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12話
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「本題に入ろう」
おっさんは改まり、眼差しを強くした。緊迫感が漂いはじめ、俺も表情をかたくする。
「お主には、今日から本格的に魔法の訓練を受けてもらう。聞くまでもないと思うが、覚悟はできておるな?」
「あ、ああ。もちろん……」
「では早速じゃが、メラからお前を連れて来るようにたのまれての。今からきてもらうぞ」
「わ、わかった。それで、これからどこにいくんだ? もう川辺とか森の中じゃないのか?」
「魔法士を目指す者達が集まる、魔法士官学校に入るんじゃ。そやつらと魔法を競いあって能力を磨いてくんじゃ」
「な、なんか、怖いな。どんなやつがいるんだ?」
「そんな事しるか、もう遅刻しとんじゃ。最初から遅刻しておるからな、第一印象は最高じゃな」
「なんだよそれ、いつもみたく時間戻せばいいだろ?」
「それは無理じゃ。この世界ではできても、ラジタニアではむやみに時間は戻せん」
「え? そうなの?」
「いいからゆくぞ、ワシまでメラに怒られる」
そういって、おっさんは右手を俺に向けると、光を浴びせた。
まぶしい光が収まると、荒々しく人々が行き交う道の真ん中で目を覚ました。
周りには俺を囲んで人だかりができている。
「お、気づいたぞ。生きてたのか」と人だかりから声がきこえ慌てて起き上がる。
恥ずかしくなった俺は「す、すみません」と頭をさげ、すぐにその場を立ち去ろうとすると、人だかりの中から商人風の男がでてきて声をかけられる。
「おい!お前、外界人だろ? なにしに来やがった」
トゲのある声に聴こえたが、男は怒っているというよりは、どこか不安げな様子だ。
「え……と、違います。じゃあ、僕急いでいるので」
「おい!まて!」
男が俺の肩を掴もうと手を伸ばした。
まずい、と焦った俺は、呼び止めようとしているのを振り切り、すぐに駆け出した。
無我夢中で走って人気のない場所まで、きたところで、後ろを振り返り、ほっとする。
どうやら追ってきてはいないようだ。
ラジタニアはまだ外界人には慣れていない、といっていたおっさんの言葉を思い出していなければきっと面倒なことになっていたはずだ。
「よう、少年!」と声をかけられたのは、連れてきておいて、姿をみせないおっさんに対し不満が溜まり始めた頃だった。
ヤバイ、と内心焦る。見ると大きな包丁をもった大柄の男だ。
ふたたび、走り出そうとすると、今度は肩を捕まれる。
おわった……なにもかも。そう心で呟く。
「逃げることないだろ? 大丈夫か?」
優しげな口調だが、俺は騙されない。
「は、離してください。その包丁で僕を切り刻んでもいいことないですって」
「切り刻む!? そんなことするわけないだろ? 俺はただの肉屋だ」
「肉屋!? 包丁持って追いかけてきたからてっきり?」
「てっきりなんだ? 外界人だからぶっちめてやろうって輩に見えたのか?」
そういうと男は豪快にガハハと笑った。
「え? やっぱり気づいてたんですか? ならどうして……」
「肉の仕込みしてたら、少年が血相変えてはしってるのが見えたからよ。なんか困ってるようだし、助けてやれねぇかと思ってよ」
どうやら、本当に悪い人ではなさそうだ。男は無精に蓄えた髭を擦るそぶりをした。それを見た俺は、あ、とおっさんを思い出す。
「あの…… 人を探しているんですけど、一緒にきたはずなのに、さっきから見当たらなくて」
「どんなやつだ?」
「長髪の白髪で、白い髭を生やした仙人みたいな人なんですけど…… これじゃあ、わかんないですよね」
男は首を傾げて、うーん、と唸った。やはり、わからなそうだ、と思いはじめていると「もしかして……」と口を開く。
「え? 知っているんですか?」
「いや、もしかしてだけど、まさかな…… 一人だけそんな見た目の人知ってるけどよ」
あんな胡散臭い見た目の人が何人もいるわけがない。きっとおっさんのことだ。と内心思う。
「多分…… その人であってます。 その人とこれから、魔法士官学校にいく予定だったんですけど……」
「魔法士官学校? おい、お前、魔法士なのか?」といって男の目が鋭くなり、雰囲気が変わる。
「え?……」
おっさんは改まり、眼差しを強くした。緊迫感が漂いはじめ、俺も表情をかたくする。
「お主には、今日から本格的に魔法の訓練を受けてもらう。聞くまでもないと思うが、覚悟はできておるな?」
「あ、ああ。もちろん……」
「では早速じゃが、メラからお前を連れて来るようにたのまれての。今からきてもらうぞ」
「わ、わかった。それで、これからどこにいくんだ? もう川辺とか森の中じゃないのか?」
「魔法士を目指す者達が集まる、魔法士官学校に入るんじゃ。そやつらと魔法を競いあって能力を磨いてくんじゃ」
「な、なんか、怖いな。どんなやつがいるんだ?」
「そんな事しるか、もう遅刻しとんじゃ。最初から遅刻しておるからな、第一印象は最高じゃな」
「なんだよそれ、いつもみたく時間戻せばいいだろ?」
「それは無理じゃ。この世界ではできても、ラジタニアではむやみに時間は戻せん」
「え? そうなの?」
「いいからゆくぞ、ワシまでメラに怒られる」
そういって、おっさんは右手を俺に向けると、光を浴びせた。
まぶしい光が収まると、荒々しく人々が行き交う道の真ん中で目を覚ました。
周りには俺を囲んで人だかりができている。
「お、気づいたぞ。生きてたのか」と人だかりから声がきこえ慌てて起き上がる。
恥ずかしくなった俺は「す、すみません」と頭をさげ、すぐにその場を立ち去ろうとすると、人だかりの中から商人風の男がでてきて声をかけられる。
「おい!お前、外界人だろ? なにしに来やがった」
トゲのある声に聴こえたが、男は怒っているというよりは、どこか不安げな様子だ。
「え……と、違います。じゃあ、僕急いでいるので」
「おい!まて!」
男が俺の肩を掴もうと手を伸ばした。
まずい、と焦った俺は、呼び止めようとしているのを振り切り、すぐに駆け出した。
無我夢中で走って人気のない場所まで、きたところで、後ろを振り返り、ほっとする。
どうやら追ってきてはいないようだ。
ラジタニアはまだ外界人には慣れていない、といっていたおっさんの言葉を思い出していなければきっと面倒なことになっていたはずだ。
「よう、少年!」と声をかけられたのは、連れてきておいて、姿をみせないおっさんに対し不満が溜まり始めた頃だった。
ヤバイ、と内心焦る。見ると大きな包丁をもった大柄の男だ。
ふたたび、走り出そうとすると、今度は肩を捕まれる。
おわった……なにもかも。そう心で呟く。
「逃げることないだろ? 大丈夫か?」
優しげな口調だが、俺は騙されない。
「は、離してください。その包丁で僕を切り刻んでもいいことないですって」
「切り刻む!? そんなことするわけないだろ? 俺はただの肉屋だ」
「肉屋!? 包丁持って追いかけてきたからてっきり?」
「てっきりなんだ? 外界人だからぶっちめてやろうって輩に見えたのか?」
そういうと男は豪快にガハハと笑った。
「え? やっぱり気づいてたんですか? ならどうして……」
「肉の仕込みしてたら、少年が血相変えてはしってるのが見えたからよ。なんか困ってるようだし、助けてやれねぇかと思ってよ」
どうやら、本当に悪い人ではなさそうだ。男は無精に蓄えた髭を擦るそぶりをした。それを見た俺は、あ、とおっさんを思い出す。
「あの…… 人を探しているんですけど、一緒にきたはずなのに、さっきから見当たらなくて」
「どんなやつだ?」
「長髪の白髪で、白い髭を生やした仙人みたいな人なんですけど…… これじゃあ、わかんないですよね」
男は首を傾げて、うーん、と唸った。やはり、わからなそうだ、と思いはじめていると「もしかして……」と口を開く。
「え? 知っているんですか?」
「いや、もしかしてだけど、まさかな…… 一人だけそんな見た目の人知ってるけどよ」
あんな胡散臭い見た目の人が何人もいるわけがない。きっとおっさんのことだ。と内心思う。
「多分…… その人であってます。 その人とこれから、魔法士官学校にいく予定だったんですけど……」
「魔法士官学校? おい、お前、魔法士なのか?」といって男の目が鋭くなり、雰囲気が変わる。
「え?……」
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