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side2.高井戸純(たかいどじゅん)の場合
ジムの先生 第二話
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俺はプールの後に風呂に入った。
冷たいプールに漬かっていると、結局身体が冷えている。温かい風呂は気持ちいい。
その後、風呂から上がって服を着ようとしたところに、見覚えのある影形が。
「あっ……先生」
「あっ!?」
さっきのプールのインストラクターの、米原先生だった。
「……た、高井戸さん?」
先生は、無性に驚いている。
授業中もそうだったんだ。ときどきぎくしゃくしたり、なぜか挙動不審になる先生だ。
でも、生徒の名前はすぐに憶えている。俺は今日が初めての参加だったというのに。
インストラクターとして、さすがだな。
ときどきぎこちなくなるのは、先生も緊張するときもあるのかもしれない。まだ若いし。
などと俺は思っていた。
先生は、俺の横で服を着ている。
それにしても、やはりいい身体だ。
背はそれほど高い方ではないのだが、水泳にしては筋肉の膨らみがいい。職業柄、たんぱく質を多めに取っているのだろうか。
スイマーらしく、肩が大きいが、その下のウエストが絞られたように細い。そして見事な腹筋。
尻は小ぶりながら肉付きがよく、プリンと上に上がっている。
……なんて、こんなことを考えているとしたら変態だ。
この前、風呂で会った人のことを言えない。
俺が見惚れていると、先生は口数を少なにして背を向けてしまった。
あまりじろじろと見るのは失礼だよな。俺は嫌われるかもしれないと焦り、誤魔化すように口を開いた。
「あの、このクラスって、若い男性の方少ないですね」
先生は淡白に答えた。
「平日の昼間ですからね、少ないですよ」
俺は、いい機会だとばかりに言った。
「……よかったら、先生、色々と相談したりしてもいいですか。俺、このジム入ったばかりですし、話し相手が欲しかったんですけれども、同世代のひとも少ないみたいで……
俺、火曜日休みなんです。」
俺がそう言うと、先生は驚いたような表情を浮かべ、しばらく返事をしなかった。
もしかして、仕事上の規定があるのだろうか。
『個人的な指導は規定違反です』とか、『時間外の付き合いはダメなんです』……などのつれない返事が来ることも、考えてはいたが。
やがて先生は、
「……ええ、大丈夫ですよ。私にできることなら……」
などと謙虚な答えを返して来て、俺はいたく感動したものだ。
やはり米原先生は、真面目で感じがいい。
他の生徒に不公平になる、時間外の指導のようなことは求めていない。ただ、ぜひ仲良くなりたいと思ったのだ。
先週は、先生のクラスが終わったあとに、先生と二人で食事をして帰った。
ジムのそばにある、トンカツの店である。
「あの……先生って、外で呼ばれるのもこそばゆいので、外では呼ばないでもらえますか」
メニューを頼んだ後、先生が言う。
「じゃあ、米原さんでいいですか」
「ええ」
先生は……もとい、米原さんはいつも控え目だ。
今日はいつものいい身体をセーターの中に隠し、俺と向かい合って店の席に座っている。何だか変な感じだ。
先生は、酒こそは飲まないものの、普通にトンカツを食べるようだ。食事などは、気を使っているのだろうか。
「せ……米原さんは、食事などは気を使っていないんですか」
「そこまで気にしていませんね。炭水化物は取りすぎない方がいいとは思いますが」
そう言った後に、彼は……
「でも、トンカツは美味しいですからね」
と付け足した。ほうじ茶の湯のみを持ったまま、ニコッと笑った。
可愛い……。
おっと。自分でも予想外のことを思ってしまった。
初めから思っていたが、米原さんはなかなかのイケメンだ。
いつもは水泳キャップに髪をまとめているが、黒髪の前髪を下ろした表情は、どこかまだあどけない。
キャップを被ってキリッとしていると、年上っぽく見えるのだが。
もしかして年下なのだろうか。
などと、俺は米原さんに興味を持ってしまった。
どうも調子が狂っている。
冷たいプールに漬かっていると、結局身体が冷えている。温かい風呂は気持ちいい。
その後、風呂から上がって服を着ようとしたところに、見覚えのある影形が。
「あっ……先生」
「あっ!?」
さっきのプールのインストラクターの、米原先生だった。
「……た、高井戸さん?」
先生は、無性に驚いている。
授業中もそうだったんだ。ときどきぎくしゃくしたり、なぜか挙動不審になる先生だ。
でも、生徒の名前はすぐに憶えている。俺は今日が初めての参加だったというのに。
インストラクターとして、さすがだな。
ときどきぎこちなくなるのは、先生も緊張するときもあるのかもしれない。まだ若いし。
などと俺は思っていた。
先生は、俺の横で服を着ている。
それにしても、やはりいい身体だ。
背はそれほど高い方ではないのだが、水泳にしては筋肉の膨らみがいい。職業柄、たんぱく質を多めに取っているのだろうか。
スイマーらしく、肩が大きいが、その下のウエストが絞られたように細い。そして見事な腹筋。
尻は小ぶりながら肉付きがよく、プリンと上に上がっている。
……なんて、こんなことを考えているとしたら変態だ。
この前、風呂で会った人のことを言えない。
俺が見惚れていると、先生は口数を少なにして背を向けてしまった。
あまりじろじろと見るのは失礼だよな。俺は嫌われるかもしれないと焦り、誤魔化すように口を開いた。
「あの、このクラスって、若い男性の方少ないですね」
先生は淡白に答えた。
「平日の昼間ですからね、少ないですよ」
俺は、いい機会だとばかりに言った。
「……よかったら、先生、色々と相談したりしてもいいですか。俺、このジム入ったばかりですし、話し相手が欲しかったんですけれども、同世代のひとも少ないみたいで……
俺、火曜日休みなんです。」
俺がそう言うと、先生は驚いたような表情を浮かべ、しばらく返事をしなかった。
もしかして、仕事上の規定があるのだろうか。
『個人的な指導は規定違反です』とか、『時間外の付き合いはダメなんです』……などのつれない返事が来ることも、考えてはいたが。
やがて先生は、
「……ええ、大丈夫ですよ。私にできることなら……」
などと謙虚な答えを返して来て、俺はいたく感動したものだ。
やはり米原先生は、真面目で感じがいい。
他の生徒に不公平になる、時間外の指導のようなことは求めていない。ただ、ぜひ仲良くなりたいと思ったのだ。
先週は、先生のクラスが終わったあとに、先生と二人で食事をして帰った。
ジムのそばにある、トンカツの店である。
「あの……先生って、外で呼ばれるのもこそばゆいので、外では呼ばないでもらえますか」
メニューを頼んだ後、先生が言う。
「じゃあ、米原さんでいいですか」
「ええ」
先生は……もとい、米原さんはいつも控え目だ。
今日はいつものいい身体をセーターの中に隠し、俺と向かい合って店の席に座っている。何だか変な感じだ。
先生は、酒こそは飲まないものの、普通にトンカツを食べるようだ。食事などは、気を使っているのだろうか。
「せ……米原さんは、食事などは気を使っていないんですか」
「そこまで気にしていませんね。炭水化物は取りすぎない方がいいとは思いますが」
そう言った後に、彼は……
「でも、トンカツは美味しいですからね」
と付け足した。ほうじ茶の湯のみを持ったまま、ニコッと笑った。
可愛い……。
おっと。自分でも予想外のことを思ってしまった。
初めから思っていたが、米原さんはなかなかのイケメンだ。
いつもは水泳キャップに髪をまとめているが、黒髪の前髪を下ろした表情は、どこかまだあどけない。
キャップを被ってキリッとしていると、年上っぽく見えるのだが。
もしかして年下なのだろうか。
などと、俺は米原さんに興味を持ってしまった。
どうも調子が狂っている。
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