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第一部
24 轆轤(ロクロ)
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薪を割っていた直樹は陶芸体験を終えた家族連れと和夫を横目にし、緋紗の様子を見に行った。
扉は開いたままだ。
入ってロクロ台のほうを見ると緋紗がロクロで残った粘土を使って何やら成形している。
緋紗は粘土を螺旋状に滑らかに引き上げていく。
女性の割にゴツゴツした緋紗の手が無駄なく美しく動く。
直樹は岡山で一緒に入った風呂でのことを思い出した。――発情期だな……。
苦笑しながら静かに緋紗に近づき、後ろからそっと緋紗の背中に覆いかぶさり緋紗の両手の上に両手を重ねる。
「あ」
びっくりして緋紗が後ろを振り返ると、すぐ目の前の直樹は笑いながら、「こんな映画知らない?古いけど」と、両手を重ね続けたまま尋ねた。
「も、もちろん。知ってます」
直樹に後ろから抱えられ、耳元に息がかかり、緋紗の手の中の皿はぐしゃぐしゃだ。
「あーあ」
緋紗はぐしゃぐしゃの粘土を心の動揺と裏腹に器用にまとめると一つのきれいな山にした。
「さすが。うまいね」
直樹は緋紗の技術を目の当たりにして素直に感心した。
「続きはまた夜に」
真っ赤になってうつむく緋紗にそう告げてまた持ち場に帰った。
緋紗が粘土を片付けて作業台を拭き終わると小夜子がお昼に呼びに来た。
「ご飯にしましょうよー」
小夜子がいると場所が華やいで明るくなるような気がする。
「はい」
手を洗って食堂へ向かった。
直樹はまだ来ていなかった。
「伸びちゃうから早く食べてね」
小夜子はパスタの皿を二つテーブルに置いて座るように促した。
「教えるの上手だったみたいねえ。お客様、喜んでらしたわよ」
「ああ、よかった。ありがとうございます。前に陶芸教室でバイトしてたことがあったので」
「そうなのー。いいじゃない。またあったら是非お願いしたいわ」
小夜子が嬉しそうに言ってくれるので緋紗は少し照れた。
直樹がやってきて厨房へ入り、二つパスタ皿を持って緋紗たちの隣の席に座り、和夫も後に続く。
「ひさちゃん、おつかれさま。さっきの教室とてもウケがよかったよ。ロクロもうまくてびっくりしたなあ。今度うちのパスタ皿作ってくれないかな」
そういわれてみると食器は磁器のものが多い。
「そうそう和夫さんは大きいもの出来ないのよね。このくらいのパスタ皿ほしいわ。手作りの」
小夜子も両手を皿の大きさに広げて言った。
「ひさに弟子入りしたらどうです?」
「こいつー。実は俺もそう思う。わははっ」
生意気そうに言う直樹に和夫が大笑いした。、
「あの、私。お皿作って帰ります」
「ほんとか。そりゃいいな。マジ頼むよ。二十センチくらいでちょっと深めかなあー」
和夫が具体的なことを言い出した。緋紗は少し考えて提案を一つしてみた。
「粉引きの一部分を月形に抜けば、ペンションの名前と感じがあっていいと思うんですけど」
「あら素敵じゃない。そうしてよ」
小夜子が高い声で言う。
「釉薬にも知識があるの?すごいねえ」
「少しですけど」
控えめに言いパスタを素早く平らげた。
扉は開いたままだ。
入ってロクロ台のほうを見ると緋紗がロクロで残った粘土を使って何やら成形している。
緋紗は粘土を螺旋状に滑らかに引き上げていく。
女性の割にゴツゴツした緋紗の手が無駄なく美しく動く。
直樹は岡山で一緒に入った風呂でのことを思い出した。――発情期だな……。
苦笑しながら静かに緋紗に近づき、後ろからそっと緋紗の背中に覆いかぶさり緋紗の両手の上に両手を重ねる。
「あ」
びっくりして緋紗が後ろを振り返ると、すぐ目の前の直樹は笑いながら、「こんな映画知らない?古いけど」と、両手を重ね続けたまま尋ねた。
「も、もちろん。知ってます」
直樹に後ろから抱えられ、耳元に息がかかり、緋紗の手の中の皿はぐしゃぐしゃだ。
「あーあ」
緋紗はぐしゃぐしゃの粘土を心の動揺と裏腹に器用にまとめると一つのきれいな山にした。
「さすが。うまいね」
直樹は緋紗の技術を目の当たりにして素直に感心した。
「続きはまた夜に」
真っ赤になってうつむく緋紗にそう告げてまた持ち場に帰った。
緋紗が粘土を片付けて作業台を拭き終わると小夜子がお昼に呼びに来た。
「ご飯にしましょうよー」
小夜子がいると場所が華やいで明るくなるような気がする。
「はい」
手を洗って食堂へ向かった。
直樹はまだ来ていなかった。
「伸びちゃうから早く食べてね」
小夜子はパスタの皿を二つテーブルに置いて座るように促した。
「教えるの上手だったみたいねえ。お客様、喜んでらしたわよ」
「ああ、よかった。ありがとうございます。前に陶芸教室でバイトしてたことがあったので」
「そうなのー。いいじゃない。またあったら是非お願いしたいわ」
小夜子が嬉しそうに言ってくれるので緋紗は少し照れた。
直樹がやってきて厨房へ入り、二つパスタ皿を持って緋紗たちの隣の席に座り、和夫も後に続く。
「ひさちゃん、おつかれさま。さっきの教室とてもウケがよかったよ。ロクロもうまくてびっくりしたなあ。今度うちのパスタ皿作ってくれないかな」
そういわれてみると食器は磁器のものが多い。
「そうそう和夫さんは大きいもの出来ないのよね。このくらいのパスタ皿ほしいわ。手作りの」
小夜子も両手を皿の大きさに広げて言った。
「ひさに弟子入りしたらどうです?」
「こいつー。実は俺もそう思う。わははっ」
生意気そうに言う直樹に和夫が大笑いした。、
「あの、私。お皿作って帰ります」
「ほんとか。そりゃいいな。マジ頼むよ。二十センチくらいでちょっと深めかなあー」
和夫が具体的なことを言い出した。緋紗は少し考えて提案を一つしてみた。
「粉引きの一部分を月形に抜けば、ペンションの名前と感じがあっていいと思うんですけど」
「あら素敵じゃない。そうしてよ」
小夜子が高い声で言う。
「釉薬にも知識があるの?すごいねえ」
「少しですけど」
控えめに言いパスタを素早く平らげた。
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