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2 大好きだった義妹

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「マーヤ、実はこんなことを言われてしまったんだけれども……」

 実は、私に対して酷い仕打ちを受けていることをマーヤは知りません。
 彼女のいないときを狙って酷いことをされてきました。
 それ以外のときは良き両親として演じていましたので。
 こんなことを訴えれば、マーヤが悲しむと思って黙っていました。
 だって、こんなに可愛い大好きな妹のような子がいたからこそ私も救われていたのですから。

「そう……。ジューリー姉様、ついに知っちゃったのね……」
「え……?」

 今までの優しくて可愛らしいマーヤからは想像もつかないほど嫌らしい笑みと見下してくるような顔つきになりました。

「ごめんなさいねジューリー姉様。なんでかは知らないけれど、小爵から婚約破棄されてしまったから、あなたを利用することにしたの。だからもう可愛い妹のフリはやめることにしたわ」
「え……どういうことなの!?」
「だってジューリー姉様って私には甘いし、今までなんでもやってくれたでしょう? ちょっと良い子のフリを続けているだけで私は楽な人生を送れていたし。それに家のバランスとしても私みたいな人がいればしっかりと働いていたでしょう?」

 最初はまさかとは思いましたが、今まで掃除や洗濯、炊事を全て無理やりやらされたことも……、酷い目にあっていたこともマーヤは知っていたようです。
 たまらず涙が溢れてきました。

「でも良かったじゃない。しっかりとアルファード家の役にたったんだから。だって、あなたが婚約してた男が私の代用品になるのだから。しかも、婿養子として我が家に来てくれるのよ。これでしっかりとアルファード家の後継もできたんだから感謝しているわよ」
 この言葉には流石に許せませんでした。

「マーヤ! ダルム様を道具のように言わないで! たとえこの家を出て行っても、ダルム様と私で結婚しますから!」
「あら、もうダルムも了解済みって知らないのかしら?」
「え!?」

 可愛くて愛おしかった義妹に裏切られた上、ダルム様にまで……いやいや、絶対にありえませんよ。 

「そこそこのお金で交渉したら簡単に受け入れたって話よ」
「まさか……ダルム様がお金で動くようなことは……」

「あっちの家には跡継ぎも他にいたし、おかしくはないと思うけれど。とにかくこれであなたはこの家にいても無駄だし邪魔な存在になったのよね。あなたが自ら家を出ていかないのならば、今後は容赦無く死ぬまでこき使うけれど。これでも私は優しいのよ。今まで偽りの私に対して色々と尽くしてくれたことには感謝しているから」

 私の本当の両親は数年前に事故で亡くなってしまいました。
 親戚であるアルファード家に迎え入れられたのです。

 しかし、なぜかは知りませんが、余程私のことが憎かったのでしょう。
 まさかマーヤにまでそう思われているとは考えもしませんでしたが。

 大好きだったマーヤにまで裏切られ、もはやこの家にいる意味は全くありません。
 最低限の荷物を迅速にまとめ、すぐに家を飛び出しました。

「アルファード家の言うことなんて信じません。きっとダルム様なら……」

 私に残された唯一の信頼し親愛のダルム様の元へ向かいます。
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