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第一部
62 営み
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静かな寝室で緋紗はぼんやりとベッドに腰かけて今までの営みを思い返してみた。
過ぎ去った時間がこんなに愛しいなんて知らなかった。
明日からどう過ごそうか。
色褪せた見えにくい明日を想像していると、直樹も寝室に戻り静かに緋紗の隣に座って、「もう寝ようか」と、言った。
「抱いてくれないんですか?」
「抱けない」
直樹は二人の未来がやってこないと思うと、離れがたくなる行為は避けたかった。
緋紗は思い出が欲しかった。
独りでいるための二人の思い出が。
「じゃ。私が抱きます」
力強く告げる。
「だめだよ。緋紗。もっと辛くなる」
たしなめる直樹を無視して緋紗は口づけする。
何を言っても聞きそうにないので直樹は理性的にふるまうことにした。
緋紗が直樹の服を脱がし裸にし直樹がいつも彼女にするように首筋から肩や胸を愛撫する。
できるだけ身体に意識をもっていかないように気を逸らせる努力をしたが、緋紗は直樹の少し大きくなった部分にキスをし始めた。
「ん――」
思わず声を漏らしてしまうと緋紗は稚拙だが大胆に吸い付いて舐めまわす。
「だめだ」
直樹の起立したものを夢中で愛撫し続ける緋紗に釘付けになってしまう。
直樹の無駄な抵抗も徒労に終わり、勃起してしまった。
緋紗はそれを確認して直樹にまたがり、逞しい両肩をもって身体を沈めるのだが、うまく挿入できない。
まごつく緋紗に直樹は思わず手を添えて挿入を手伝うと、緋紗はとても嬉しそうに、微笑んでゆっくり身体を沈めて行った。
「あ。ああっ」
時間をかけて挿入する感覚を愉しんでいるようすに直樹もため息がこぼれてしまう。
すっかり彼自身が緋紗の中に納まり彼女はじっとして直樹を抱きしめた。
「『ミスト』と抱き合ってるみたい」
ネットゲームの『ミスト』と『スカーレット』が抱き合うとこういう形になる。
「『スカーレット』」
直樹も緋紗の名前を呼んだ。
別種族の二人は共通貿易港で会ってもまた自国へ帰っていく。
そんなシチュエーションが今の二人にぴったりだ。
バーチャルな二人とリアルの二人が同時に抱き合うような不思議な感じがした。
お互いの頭も身体も心も全部つながるような感覚だ。
緋紗はそんな倒錯と現実に自分の正直な欲望を募らせ、貪欲に直樹を貪る。
「溶けて一つになってしまいたい」
そうつぶやく緋紗の乳房に顔をうずめて目を閉じる。
二人とも肉体の快感よりも繋がっていることを確認しあうように抱き合った。
お互いに触れていないところがないように、すべてを網羅するように。
燃やせるものをすべて燃やし尽くした二人は消耗して体力を使い果たした。
直樹の胸の上で緋紗は横たわり身動きせず、何も言わず静かに時間を過ごす。
緋紗は薪が十分な酸素できれいに燃えて、柔らかい真っ白な灰が窯の中に吸い込まれるような安堵感を得て目を閉じた。
駅のホームで二人は新幹線が来るのを待つ。
朝から会話らしい会話を交わしていないがお互いの気持ちは十分伝わっていて言葉にする必要を感じなかった。
先に上りの新幹線がやってきて、ざわめく人混みを乗せて去って行った。
「そろそろ来るね」
「そうですね」
二人は何気なく見つめあい、いつの間にか口づけをしていた。
新幹線がやってくる。
緋紗は立ち上がった。
直樹も立ち上がって荷物を渡す。
「さよなら」と、『愛してる』の代わりに言って二人は別れた。
過ぎ去った時間がこんなに愛しいなんて知らなかった。
明日からどう過ごそうか。
色褪せた見えにくい明日を想像していると、直樹も寝室に戻り静かに緋紗の隣に座って、「もう寝ようか」と、言った。
「抱いてくれないんですか?」
「抱けない」
直樹は二人の未来がやってこないと思うと、離れがたくなる行為は避けたかった。
緋紗は思い出が欲しかった。
独りでいるための二人の思い出が。
「じゃ。私が抱きます」
力強く告げる。
「だめだよ。緋紗。もっと辛くなる」
たしなめる直樹を無視して緋紗は口づけする。
何を言っても聞きそうにないので直樹は理性的にふるまうことにした。
緋紗が直樹の服を脱がし裸にし直樹がいつも彼女にするように首筋から肩や胸を愛撫する。
できるだけ身体に意識をもっていかないように気を逸らせる努力をしたが、緋紗は直樹の少し大きくなった部分にキスをし始めた。
「ん――」
思わず声を漏らしてしまうと緋紗は稚拙だが大胆に吸い付いて舐めまわす。
「だめだ」
直樹の起立したものを夢中で愛撫し続ける緋紗に釘付けになってしまう。
直樹の無駄な抵抗も徒労に終わり、勃起してしまった。
緋紗はそれを確認して直樹にまたがり、逞しい両肩をもって身体を沈めるのだが、うまく挿入できない。
まごつく緋紗に直樹は思わず手を添えて挿入を手伝うと、緋紗はとても嬉しそうに、微笑んでゆっくり身体を沈めて行った。
「あ。ああっ」
時間をかけて挿入する感覚を愉しんでいるようすに直樹もため息がこぼれてしまう。
すっかり彼自身が緋紗の中に納まり彼女はじっとして直樹を抱きしめた。
「『ミスト』と抱き合ってるみたい」
ネットゲームの『ミスト』と『スカーレット』が抱き合うとこういう形になる。
「『スカーレット』」
直樹も緋紗の名前を呼んだ。
別種族の二人は共通貿易港で会ってもまた自国へ帰っていく。
そんなシチュエーションが今の二人にぴったりだ。
バーチャルな二人とリアルの二人が同時に抱き合うような不思議な感じがした。
お互いの頭も身体も心も全部つながるような感覚だ。
緋紗はそんな倒錯と現実に自分の正直な欲望を募らせ、貪欲に直樹を貪る。
「溶けて一つになってしまいたい」
そうつぶやく緋紗の乳房に顔をうずめて目を閉じる。
二人とも肉体の快感よりも繋がっていることを確認しあうように抱き合った。
お互いに触れていないところがないように、すべてを網羅するように。
燃やせるものをすべて燃やし尽くした二人は消耗して体力を使い果たした。
直樹の胸の上で緋紗は横たわり身動きせず、何も言わず静かに時間を過ごす。
緋紗は薪が十分な酸素できれいに燃えて、柔らかい真っ白な灰が窯の中に吸い込まれるような安堵感を得て目を閉じた。
駅のホームで二人は新幹線が来るのを待つ。
朝から会話らしい会話を交わしていないがお互いの気持ちは十分伝わっていて言葉にする必要を感じなかった。
先に上りの新幹線がやってきて、ざわめく人混みを乗せて去って行った。
「そろそろ来るね」
「そうですね」
二人は何気なく見つめあい、いつの間にか口づけをしていた。
新幹線がやってくる。
緋紗は立ち上がった。
直樹も立ち上がって荷物を渡す。
「さよなら」と、『愛してる』の代わりに言って二人は別れた。
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