Lechery

ソラ

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「……で、何かあったのか?」

「あー、悪いんだけど、ちょっと持ってきてほしいもんあって。俺の机の上にさ、金色の腕時計あるだろ?それ持ってきてくれねぇか?」

「ちょっと待って……あ、あった。え……これって詠のセンス?」

「ちげぇよ。客からのプレゼント。ダセぇけど、そいつが相手の時は着けてねぇと怒って面倒くせぇんだよ。次そいつから予約入ってんの忘れててさ」

仮にも客に向かって「そいつ」呼ばわりしていいのか。まぁ、確かにこれ明らかに詠の好む感じじゃないし、いつもなら絶対つけないデザインだろうけどさ。

「じゃあ持ってくから。入り口から入っていいの?」

「いや、店の入り口から右に回ると裏口あるから、そっから入って」

「りょーかい。んじゃ、また後で」

電話を切って、腕時計をバッグに仕舞う。ポケットじゃ落とすかもしんねぇし。適当に携帯と財布も入れて……と、あ。

「そうだ」

さっき買った香水つけてくか。


*****

バイクは止められる場所あるか分からないから、徒歩で行くことにした。早歩きで、詠の働くホストクラブがある繁華街に向かう。

そういえば、詠が働いてる時に行くのは初めてかもしんない。前に来た時は店の前通っただけだもんなー。

働いてる姿見れるかな……とかちょっと楽しみになって、歩く速度を上げた。


「あー……ここだ」

周りの店とは明らかに雰囲気が違う、ホストクラブというにはいささか上品な雰囲気の店。

ホストクラブ『Vollmond』

上品なおばさま方と美形なホストが出てくる入り口をスルーして、俺は店の裏にまわった。
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