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かわの絵
かわは巣
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本当に、何で描かれているのだろう。
上空からしか見ることができない絵。まさに、神のみぞ見える絵か。
「これは、誰の仕業なんでしょう?」
僕を抱える人夜途にそう問う。
「……そうだね、妖怪に間違いないはずだけど」
「妖怪が?ですが、妖怪は自然そのもので、自然を乱すようなことはしないのでは?」
「よく知ってるね。その通り」
人夜途は頷く。
「だったら…」
「これは自然を乱している訳ではないんだ。むしろ、あるべき状態に戻している」
「あるべき状態に?」
オウム返しに問い返す。
「そう、ここはもともと龍の棲みかだからね」
「龍の棲みか……」
眼下の川を見据える。
川幅もそれほど大きくない。水も澄んでいるというには程遠い。とても龍が棲めるようには見えない。
「龍が戻ってこられるようになのか、この花の絵は自然をもとに戻そうとしているようだ」
人夜途は喜ぶかのような、悲しむかのような不思議な表情をする。
「このまま、あの花の絵があり続けると、ここらの人は住めなくなってしまうかも」
「………え?」
人夜途の呟くような言葉は、存外、無視できないものだった。
ーー ーー ーー
「人が住めなくなるってどういうことですか?」
橋の上から花の絵を見ている人夜途に問う。
地面から見ると、不規則に白い色が塗られているだけで、とても花には見えない。
「そのままの意味だよ。今ここは人が住んでいるけど、龍が戻れば川幅は広がり、水量も多くなる。今ある民家は水の底だろうね」
「花の絵を消すことは出来ないんですか?」
「石を砕いたり、草花を刈り取れば一時的には消すことはできるよ」
「一時的にはってことは…」
「うん、時間がたてばすぐに花は浮かび上がる。京都の大文字焼や全国の野焼きは、五穀豊穣を願うものが多いけど、まれに悪鬼が戻ってこないように、この花の絵のような印を消すために慣例化しているものも多いんだ」
地からは見えず、天から見ることができる印は、主が在るべき所に誘うためのもの。
綺麗であるものはどこか毒を持つのか。
「あら、お若いのにお一人で散歩ですか?」
人夜途の言葉を聞きながら川を見つめていると、年期が入った女性の声が聞こえた。
声のした方に目を向けると、初老の女性が手提げ袋片手に立っていた。買い物にでも行く途中だろうか。
「ええ、そのような感じです」
「そうですか。ここ最近はこの川もすっかり汚れてしまって、昔はとっても綺麗だったんだけどねぇ」
「ここが綺麗だったなんて、夢みたいですね」
「そうねぇ。ここは皆が使う川だったから、皆で掃除して、手入れをしていたのよ。私が小さい頃はここで悪さをしたら、竜神様に怒られるぞって言われてたわ」
初老の女性はクスクスと笑う。
「そうなんですね。あ、突然で申し訳ないんですが、あそこにある白いものって何かわかりますか?」
「ん、どれどれ」
ぼくは花の絵がかかれている方角を指す。
女性はつられるようにして指した方角を見るが、目を細めたりして見える気配がない。ほんの数メートル先に巨大な花の絵が浮かび上がっているのに。
「ごめんなさいね。近頃、目が悪くなってきてねぇ」
「あ、いえ、水が反射しているだけだったみたいです」
「あら、そうなの」
その後、ひとしきり地区のあるある雑談を話すと、もうそろそろお店に行かないとと言って去っていった。
「人には見えないもののようですね」
「どうやらそうっぽいね」
ぼくも人夜途も、謎の探偵面をしながらそのようなことを呟く。
「何をしているんですか?」
ふとよこから知った声が聞こえた。
謎の探偵面を解除しつつ振り向くと、やはり夏奈子の姿があった。
追伸
謹賀新年
昨年の4月から始めた投稿も、ついに年を越えることが出来ました!
これからも、私自身が面白いと思う話をあげていこうと思いますので、今年も何卒よろしくお願い申し上げます。
上空からしか見ることができない絵。まさに、神のみぞ見える絵か。
「これは、誰の仕業なんでしょう?」
僕を抱える人夜途にそう問う。
「……そうだね、妖怪に間違いないはずだけど」
「妖怪が?ですが、妖怪は自然そのもので、自然を乱すようなことはしないのでは?」
「よく知ってるね。その通り」
人夜途は頷く。
「だったら…」
「これは自然を乱している訳ではないんだ。むしろ、あるべき状態に戻している」
「あるべき状態に?」
オウム返しに問い返す。
「そう、ここはもともと龍の棲みかだからね」
「龍の棲みか……」
眼下の川を見据える。
川幅もそれほど大きくない。水も澄んでいるというには程遠い。とても龍が棲めるようには見えない。
「龍が戻ってこられるようになのか、この花の絵は自然をもとに戻そうとしているようだ」
人夜途は喜ぶかのような、悲しむかのような不思議な表情をする。
「このまま、あの花の絵があり続けると、ここらの人は住めなくなってしまうかも」
「………え?」
人夜途の呟くような言葉は、存外、無視できないものだった。
ーー ーー ーー
「人が住めなくなるってどういうことですか?」
橋の上から花の絵を見ている人夜途に問う。
地面から見ると、不規則に白い色が塗られているだけで、とても花には見えない。
「そのままの意味だよ。今ここは人が住んでいるけど、龍が戻れば川幅は広がり、水量も多くなる。今ある民家は水の底だろうね」
「花の絵を消すことは出来ないんですか?」
「石を砕いたり、草花を刈り取れば一時的には消すことはできるよ」
「一時的にはってことは…」
「うん、時間がたてばすぐに花は浮かび上がる。京都の大文字焼や全国の野焼きは、五穀豊穣を願うものが多いけど、まれに悪鬼が戻ってこないように、この花の絵のような印を消すために慣例化しているものも多いんだ」
地からは見えず、天から見ることができる印は、主が在るべき所に誘うためのもの。
綺麗であるものはどこか毒を持つのか。
「あら、お若いのにお一人で散歩ですか?」
人夜途の言葉を聞きながら川を見つめていると、年期が入った女性の声が聞こえた。
声のした方に目を向けると、初老の女性が手提げ袋片手に立っていた。買い物にでも行く途中だろうか。
「ええ、そのような感じです」
「そうですか。ここ最近はこの川もすっかり汚れてしまって、昔はとっても綺麗だったんだけどねぇ」
「ここが綺麗だったなんて、夢みたいですね」
「そうねぇ。ここは皆が使う川だったから、皆で掃除して、手入れをしていたのよ。私が小さい頃はここで悪さをしたら、竜神様に怒られるぞって言われてたわ」
初老の女性はクスクスと笑う。
「そうなんですね。あ、突然で申し訳ないんですが、あそこにある白いものって何かわかりますか?」
「ん、どれどれ」
ぼくは花の絵がかかれている方角を指す。
女性はつられるようにして指した方角を見るが、目を細めたりして見える気配がない。ほんの数メートル先に巨大な花の絵が浮かび上がっているのに。
「ごめんなさいね。近頃、目が悪くなってきてねぇ」
「あ、いえ、水が反射しているだけだったみたいです」
「あら、そうなの」
その後、ひとしきり地区のあるある雑談を話すと、もうそろそろお店に行かないとと言って去っていった。
「人には見えないもののようですね」
「どうやらそうっぽいね」
ぼくも人夜途も、謎の探偵面をしながらそのようなことを呟く。
「何をしているんですか?」
ふとよこから知った声が聞こえた。
謎の探偵面を解除しつつ振り向くと、やはり夏奈子の姿があった。
追伸
謹賀新年
昨年の4月から始めた投稿も、ついに年を越えることが出来ました!
これからも、私自身が面白いと思う話をあげていこうと思いますので、今年も何卒よろしくお願い申し上げます。
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