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49 報酬

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「ふむ。これは素晴らしい、素晴らしすぎるアイディアですぞ!」
「確かに! 今までこのような衣類は存在しなかったからな……」
「極寒地帯ではメガヒット間違いなしでしょう。出来上がったものは大商人経由で早速販売しますので」

 新たにデザインした物は服というカテゴリーではあるが、それぞれ『手袋』『マフラー』と名付けた。
 今回は新たな試みなので、シンプルなデザインのものと、オリジナルに手を加えたものを提案した。

「ところでシェリル様、今までの販売報酬をお渡ししたいのですが……」

 それは有難い。
 別にお金に困っているわけではない。
 ただ、使用人ズ達専用の部屋をもっと良い環境にするために増築しようと考えていた。
 今回の報酬を受け取ればおそらくできるだろう。

「ありがとうございます。そのお金で家を増築しようと思っていましたので」
「左様ですか。では明細書とともにすぐにお渡ししますので」

 そう言って担当者は奥にある部屋へ行った。

 しばらく待っていると、人間が三人は入りそうな大きな巾着袋が次から次へと運び出されてきた。

「馬車では一度では運べないかと思いますし危険も伴うので、何度かに分けてお渡ししようかと愚考しておりますが……」
「まさか……その巾着袋の中身って……」
すでに緊張がフルになってしまって、私の手が震えている。

「札束です。一萬紙幣十万枚分の価値がある金塊にすることも可能でしたが、実用性がある方が良いかと」

 明細書を見せてもらったが、明らかにおかしなことになっている。
 家の増築どころか、王宮の一番大きな城を建てることだってできてしまうかもしれない額だ。
 建てないけど。

「こんなに売れているのですか?」
「前から言っていたでしょう? シェリル様のデザインはそれほど評判なのですから」

 こんな大金どうしたら良いのだろうか。

 ♢

 護衛を数名つけて、家まで大量のお金を運んだ。
 空き部屋の二つが一萬紙幣で埋め尽くされてしまった。

 一生稼がなくても暮らしていける額だろうけど、デザイナーの仕事を辞めるつもりはない。
 それに、豪遊しようという気も特にはないのだ。

「……こんなに無防備に放置して良いのですか? こっそりと私が取るかもしれないじゃないですか」
「あのね……、パンドラもそうだけど、ここにいるみんながそんなことしないってわかっているから。それに金庫作っても入りきらないでしょう……」
「……信頼は感謝。ですが泥棒への警戒を強化した方がいいかと。特に借金まみれの輩が狙う可能性が十分考えられますし」

 確かに今まで家の警備は甘々だったかもしれない。
 それでも強盗や空き巣の被害はなかった。
 ロック殿下に相談しておくか。
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