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8 王都へ
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「ほら、レント氏のせいで村では変な噂になってしまっただろう? もちろん時間と共にシャーリー殿の活躍でそんなものはすぐに消えるだろうが……」
「私が王都にですか? これからも騎士として活動は続けたいので」
「もちろんだ。俺からの推薦もしてある」
いつのまにそんな展開になっていたんだ。
王宮で褒められて少し年俸が上がるんだと思っていただけだったので、この知らせは物凄く嬉しい。
王宮で騎士を任されるのは、一流の中の一流しか雇われることはない。
ごく稀に各地の村から優秀な騎士が国から推薦されることがある。
サイバー団長ならいつかそうなるとは思っていた。
だが、女騎士は今まで過去一度も王宮直属として配属された事例がない。
団長がいくら推薦してくださっていても、まだ確定ではないのだから、まだ心からは喜べていない。
「何か不安か?」
「いえ、王宮直属の騎士になれたら嬉しいですけど。まだ確定ではないわけですし」
「シャーリー殿がその気ならばこれは確定事項だぞ?」
「え!?」
「そもそも以前からシャーリー殿の推薦はあったのだ。だが、どういうわけかレント氏が先にその情報を掴んでしまってな。故郷を離れたくないから黙ってろと、喋ったら騎士を引退させると脅されていたのだよ。すまない」
またレントが邪魔してたのかよ!
一体どこまで私の生きがいを奪おうとするんだ。
「喜んで王都へ行きます。故郷の家は残しつつ行ければ最高ですね」
「俺はシャーリー殿と行けることが嬉しい」
「えっ!?」
酔っ払っているのかサイバー団長は……。
驚きのあまり、キョトンとしてしまった。
団長はそのまま無口になってしまったので、口が滑っただけなのだろう。
聞かなかったことにしておく。
♢
それなりの荷物をまとめて、馬車に揺られて王宮へ向かっている。
馬車の中には団長と私の二人きり。
運転は御者がいるが、カーテン越しに括られているためほぼ二人だけの世界だ。
普段の団長だったら馬車の中だろうとも腕立て伏せを欠かさない。
だが、ここ数日ずっとモジモジとしていて動きもぎこちない。
「乗り物酔いしました?」
「いや、そんなことはない」
「大丈夫ですか? 体調が悪いとか?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
いやいや、気になるでしょう。
仕草も行動も普段の団長ではないのだから。
「いつもだったら腕立て伏せか腹筋をしているじゃないですか」
「そ……そう言われればそうかもしれない」
あまりにも挙動不審な態度だ。
心配になってしまい、団長の側へと近寄る。
熱があるのかもしれないので、オデコとオデコをくっつけて確認した。
「なななな……!?」
別に異性として意識しているわけではないし、今は夫も彼氏もいないから気にしなくて良い。
「いいから大人しくしてください」
「こんな至近距離でしゃべったら息が……」
何もそんなに意識する関係じゃないでしょう……。
呆れながら体温を確認したが、異常はなかった。
続いて腕を掴んで団長の脈を測った。
「はやっ!!」
通常の二倍近い脈拍数……。
え、なんなんだこの速さは!!
団長ってとんでもない病にかかっているのではないだろうか!
「とにかく落ち着いてくださいね! 今は安静にしたほうが……」
「いや、原因は分かっている。心配するな」
運動もしていないのにこんなに脈が速くなった人なんて見たことがない。
仕事柄人命救助のようなこともよくやっている。
脈はその時に測ることが多いが、こんなに速い人は初めてかもしれない。
心配になって当然なのだ。
「王都までまだまだ遠いです。原因が分かっているなら治せるんですよね?」
「無理かもしれん……」
「そんな……」
このままでは団長の命にも関わるかもしれない。
どうしてこんなに冷静でいるんだ団長は……。
「私が王都にですか? これからも騎士として活動は続けたいので」
「もちろんだ。俺からの推薦もしてある」
いつのまにそんな展開になっていたんだ。
王宮で褒められて少し年俸が上がるんだと思っていただけだったので、この知らせは物凄く嬉しい。
王宮で騎士を任されるのは、一流の中の一流しか雇われることはない。
ごく稀に各地の村から優秀な騎士が国から推薦されることがある。
サイバー団長ならいつかそうなるとは思っていた。
だが、女騎士は今まで過去一度も王宮直属として配属された事例がない。
団長がいくら推薦してくださっていても、まだ確定ではないのだから、まだ心からは喜べていない。
「何か不安か?」
「いえ、王宮直属の騎士になれたら嬉しいですけど。まだ確定ではないわけですし」
「シャーリー殿がその気ならばこれは確定事項だぞ?」
「え!?」
「そもそも以前からシャーリー殿の推薦はあったのだ。だが、どういうわけかレント氏が先にその情報を掴んでしまってな。故郷を離れたくないから黙ってろと、喋ったら騎士を引退させると脅されていたのだよ。すまない」
またレントが邪魔してたのかよ!
一体どこまで私の生きがいを奪おうとするんだ。
「喜んで王都へ行きます。故郷の家は残しつつ行ければ最高ですね」
「俺はシャーリー殿と行けることが嬉しい」
「えっ!?」
酔っ払っているのかサイバー団長は……。
驚きのあまり、キョトンとしてしまった。
団長はそのまま無口になってしまったので、口が滑っただけなのだろう。
聞かなかったことにしておく。
♢
それなりの荷物をまとめて、馬車に揺られて王宮へ向かっている。
馬車の中には団長と私の二人きり。
運転は御者がいるが、カーテン越しに括られているためほぼ二人だけの世界だ。
普段の団長だったら馬車の中だろうとも腕立て伏せを欠かさない。
だが、ここ数日ずっとモジモジとしていて動きもぎこちない。
「乗り物酔いしました?」
「いや、そんなことはない」
「大丈夫ですか? 体調が悪いとか?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
いやいや、気になるでしょう。
仕草も行動も普段の団長ではないのだから。
「いつもだったら腕立て伏せか腹筋をしているじゃないですか」
「そ……そう言われればそうかもしれない」
あまりにも挙動不審な態度だ。
心配になってしまい、団長の側へと近寄る。
熱があるのかもしれないので、オデコとオデコをくっつけて確認した。
「なななな……!?」
別に異性として意識しているわけではないし、今は夫も彼氏もいないから気にしなくて良い。
「いいから大人しくしてください」
「こんな至近距離でしゃべったら息が……」
何もそんなに意識する関係じゃないでしょう……。
呆れながら体温を確認したが、異常はなかった。
続いて腕を掴んで団長の脈を測った。
「はやっ!!」
通常の二倍近い脈拍数……。
え、なんなんだこの速さは!!
団長ってとんでもない病にかかっているのではないだろうか!
「とにかく落ち着いてくださいね! 今は安静にしたほうが……」
「いや、原因は分かっている。心配するな」
運動もしていないのにこんなに脈が速くなった人なんて見たことがない。
仕事柄人命救助のようなこともよくやっている。
脈はその時に測ることが多いが、こんなに速い人は初めてかもしれない。
心配になって当然なのだ。
「王都までまだまだ遠いです。原因が分かっているなら治せるんですよね?」
「無理かもしれん……」
「そんな……」
このままでは団長の命にも関わるかもしれない。
どうしてこんなに冷静でいるんだ団長は……。
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