【完結】すべての縁談を断り続けていた次期侯爵様ですが、なぜか私だけは溺愛されているようです

よどら文鳥

文字の大きさ
13 / 15

13話 レイラ、恐怖で意識を失う

しおりを挟む
「怪我が治っても、帰りたくないです……」
「なるほど……」
「え?」
「俺とリリに任せろ。レイラ殿は必ず守る」
「どういうことですか?」

「すまないが、レイラ殿の私情はここ最近で知った。それに、すでにミリシャス伯爵邸からそのような動きもあったからな。ベッドをここへ運んできた日があっただろう? 実はあの日、ミリシャス伯爵がここへ来ていたのだ」

 せっかく汗を拭いたのに、また身体中から嫌な汗がダラダラと流れてしまった。
 ユメの直後だからこそ、よけいに想像しただけで気分が悪くなり吐き気を伴ってしまうほどだった。
 私は、その場で前屈みになって吐き気で死にそうになってしまう。

「だ、大丈夫か!? 少し待て!」

 ガルアルム様は立ち上がり、走って部屋を飛び出た。
 遠くから大声で、『リリ』と叫ぶ声と、『大至急医師をここへ!』と聞こえてくる。

 まだ服を着れていない状態だが、激しい吐き気と目眩によって、そのまま意識を失ってしまった。

 ♢

「う……うぅ……」
「気が、ついたか……?」

 まだ少しクラクラするが、精神的な問題だろう。
 しかし、横を見ると私の手にはガルアラム様の手が添えられ、リリさんと医師も見守ってくれていた。

「精神的ショックによる混乱が原因でしょう。時間と共に回復はします。薬は投与済みですので、しばらくは安静に」
「医師よ、朝からすまない。助かった」
「いえいえ、当然のこと。それではお大事に」

 ここでの療養生活が居心地よすぎて、感覚が変わってしまったのかもしれない。
 今までは家のことでなにがあってもここまで身体に影響が出ることなどなかった。
 それが当たり前の毎日だったからだろう。
 しかし、一度幸せな経験をしてしまうと、もう後には戻れないようだ。

「結論だけ先に言っておく。もう、安心して良い」
「え?」
「リリは口うるさい奴だし一部の者しか知らないが、国王の血を引いているのだよ」
「え……つまり王女ですか?」
「口外はしないでくださいね。とは言っても、誰も信用しないとは思いますが」

 リリさんが説明をしてくれた。
 今の王妃と結ばれる前に交際をしていた人との隠し子なのだという。
 しかし、リリさんを産んだことで亡くなられてしまったらしい。
 国と国王という立場上、王妃は絶対に必要であったため、その後今の王妃とつながったものの、王位継承などの関係でリリさんはこの侯爵邸で専属メイドとして育てられたそうだ。
 だからといって、国王や今の王妃とも深くつながりがあり、そばにはいれないものの大事にはされているらしい。

「今回はお父様にご協力を要請して、徹底的にミリシャス伯爵邸の調査を行ってもらっています」
「どうして……」
「前々からお父様も気にはなっていたようです。それに、レイラ様の身体中の傷。あれを見たら私でもどういうことかくらいは想像できましたし」

 どうやらバレていたらしい。
 事故による怪我だと誤魔化そうとしていたが、意味がなかったようだ。
 むしろ、それを聞いたらどこか安堵のため息がでたくらいである。

「先ほど言いかけたが、ベッドを搬入した日、実は伯爵がここへ訪ねてきたのだよ。しかも、『レイラを連れ帰る』といきなり言い出したのだ」
「それで、どうしたのですか……?」
「帰ってもらったよ。怪我がまだ治っていないし翌日治療の日だと言ったにも関わらず、伯爵にしてはあまりにも不審な行動と言動だったのでね」
「それだけで良くわかりましたね……。私、もしその日に連れ帰られていたらきっと……ユメのような展開に」

 信じがたいことではあるが、昨晩みたのは、もしも連れ帰られていたらどうなっていたかの正夢だったのかもしれない。
 そう思うと、ガルアルム様に感謝しても足りないほどの気持ちになる。
 だが、同時にガルアラム様のことが心配になってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

第三王子の「運命の相手」は追放された王太子の元婚約者に瓜二つでした

冬野月子
恋愛
「運命の相手を見つけたので婚約解消したい」 突然突拍子もないことを言い出した第三王子。その言葉に動揺する家族。 何故なら十年前に兄である王太子がそう言って元婚約者を捨て、子爵令嬢と結婚したから。 そして第三王子の『運命の相手』を見て彼らは絶句する。 ――彼女は追放され、死んだ元婚約者にそっくりだったのだ。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました

珠宮さくら
恋愛
イヴォンヌ・ロカンクールは、自分宛てに届いたものを勝手に開けてしまう姉に悩まされていた。 それも、イヴォンヌの婚約者からの贈り物で、それを阻止しようとする使用人たちが悪戦苦闘しているのを心配して、諦めるしかなくなっていた。 それが日常となってしまい、イヴォンヌの心が疲弊していく一方となっていたところで、そこから目まぐるしく変化していくとは思いもしなかった。

悪役令嬢、辞めます。——全ての才能を捨てた私が最強だった件

ニャーゴ
恋愛
「婚約破棄だ、リリアナ!」 王太子エドワードがそう宣言すると、貴族たちは歓声を上げた。 公爵令嬢リリアナ・フォン・クラウスは、乙女ゲームの悪役令嬢として転生したことを理解していた。 だが、彼女は「悪役令嬢らしく生きる」ことに飽きていた。 「そうですか。では、私は悪役令嬢を辞めます」 そして、リリアナは一切の才能を捨てることを決意する。 魔法、剣術、政治力——全てを手放し、田舎へ引きこもる……はずだった。 だが、何故か才能を捨てたはずの彼女が、最強の存在として覚醒してしまう。 「どうして私、こんなに強いの?」 無自覚のままチート能力を発揮するリリアナのもとに、かつて彼女を陥れた者たちがひれ伏しにくる。 元婚約者エドワードは涙ながらに許しを請い、ヒロインのはずの少女は黒幕だったことが判明し、処刑。 だが、そんなことよりリリアナは思う。 「平穏に暮らしたいんだけどなぁ……」 果たして、彼女の望む静かな生活は訪れるのか? それとも、新たな陰謀と戦乱が待ち受けているのか——!?

処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!

みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。 彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。 ループから始まった二周目。 彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。 「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」 「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」 淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。 未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。 これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。 「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」 (※カクヨムにも掲載中です。)

【完結】前世の記憶を思い出したら、私は悪役令嬢でした。今度こそ幸せになります!

22時完結
恋愛
社交界デビュー目前のある日、伯爵令嬢エリシアは突然、前世の記憶を取り戻す。 自分が人気乙女ゲームの“悪役令嬢”であり、ヒロインをいじめた末に断罪され、国外追放される運命だと気づいたのだ。 「このままじゃ破滅エンド一直線!? 絶対に回避してみせる!」 ヒロインには近づかず、王太子との婚約話もきっぱりお断り。 平穏で自由な人生を求めて、大人しく生きる決意をしたエリシアだったが―― なぜか冷酷と名高い公爵・シグルドが、彼女に急接近してきて!? 「君のそういうところが、可愛くて仕方ない」 無表情なのに言葉が甘すぎる公爵様に、エリシアの心はどんどん傾いていき…… 今世では恋も幸せも諦めない――前世の失敗を乗り越えて、真実の愛を掴む転生ラブストーリー!

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

【完結】どろどろの恋をしてしまったのです

よどら文鳥
恋愛
 フィアーナ伯爵令嬢は、小さいころに命を助けてもらったレオルド次期公爵のことをずっと愛し続けていた。  だが、レオルドには訳ありで愛人が大勢いる。  それでもレオルドのことが好きなため、フィアーナも愛人として彼に近づく。  愛人関係になっても、レオルドはフィアーナのことに全く手を出そうとしなかった。  さらに、突然の愛人終了宣言。  フィアーナは諦めなければならないと思い込み、公爵邸を飛び出てレオルドの幸せを願う。  しかし、フィアーナ自身もレオルドのことは諦めきれず……。  そんな状況の中、評判の悪いデルム侯爵が伯爵邸にやってくる。  デルムは、フィアーナと婚約しようと企んでいた。  だが、フィアーナの心の中にはレオルドのことでいっぱいだった。 ※全9話の短編になります。全話執筆済みです。

悪役とは誰が決めるのか。

SHIN
恋愛
ある小さな国の物語。 ちょっとした偶然で出会った平民の少女と公爵子息の恋物語。 二人には悪役令嬢と呼ばれる壁が立ちふさがります。 って、ちょっと待ってよ。 悪役令嬢だなんて呼ばないでよ。確かに公爵子息とは婚約関係だけど、全く興味は無いのよね。むしろ熨斗付けてあげるわよ。 それより私は、昔思い出した前世の記憶を使って色々商売がしたいの。 そもそも悪役って何なのか説明してくださらない? ※婚約破棄物です。

処理中です...