お飾り結婚だからと自由にしていたら、旦那様からの愛が止まらない

よどら文鳥

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25話 一年後

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「え? ガルム子爵の管理していた領地が全て私に……ですか!?」
「ああ、そうだよ。大変かもしれないが、レイチェルがやってみたかったことでもあるだろう? 領地運営を」
「確かに実家で管理している領地の介入は楽しんでいましたが」
「それにレイチェルのご両親が管理する領地と隣同士だ。なにかあれば互いに頼ることもできるだろう」
「し……しかしあの領地は……」

 赤字続きでバケット子爵も頭を抱えて悩んでいた。
 主にガルムが余計なことをしていたからという理由もあるが、現状は赤字で間違いない。
 ハイド様にとんでもないご迷惑をかけてしまうことになる。

「レイチェルを守るためには安い買い物だ。それだけではない。これでガルムの領地に住む者たちも救われるはずだ」
「そろそろ話していただけませんか? 去年ガルムとどのような理由で融資したのかを」

 あまりにも突然すぎて、つい聞いてしまった。
 お父様の領地管理をしている姿を尊敬していて興味を持った。
 そして実際に領地管理を手伝い領民と仲良くなり、平和に住めるにはどうしたら良いか、どのようにすれば資金を作ることができいざと言う時にも運用できるか。
 そのようなことを色々と考え提案し交渉、そして実現することに喜びを感じていた。
 ゆえに赤字続きでもある程度の立て直しならできる気がしている。
 しかし、それでも数年は必要になってくるだろう。
 そもそもどうして領地が私に渡るのかも知りたかった。

「シンプルに答えるならば、レイチェルを守るためだ」
「はい?」
「ガルムはレイチェルのことを常に狙っているのは知っていた。恥ずかしながら最初は別にかまわないと思っていたが、レイチェルのことを好きになっていくにつれ、いつしか彼のことを害虫と思うようになっていたのだよ」
「は……はあ」

 最近ハイド様は、私がほかの男性と話をするとすぐに機嫌が悪くなっている。
 サイヴァスさんとの社交ダンス練習も禁止されてしまった。
 いやいや全くその気はないでしょうと言ったのだが、『独占したい。誰であろうと触れさせたくない。同じ息を吸わないで欲しい』と言われてしまった。
 さすがに同じ部屋で息を吸っている以上は無理ですと言い渋々妥協してくれたものの、なるべく気をつけるようにしている。
 ある意味ではガルムよりも発言が重い。

「害虫とはいえ安易に駆除はしたくない。一度は助けるつもりで質問をしたのだが、覚えているか?」
「ええと……確か領民からの税以外の方法でどのように金貨を返済するか……でしたっけ?」
「ああ。給金で返済すると言っていた。だからその言葉をそのまま契約書に結びつけ融資した」

 融資の条件を具体的に教えてくれた。
 ・領地を担保として金貨を融資する。
 ・ガルムが子爵として後継人に即なること。
 ・国からの給金の八割以上は常に返済し続けること。
 ・いかなる理由であっても返済が不足となった場合及び別の方法で返済を試みた場合、担保としての領地を金貨の代わりとして支払い取引を終了すること。

 私はこの話を聞いてゾッとした。
 ガルムにそれができるわけがない。
 給金の八割以上という部分が特にそう思った。赤字を補うためには給金が必要なのだから……。
 しかも、ガルムはおそらく意味をしっかりと理解できていなかったのではないかとすら思ってしまった。

「バケット殿も一緒に契約をした。もうこれは双方の責任としか言えない。バケット子爵はむしろ領地を手放すほどに追い込まれていたから、望んでいたようにも思えていたが」
「ハイド様としては大赤字ではないのでしょうか。とてつもないほど法外な金貨の代わりに赤字領地となると……」
「これは私の仕事でもある。気にすることなどない」

 そうは言っても、王都で働いている人が一生かけて稼げる金額を軽く超える額だ。
 せけて少しでも穴埋めできるよう、領地を活性化させて赤字を少しでも解消できるようにしなければだ。
 これから忙しくなりそうで、とても楽しみでもある。
 私がそう思ったら、ハイド様は満面の笑みを見せた。

「領地管理の話になると本当に楽しそうにしてくれる」
「領民に住んでいる人たちがどうやったら楽しく生活できるようになるかな、どうすれば失業してしまっている人たちが仕事をできるようになるかな、などと考えて動く。お父様がずっとやってきたことなのです。そして解決して領民が幸せそうに生活しているところを見ていると嬉しい気持ちになるのです」

 つい熱く語ってしまった。ハイド様はそれを楽しそうに聞いてくれる。
 うんうん、と頷きながら私の目をじーっと見ていて、一瞬も視界を逸らさない。

「すでに元は取れたよ。赤字を気にせず領民第一に考えた政策を進めてほしいと思う」
「え? 元をって……まだ私はなにも……」
「レイチェルの楽しそうに語っているところを眺められただけで充分すぎるほどだ」

 ハイド様は、はははと笑いながら食事の手を進めるのだった。
 最近のハイド様は、なにかと私を甘やかしてくる。
 無理をさせているに違いないし、せめて赤にならないようにお兄様たちに相談しよう。

 ハイド様の妻としてのお仕事もたくさんあるため、毎日がさらに楽しくなりそうだ。
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