タイムリターン~憧れの人に告白をすると魔導師の道が開かれます。

木端慎一

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10話

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カーテンの隙間から漏れる穏やかな日差しに目を覚ました。

藁(わら)の上で寝た経験のある俺はすぐに、今いる場所が温かい自宅の布団であるとわかった。
当たり前だった幸せを噛み締めるように二度寝を試みる。
(また、この世界に帰ってこれるなんて思わなかった…… おっさんはいつ迎えにくるんだろう?
そういえば、次からどうやってあの世界にいけばいいんだ? 家からの通いなのか……。 あれ?今日何曜日だっけ…… )

「………… 」

「ヤバい!!」

慌てて飛び起き、時計をみると、8時を過ぎている。いつもより、1時間も多く寝ている。
「遅刻だ!!」と叫び俺は慌てて学校に行く準備を整え、家を飛び出した。

学校につくと、まだホームルームは始まっていないようだった。なんとか間に合ったと、教室に入ると周囲のざわつきが止まり、視線が集まるのがわかった。

「おっす、ホーリー!」と竹口が手をあげる

竹口の反応はいつも通りだ。まるで何事もなかったかのようにしている。

「お、おう」とぎこちなく挨拶をして、席に腰をおろすと、竹口は突然、すまん!、と頭を下げた。

「な、なんだよ、いきなり」

「昨日はありがとな。本当助かったよ」

「え? な、なにが?」

なにかを感謝している内心焦る。もしかすると、異世界の記憶があるのかもしれない。

「お前、カラオケの途中で俺が倒れたから家まで運んでくれたんだろ?」

いったい、おっさんは竹口にどんな魔法をかけたんだ、と少し心配になるほど、竹口は都合よく忘れてくれていた。

「そ、そうなんだ、大変だったよ。あのあと、大丈夫だったか?」

状況がわかるまでは話を合わせようと決める。
竹口は深くため息をつき、落ちこんでいた。

「やっぱり、慣れないことはするもんじゃないな。実は俺、ああみえて、相当緊張してたんだよ。それで無理をしすぎて倒れちゃったんだとおもう。キャパオーバーみたいなもんかな。だからだと思うんだけど、昨日のこと全然覚えてないんだ」

「ま、まぁ、仕方ないよ。それは。俺も緊張してたし…… 次頑張れよ」

楽しみにしていた竹口を思いだし、罪悪感を感じた。竹口は緊張どころか、誰よりも楽しんでいたのに俺の都合で台無しにしてしまった。

「俺のほうこそ、ごめん」というと竹口は驚くように目を丸くした。「なんで、ホーリーが謝るんだよ。でも、惜しいことしたよ。せっかく宮上に告白できるチャンスだと思ったのに」

それをきいて罪悪感が薄れる。結果的にフラレるのを阻止できたのだから、これでよかったのかもしれない。

「次もあるさ、その時告白しようぜ!」

「そうだな! でもずるいぞ!お前だけ告白して成功させやがって」

「あ……」

そうだった、とカラオケ店でのことを思い出し冷や汗が滴る。

「お前誰からその事を?……」

「宮上に決まってるだろ。次は俺達の番だなってアイコンタクトを送っといたよ」

「やめとけよ。それよりこの事を知ってるのは……」

「もう学校中知ってんじゃないか? なんたってお前はこの学校一といっていい美女を落としたんだから。もう学校中の噂だぜ」 

「最悪だ……」と頭を抱える。

「何が最悪なんだよ!最高のまちがいだろ?」

「そんなんじゃないんだって。とにかく……」

「よぉ!桐島!楽しそうだな?」声が聞こえ、顔を向けると、つり上がった冷たい目をした男が俺の前に現れる。

「矢鍋……」

クラス一の不良である。だらしなく着崩した制服にライオンのように逆立てた金髪の髪の毛。苦手であり嫌いな人種だ。

やばっと言って竹口は顔を伏せる。

「知ってるぜ? お前、桜田に告白したらしいじゃん」

「それは…… うん …… したけど……」
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