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第三部
4 陶芸教室
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小学生を対象とした賑やかな陶芸教室を終え、緋紗は伸びをした。
今日は生徒たちが作った素焼きの作品に絵付けをする日だった。
四名の作品を一つ一つ眺める。
小学生とはいえ、もう三年近く通ってきている生徒の作品なので技術もなかなか高く個性的だった。(これなら何か公募に出してあげたいなあ)
緋紗は何でも作らせて焼く陶芸教室を行ってはいなかった。
一人一人の作りたい欲求や生み出したい意欲を大事にはするが、ある程度練習をして精度を上げたものしか焼成することがなかった。
陶芸教室を始めたころは、作ったものを何でも焼いてもらえると思う人のほうが圧倒的だったので、そういう一時的な体験教室とは違うと言う事を理解してもらうのに時間がかかった。
それでも粘り強く少ない生徒数でもやり続けてきたおかげで、この教室の方針が理解されてきており長期的に通ってくる生徒も増えた。
こんなふうに教室を始めて続けてこれたのは和夫と亡き妻、小夜子のおかげだろう。
緋紗は今でも小夜子の力強い言葉を思い出す。
教室を立ち上げたころの生徒の少なさ、定着のなさ、陶芸に対する精神性の理解のなさ、ないない尽くしで挫けそうになったころだった。(緋紗ちゃん。妥協したら一生妥協するわよ)
小夜子がそう言ってくれなければ緋紗は自分の意思のない、相手任せのニーズに合わせた教室になっていたかもしれない。
それでうまくいけば良いのかもしれなかったが、あの頃はちゃんと自立して直樹と一緒に居たいという希望もあり、やっていければ何でもいいという思いでは過ごすことができなかった。
(諦めないで良かった)
まだまだ色々なことが完成には程遠いが、その道を辿っているだろうと思える自分でいられる事にいつも感謝している。(もう私、あの時の小夜子さんよりもずっと年上なんだなあ。不思議)
ぼんやりしていると和夫がやってきた。
「おつかれさん。コーヒー入れたよ。どう?」
「はい。ありがとうございます」
緋紗はアトリエを出てペンションの食堂へ向かった。
「ああいい匂い。疲れたー」
「小学生って元気いいからなあ」
「そうなんですよ。黙って作ってるだけなんですけどね。なんか教えるのにパワー使います」
「ああ、そうだ。お土産ありがとって優樹に言っておいて」
和夫は嬉しそうに目を細めている。
和夫が妻の小夜子を亡くした年に緋紗は優樹を妊娠した。
自然妊娠が難しいと言われていた直樹と緋紗との間にできた優樹は、和夫にとっても和夫の一人娘の和奏にとっても家族同然のような存在だ。
特に和奏にとっては本当の弟のようだ。
緋紗にとっても和夫と和奏は家族同然で強い信頼関係で結ばれている。
そんな和夫も今年還暦を迎えた。
「しっかりしてきたなあ。俺も歳とるはずだよ」
豊かだが半分白くなった髪を撫でつけ、穏やかな微笑みを浮かべながら言う。
男手一人で娘を育ててきた和夫の苦労と努力は計り知れない。
何度か見合い話も出ており、娘の和奏も反対することはなかった。
むしろ誰かいたほうがいいのではないかと和奏のほうが勧めるくらいだった。
しかし和夫の中には、いつまでも褪せることのない小夜子が星のように輝き続けているらしく、再婚することはなかった。
きっとこれからもないだろう。
確かに緋紗でさえも小夜子の存在はいまだに大きい。
和夫にとってはなおさらだろう。
二人の結びつきに胸を打つものを感じさせている。
「まだまだ若いですよ。でも子供が大きくなると歳とったって実感がわきますよね」
「うんうん。和奏なんか高校生になってますます小夜子そっくりだよ」
「確かにあの存在感は半端ないですねえ。でも和夫さんにも似てて。優樹の面倒をよく見てくれましたよ」
「でもやっぱり直樹とは喧嘩仲間みたいになるんだなあ」
「ほんと」
二人で笑った。
今日は生徒たちが作った素焼きの作品に絵付けをする日だった。
四名の作品を一つ一つ眺める。
小学生とはいえ、もう三年近く通ってきている生徒の作品なので技術もなかなか高く個性的だった。(これなら何か公募に出してあげたいなあ)
緋紗は何でも作らせて焼く陶芸教室を行ってはいなかった。
一人一人の作りたい欲求や生み出したい意欲を大事にはするが、ある程度練習をして精度を上げたものしか焼成することがなかった。
陶芸教室を始めたころは、作ったものを何でも焼いてもらえると思う人のほうが圧倒的だったので、そういう一時的な体験教室とは違うと言う事を理解してもらうのに時間がかかった。
それでも粘り強く少ない生徒数でもやり続けてきたおかげで、この教室の方針が理解されてきており長期的に通ってくる生徒も増えた。
こんなふうに教室を始めて続けてこれたのは和夫と亡き妻、小夜子のおかげだろう。
緋紗は今でも小夜子の力強い言葉を思い出す。
教室を立ち上げたころの生徒の少なさ、定着のなさ、陶芸に対する精神性の理解のなさ、ないない尽くしで挫けそうになったころだった。(緋紗ちゃん。妥協したら一生妥協するわよ)
小夜子がそう言ってくれなければ緋紗は自分の意思のない、相手任せのニーズに合わせた教室になっていたかもしれない。
それでうまくいけば良いのかもしれなかったが、あの頃はちゃんと自立して直樹と一緒に居たいという希望もあり、やっていければ何でもいいという思いでは過ごすことができなかった。
(諦めないで良かった)
まだまだ色々なことが完成には程遠いが、その道を辿っているだろうと思える自分でいられる事にいつも感謝している。(もう私、あの時の小夜子さんよりもずっと年上なんだなあ。不思議)
ぼんやりしていると和夫がやってきた。
「おつかれさん。コーヒー入れたよ。どう?」
「はい。ありがとうございます」
緋紗はアトリエを出てペンションの食堂へ向かった。
「ああいい匂い。疲れたー」
「小学生って元気いいからなあ」
「そうなんですよ。黙って作ってるだけなんですけどね。なんか教えるのにパワー使います」
「ああ、そうだ。お土産ありがとって優樹に言っておいて」
和夫は嬉しそうに目を細めている。
和夫が妻の小夜子を亡くした年に緋紗は優樹を妊娠した。
自然妊娠が難しいと言われていた直樹と緋紗との間にできた優樹は、和夫にとっても和夫の一人娘の和奏にとっても家族同然のような存在だ。
特に和奏にとっては本当の弟のようだ。
緋紗にとっても和夫と和奏は家族同然で強い信頼関係で結ばれている。
そんな和夫も今年還暦を迎えた。
「しっかりしてきたなあ。俺も歳とるはずだよ」
豊かだが半分白くなった髪を撫でつけ、穏やかな微笑みを浮かべながら言う。
男手一人で娘を育ててきた和夫の苦労と努力は計り知れない。
何度か見合い話も出ており、娘の和奏も反対することはなかった。
むしろ誰かいたほうがいいのではないかと和奏のほうが勧めるくらいだった。
しかし和夫の中には、いつまでも褪せることのない小夜子が星のように輝き続けているらしく、再婚することはなかった。
きっとこれからもないだろう。
確かに緋紗でさえも小夜子の存在はいまだに大きい。
和夫にとってはなおさらだろう。
二人の結びつきに胸を打つものを感じさせている。
「まだまだ若いですよ。でも子供が大きくなると歳とったって実感がわきますよね」
「うんうん。和奏なんか高校生になってますます小夜子そっくりだよ」
「確かにあの存在感は半端ないですねえ。でも和夫さんにも似てて。優樹の面倒をよく見てくれましたよ」
「でもやっぱり直樹とは喧嘩仲間みたいになるんだなあ」
「ほんと」
二人で笑った。
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