
 ただただ闇の空間は、何も光を見つけられない。ただ、神々の喧騒だけは聞こえてきて、ここ空間には幾多の神々が鎮座しているのだと、感じられる。

「おお、その声は筑後の神ではないか?」

「間違いない、あの方だ」

 などという返答が帰ってくる。
 
「そうです。私は高良玉垂命、筑後国一ノ宮の主祭神にして、芸能、武芸の女神」

「うむ、して筑後はどうかね?」

 一人の神がそう訊ねる。

「どの國もそうと思われるけど、子供が年々と減ってきている。信仰が廃れてきて、周りの神社や神々は姿を消していっているのが現状です」

「うむ、どこも変わらぬか…」

 高良玉垂命の言葉に、名も分からぬ神は落胆したような声をもらす。

「それにしても、暗いですね…」

 ヒソヒソと周囲に聞こえないように、声を出す。

「匿名を保つためですよ。ただ、大体の神は私のように名を宣言していますけどね」

 そうなんですかと、相づちをうち、目の前に広がる空間を見つめる。

 見つめるほど、吸い込まれそうになる真暗闇だが、不思議と高良玉垂命や夏奈子の姿はハッキリと見え、ここが普通の場所ではないことを物語っている。

「この場所はとても特殊なんです」

 二人の様子を見て、高良玉垂命が言う。

「出雲大社という古い神域のなかに、さらに八百万の神々が神域を作っているんです。例えるなら、マトリョシカのような感じですね」

「八百万の神々ということは、高良玉垂命さんもここの神域を作っているんですか?」

 夏奈子が質問する。

「いいえ、ここの神域を創ったのは天津神なんです。私は國津神ですから…」

 ふと高良玉垂命の顔を見ると、なにか敵に遭遇したかのような表情をしていた。
 夏奈子はそんな彼女の表情には気づかなかったらしく、さらに言葉を続ける。

「…天津神、國津神?」

「簡単にいうと、天津神はイザナミとイザナギの子らで、國津神は私のように日本にもとからいた土着の神です」

「…なぜ、天津神だけで、しんいk」

「宇迦之御魂じゃ」

 夏奈子の言葉は途中で遮られてしまう。
 というのも、別の神が話始めたからだ。

「宇迦之御魂さん?」

 どこからともなく聞こえてくる宇迦之御魂の声だが、その姿は見えない。真暗闇が目に入るばかりだ。

「どこか別のからこの神域に入ってきているようですね」

 高良玉垂命が言う。

「おお、宇迦之御魂殿。この場に姿を表すとは、いつ以来のことだろうか」
「ただの気まぐれじゃ。他意はない」

 宇迦之御魂は名も知らぬ神の言葉に、そっけなく応じる。

「どんな話をしておったのじゃ?」
「少子化と信仰の衰退だ」

 男神が答える。
 端から聞いていると、歴史や社会のレポートみたいな議題だ。とても、神々が話している内容とは思えない。

「ふむ、我が話に参加しても、役に立たんじゃろうのぉ」

「そんなことはない。八百万ある意見のうちの一つだ」

「それは何よりじゃ」

 宇迦之御魂はどこか皮肉を込めたように、発言している。話し方にどこかトゲがあるのだ。

「そろそろ、出ましょう?」

 高良玉垂命がため息のように、そんなことを言う。

「ええ」

 頷くと、高良玉垂命が僕の肩を触れる。
 とたんに暗闇が消え、光が目に飛び込んでくる。

「まぶしっ」


「おお、おこう。久しく」

 ふと聞こえてきたのは、そんな声で、深く聞きやすいそれは、まさしく神のものだ。
 声の主は背の高い男神だった。
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