【完結】突然婚約破棄され、国のためだと追放までされた聖女は、移動した国先の王族達から溺愛される

よどら文鳥

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12 シャロンとお風呂

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 ホテル『プラプラプラン』へ戻った。

 当初の目的である手紙の件は概ね解決できた。
 どうやらザザーレンドで確認させてもらった手紙の二枚目は違うようで、戦争を吹っかけたりするようなことはないことがわかった。
 でも、だとしたらあの読んだ手紙はなんだったんだろう。
 まぁ大丈夫だろう、女王陛下が再び手紙を出してくれたし。
 あとはザザーレンド王国のみなさんで解決してくれればいいわけだ。

 さて、手紙はいいのだが、早速おかしなことになっている。

「あの……なぜクラルドとシャロンまで一緒に来るのですか?」
「一年間俺のことを知ってもらうためだ。やはりこういう場合は共に生活した方がわかりやすいだろう」

 同棲生活かよ。
 私は別に構わないんだけど、この国の王族って暇なのか?
 この国のことはよく知らないけれど、少々心配になってきた。

「妾は兄上とエルシラが仲良くやっていく姿を観察するためにきたのじゃ。まぁ妾は兄上の分まで仕事を引き受けるから一緒に住むわけではないがのう」
 そう言いながらシャロンが私の身体にしがみついてきた。
 シャロンの身長がまだ低いので、顔が胸元のあたりにグイッとあたる。

「むむぅーー、エルシラのようになりたいのう……」
「ちょっとシャロン……、クラルドが見ているから」
「俺に構うことはない」

 いや、気にするのは私だから!
 いやらしい目で見てきていないだけマシなんだけど、全く動じずに平然とした態度でいられるのもどうなのかなぁ。
 クラルドはクールな感じなのだろうか。

「妾は明日には王宮へ帰る。だから、エルシラと一緒にお風呂に入りたいのう。確かここのホテルの大浴場は水着着用で混浴だったはずじゃ」
「お風呂って水浴びのことよね?」
「そうか、エルシラは他国から来たからこの国のことをあまり知らぬのだな。よし、妾がしっかりと教えてやろう」

 シャロンはそう言いながら、勢いよく自分の胸をパンっと叩いて張り切っているようだ。

「エルシラにシャロンよ、すまないが俺は別に入らせてもらう。二人で混浴じゃない風呂に入ってくるがいい」
「なぜじゃ?」
「好きになった女性の肌をいきなり見てしまうと俺の身体が保たない」

 シャロンはまだ小さいから、そういうことはよくわかっていないようだ。
 クラルドの遠慮する素振りが、遠回しに紳士なお方なのかなとも思った。
 私だって水着着用とはいえ、いきなり露出の高い状態で水浴びを一緒にするなんて抵抗がある。

「シャロン、二人で行こうね」
「わかったのじゃ……」

 シャロンはクラルドのことが大好きなんだろうな。
 彼が昏睡状態のときに必死になって行動していたみたいだし。
 そうじゃなきゃ、遠くにあるザザーレンドまで動こうとはしないはずだ。

 シャロンと手を繋いで、風呂という水浴びするところへ向かう。
 脱衣所という場所で服を脱いで、裸のまま水が溜まった部屋へ行くらしい。
 シャワーという器具を使えばお湯も水も自由自在に出てくるそうだ。

 この仕組みを聞いて、一人で感動している。
 早速試してみたが、魔法を使わずにこんなことができるなんて驚きでしかない。
 プランタン女王国は『科学』という技術がかなり進んでいるらしく、電気やガス、水道という設備が整っているんだそうだ。

 と、シャロンから全て教えてもらいました。
 なんだかんだでさすが女王陛下の娘というだけあって、年齢の割に知識が豊富のようだ。

「この湯船っていうんだっけ? とっても気持ちいい!」
「風呂は一日の疲れを洗い流すのだと母上が何度も口ずさんでいたのう。妾はあまり疲れないからその気持ちがよくわからんのだが、エルシラはそんな気分なのか?」
「え? えぇ。まぁそうね」

 私も疲れるという概念があまりないのでシャロンと同じ感覚だけど、あまり私を基準にして欲しくはないので話を合わせておく。
 風呂という文化と技術が、全世界に広まったら良いのに。

「今後とも兄上をよろしく頼む」
「え、えぇ」

 結婚に向けてシャロンが一番張り切っているようだ。
 私は今のところだが、正直なところそこまで考えられていない。
 カッコいいから結婚とか、そういうのは望んでいないのだ。
 色々と考えなければいけないな。

 今日一日だけで色々とてんやわんやだったなぁと思いつつ、湯船に浸かり身体を温めながら今後のことで悩んでいた。
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