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第一部
23 陶芸教室
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「失礼します」
「こっちこっち。一応、今日は手びねりなんだけどロクロもやってみたいって子供の希望があってね。大人二人はこっちでゆっくり手びねりしてるからひさちゃんは子供にロクロさせてやってくれない?粘土はここの自由に使っていいよ」
和夫は粘土の入ったムロを開けて緋紗に見せた。
十キロずつビニール袋に入っている。
緋紗はそのうちの一袋を取り出して作業台に置きビニールをはぎ、針金で切って四等分にしてみる。
子供がちょっと使う分には二、三キロあれば十分だろう。
切った粘土の柔らかさを確認するべく一つの塊を菊練りしてみる。
「おお。さすが上手いな~」
和夫が感心して声を上げ、緋紗は照れ臭そうにへへっと笑った。
「こちらへどうぞ」
家族連れを和夫が作業台の手回しロクロの前に案内する。
両親は四十代、子供たちは小学六年生と四年生の姉妹で、旅の記念の器を作りたいらしい。
とりあえず四人に腰かけてもらい和夫が説明を始める。
「お父さんとお母さんは僕がここで紐作りというやり方を教えますので見ながらやってください。娘さんたちは今日、岡山の備前というところから来てくれた『ひさ先生』にロクロを体験させてもらってください」
先生と呼ばれ気恥ずかしいが、一応自分の中で一番自信をもってできることなので頑張ろうと気合を入れた。
「じゃ、『ひさ先生』頼むよ」
和夫は緋紗に子供たちを任せた。
「はい。じゃあこちらに来てください」
女の子たちをロクロの前に連れていく。
まずは緋紗がロクロでコップをひいてみせた。
ロクロの回転を利用して粘土を引き伸ばしたり押し倒したりして土殺しをする。
成形しやすいように山形に整えコップの量の粘土を手の中にとり、穴をあけ広げ引き延ばす。
そしてコップの形に整える。
この一連の動作は本来一分くらいなのだがパフォーマンスもかねて三分くらいかけた。
「すごーーい!」
姉妹が感嘆の声を上げる。
気分を良くして緋紗はそのコップを広げて皿にしてやった。
そうするとまた、「すごーい!」と、声があがる。
「さあじゃあやってみようか。どっちからやる?」
姉妹は顔を見合わせてじゃんけんを始めた。
「わたしからー」
姉のほうが先になった。
ロクロは初めてらしく、濡れてどろっとした粘土を触って、「うわー。ヌラヌラだあー」と、叫んだ。
少しだけ自由に粘土の感覚を味あわせてから、子供の手を軽く支えて形を作り始めていく。
「うわー。穴が開いたー」
「この親指を外に広げていくよ」
一つ一つの動作が子供たちには新鮮らしく、何かすれば形が変わることへ目を輝かせている。
上へ上へと粘土を伸ばす。
緋紗は子供にばれないように力を入れて粘土を引き上げてやると、自分の力でコップが大きくなったと思い喜ぶのだ。
「すごい大きいのができたよー」
満足げに姉は椅子から降りた。
コップを粘土の塊から木綿の細紐で切り取って板の上に置く。
続いて妹だ。
「お姉ちゃんよりおっきいの作る!」
負けん気が強そうな妹だ。
そんな妹の性格をよくわかっている姉は、「はいはい。頑張って」と、軽くいなした。
妹も真剣で必要以上に力んでいるので「そんなに強く持たなくても大丈夫だよ。ロクロは回ってるからあんまり力が要らないんだよ」と、優しく触らせてみる。
さっきと同じようにロクロを回すと、なんとか姉のコップより大きく作れたようで満足げだ。
また細紐で切って並べておいてやると一センチ程度だが妹のほうが高いので、手びねりをしている両親に自慢しに行った。
「みてみて。上手だよ。大きいんだからー」
姉のほうはもう手びねりのほうを見ていた。
「二人ともうまいじゃない。お母さんもロクロすればよかったかなー」
嬉しそうな姉妹に緋紗は、「サインいれておく?」と、聞いた。
「いれるいれる!」
二人は細い棒でサインを大きく入れた。
「これだけ大きい名前が入ってると絶対間違えないね」
妹は嬉しそうに自分の入れたサインも熱心に眺めていた。
陶芸教室もそろそろ終了のようで仕上げを終えた大人たちは手を洗っている。
「ありがとうございました」
子供たちも緋紗に笑顔でお礼を言い、両親も、「いいものができて良かったです」と、笑顔で緋紗に礼を告げる。
「いえいえ。こちらこそ、楽しんでももらえたようでよかったです。」
和夫が、「ひさちゃん、適当に片付けててくれる?お客様を送ってくるよ」と、緋紗に後を任せると家族四人と一緒にアトリエを後にした。
「こっちこっち。一応、今日は手びねりなんだけどロクロもやってみたいって子供の希望があってね。大人二人はこっちでゆっくり手びねりしてるからひさちゃんは子供にロクロさせてやってくれない?粘土はここの自由に使っていいよ」
和夫は粘土の入ったムロを開けて緋紗に見せた。
十キロずつビニール袋に入っている。
緋紗はそのうちの一袋を取り出して作業台に置きビニールをはぎ、針金で切って四等分にしてみる。
子供がちょっと使う分には二、三キロあれば十分だろう。
切った粘土の柔らかさを確認するべく一つの塊を菊練りしてみる。
「おお。さすが上手いな~」
和夫が感心して声を上げ、緋紗は照れ臭そうにへへっと笑った。
「こちらへどうぞ」
家族連れを和夫が作業台の手回しロクロの前に案内する。
両親は四十代、子供たちは小学六年生と四年生の姉妹で、旅の記念の器を作りたいらしい。
とりあえず四人に腰かけてもらい和夫が説明を始める。
「お父さんとお母さんは僕がここで紐作りというやり方を教えますので見ながらやってください。娘さんたちは今日、岡山の備前というところから来てくれた『ひさ先生』にロクロを体験させてもらってください」
先生と呼ばれ気恥ずかしいが、一応自分の中で一番自信をもってできることなので頑張ろうと気合を入れた。
「じゃ、『ひさ先生』頼むよ」
和夫は緋紗に子供たちを任せた。
「はい。じゃあこちらに来てください」
女の子たちをロクロの前に連れていく。
まずは緋紗がロクロでコップをひいてみせた。
ロクロの回転を利用して粘土を引き伸ばしたり押し倒したりして土殺しをする。
成形しやすいように山形に整えコップの量の粘土を手の中にとり、穴をあけ広げ引き延ばす。
そしてコップの形に整える。
この一連の動作は本来一分くらいなのだがパフォーマンスもかねて三分くらいかけた。
「すごーーい!」
姉妹が感嘆の声を上げる。
気分を良くして緋紗はそのコップを広げて皿にしてやった。
そうするとまた、「すごーい!」と、声があがる。
「さあじゃあやってみようか。どっちからやる?」
姉妹は顔を見合わせてじゃんけんを始めた。
「わたしからー」
姉のほうが先になった。
ロクロは初めてらしく、濡れてどろっとした粘土を触って、「うわー。ヌラヌラだあー」と、叫んだ。
少しだけ自由に粘土の感覚を味あわせてから、子供の手を軽く支えて形を作り始めていく。
「うわー。穴が開いたー」
「この親指を外に広げていくよ」
一つ一つの動作が子供たちには新鮮らしく、何かすれば形が変わることへ目を輝かせている。
上へ上へと粘土を伸ばす。
緋紗は子供にばれないように力を入れて粘土を引き上げてやると、自分の力でコップが大きくなったと思い喜ぶのだ。
「すごい大きいのができたよー」
満足げに姉は椅子から降りた。
コップを粘土の塊から木綿の細紐で切り取って板の上に置く。
続いて妹だ。
「お姉ちゃんよりおっきいの作る!」
負けん気が強そうな妹だ。
そんな妹の性格をよくわかっている姉は、「はいはい。頑張って」と、軽くいなした。
妹も真剣で必要以上に力んでいるので「そんなに強く持たなくても大丈夫だよ。ロクロは回ってるからあんまり力が要らないんだよ」と、優しく触らせてみる。
さっきと同じようにロクロを回すと、なんとか姉のコップより大きく作れたようで満足げだ。
また細紐で切って並べておいてやると一センチ程度だが妹のほうが高いので、手びねりをしている両親に自慢しに行った。
「みてみて。上手だよ。大きいんだからー」
姉のほうはもう手びねりのほうを見ていた。
「二人ともうまいじゃない。お母さんもロクロすればよかったかなー」
嬉しそうな姉妹に緋紗は、「サインいれておく?」と、聞いた。
「いれるいれる!」
二人は細い棒でサインを大きく入れた。
「これだけ大きい名前が入ってると絶対間違えないね」
妹は嬉しそうに自分の入れたサインも熱心に眺めていた。
陶芸教室もそろそろ終了のようで仕上げを終えた大人たちは手を洗っている。
「ありがとうございました」
子供たちも緋紗に笑顔でお礼を言い、両親も、「いいものができて良かったです」と、笑顔で緋紗に礼を告げる。
「いえいえ。こちらこそ、楽しんでももらえたようでよかったです。」
和夫が、「ひさちゃん、適当に片付けててくれる?お客様を送ってくるよ」と、緋紗に後を任せると家族四人と一緒にアトリエを後にした。
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