【完結】婚約者にウンザリしていたら、幼馴染が婚約者を奪ってくれた

よどら文鳥

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【オズマ視点3】前半

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「案外簡単だったわ」
「おぉ……これがワインド家の財産……」

 見たこともないくらいの金貨の山。
 そして換金したら相当な額になりそうな金やプラチナ、宝石類まで大量だ。

 さすがミーナだ。

「これ金庫から半分くらいくすねて……預かってきたのよ。もう、重くて大変だったんだからね!」
「ご苦労。舞踏会の直前でよかった。毎回何か不祥事があると舞踏会で公表することが多かったからな。それにしても凄い額だ。これだけあれば一生困らずに過ごせそうだな……」

 欲が出てしまう。
 だが、これはあくまでワインド家の財産だ。
 勝手に使ってなくなってしまったらそれこそ犯罪者なのである。
 俺だってそれくらいの常識は持っているのだ。

「あくまで預かっているだけでしょ? これ全部返すのよね?」
「当たり前だ。この後ワインド家がお取り潰しになってしまって財産差し押さえがあるかもしれないんだろ? それが終わってほとぼりが冷めた頃に、実は預かってたんですって言えばどれだけ感謝されることか……」

「その時に謝礼でいくらか貰えばいいってわけね」
「そういうことだ。これはあくまでビジネスだ。だが……凄い金額だな……」

 ちょっとだけ金貨と貴金属に触れてみる。
 金貨はともかく、プラチナや金といった鉱物や宝石に触れるのは初めてなのだ。
 だが、触った瞬間ミーナに思いっきり手を引っ叩かれ怒られてしまった。

「ダメ!! こういうものは直に触っちゃダメなの!」
「なぜだ?」
「手についている油で色が変形してしまう可能性があるの。しっかりハンカチやタオルで触るようにして!」

 さすがミーナだ。
 こういう高価な物の扱いに慣れている。

「で、これだけの宝石で時価いくらになる?」
「うーん……。少なく見積もっても五億は下らないでしょうね……」
「億!? 宝石類だけでだぞ!?」

 なんということだ。
 これを全部売ったとしたら一生働かないで過ごせるぞ!!
 売っちゃダメなんだが。

 脳裏ではわかっていても、誘惑がどんどんと襲ってくる。
 だがまだ耐えられる。

 もう少し我慢するのだ。

「ねぇオズマ……これって結局私の家の財産なのよね……?」
「当然だろう。ミーナのご両親が稼いで手に入れた財産だ。国などに差し押さえられてたまるものか」
「黙ってさぁ、ほんのちょっとだったら使ってもいいんじゃない?」
「はい!?」

 ミーナがとんでもないことを言いはじめた。
 そりゃ言いたい気持ちはわかるけどさぁ。

「だって、どっちにしたって差し押さえられるお金でしょう? 全部で二十億はあると思うの。これのほんの一部……、そうね、百万くらいかな。金貨十枚分だけこっそり使ってもバレないと思うのよ」
「まぁそりゃそうだろうけど」
「金貨十枚あれば、オズマだって一週間くらいはぐーたらして過ごせるでしょう?」
「は!?」

 今、俺は聞き間違えたか?
 百万相当の金貨を一週間で使い切るだって?
 いや、俺が節約を極限にまで頑張れば一年は保つぞ。
「一ヶ月に金貨五十枚くらい消費するでしょう?」
「アホか!!」
「なんですって!?」

 ミーナが金貨を投げつけてきそうな状況になってしまっているが、俺は悪くないだろう。

「落ち着け! そもそもミーナの金銭感覚が麻痺している」
「仕方ないじゃないの! ずっとそうやって育ってきたんだから!」
「今はそうじゃないだろう? 准男爵家とはいえ、せいぜい年間に金貨五十枚が相場だ。そんな大金をわずか一ヶ月で消費してしまうのが当然だと思っている以上、一緒には住めんぞ」

 珍しく冷静になってミーナを説得しようとした。

 だが……。

「はぁ、どうしてこんなことになってしまったのかしら……お父様が変なことするからいけないのよ!」
「同感だ。ミーナのご両親さえしっかりしてくれれば金で揉めることもなかったのだ」
「ねぇオズマ。もう預かるのはやめにしない?」
「は?」

 ミーナのとんでもない発言に耳を疑う。
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