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7 レントの言い分
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どうやらレントは、愛さえなければ何でもして良いという考えらしい。
しかも、それが一般常識のように主張していた。
ここは裁判する場所だ。
そんな主張が通るはずもない。
「レント氏の発言は個人の嗜好であり法に大きく反く行為になる。よって、離婚成立は受理とする」
レントはホッとした表情をしている。
いや、違うから!
これから、あなたはとんでもない判決言い渡されるんですよ!
どこまでも頭が悪いレントに呆れてしまう。
「レント氏の過失である。数々の不倫行為、シャーリー氏の資産を無断で奪った行為、更には女性騎士団を口説こうとしていた行為も含め、罰する」
「え?」
また口に出してしまった。
私の知らないことまでたくさん証拠として出てきていた。
不倫行為だけじゃなかったのか!
しかも同僚にまで口説いていたのかい!!
知らなかった……。
騎士団同士で仲は良いので、かなりショックだった。
おそらくレントが一方的に口説いてだけなので、気を遣って黙っていたんだとは思うけど。
「だから全部不倫ではなくただの遊びであってだな……」
「レント氏の発言は却下する。法には関係のないことだ。レント氏は今回の慰謝料としてシャーリー氏に四億五千万ゴールドの支払いを命ずる!」
「はひ!?」
概ね一万~二万ゴールドが一般的な労働の日当になる。
レントが仕事を選ばずに強制的な労働を休みなしで毎日働けばギリギリのギリで払える額だろう。
もちろん今後ただ働くだけの存在になるのは明白だが。
「無理だ。そんなに払えるものか。ならばシャーリーとの離婚はやめる。だから払わん」
どこまでも頭がお花畑だ。
私がどれだけストレスを受けたと思っているのだろうか。
謝って済むような次元ではない。
「お断りします。しっかりと慰謝料払っていただきますので」
「おいおい、俺はこんなにシャーリーを愛しているんだぞ。流石に酷いだろ!」
「いえ、ここまで酷いことをされたら愛せません。むしろ冷めましたので」
「この最低女め!!」
何も言い返せなかった。
公の場でここまで無茶苦茶なことを言われてしまって恥ずかしかったのだ。
こんな発言を聞かされたら、「何故こんな男と結婚したんだ?」と疑われてもおかしくはない。
情けなくなってしまった。
「俺はこの後の働く気はない! よって貴様に払う金などないぞ?」
「そうですか」
「むしろ、離婚は認めても構わん。そのかわり、離婚した後俺を養うために婚約しろ」
「無理です」
レントの頭がおかしくなってしまったようだ。
いや、明らかにおかしい。
巨額の慰謝料を提示されて、混乱状態になってしまったのだろう。
話にもならないので、判決だけ済ませてもらい、席を離れた。
離婚は成立したが、私は汚名を被ってしまったに違いない。
あのような裁判になってしまい、すぐに噂になってしまった。
あのような男と結婚してしまったのがいけなかったのだから仕方がない。
これからどうやって生きていこうか。
♢
騎士は辞めるつもりはない。
いつもどおりに訓練場に出ては日々鍛錬に励む。
これが私の生きがいでもあるのだ。
村の人たちにどんな目で見られようとも、私は騎士として働いていく。
「シャーリー殿、前に言っていた王都への話なのだが……」
団長は何か言いにくそうな表情をしている。
そうか、私がこんな汚名を被ってしまったから王宮へ行くのも無しだと言いたいんだろうな。
それも仕方がない。
私はにこやかに微笑んだ。
「気にしないでください。私はこのまま騎士としてやっていければそれで構いませんから」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「なんでしょうか?」
「前は黙っていたんだが、俺は王宮で仕える身になったんだ」
「そうだったんですね、出世おめでとうございます!」
団長と離れてしまうのは寂しいが、大出世は心から祝福したい。
「いや、シャーリー殿も一緒に王都へ来ないかと……思ってだな」
「え!?」
うすらわらいの団長の表情は私に一つの希望を与えてくれたような気がした。
しかも、それが一般常識のように主張していた。
ここは裁判する場所だ。
そんな主張が通るはずもない。
「レント氏の発言は個人の嗜好であり法に大きく反く行為になる。よって、離婚成立は受理とする」
レントはホッとした表情をしている。
いや、違うから!
これから、あなたはとんでもない判決言い渡されるんですよ!
どこまでも頭が悪いレントに呆れてしまう。
「レント氏の過失である。数々の不倫行為、シャーリー氏の資産を無断で奪った行為、更には女性騎士団を口説こうとしていた行為も含め、罰する」
「え?」
また口に出してしまった。
私の知らないことまでたくさん証拠として出てきていた。
不倫行為だけじゃなかったのか!
しかも同僚にまで口説いていたのかい!!
知らなかった……。
騎士団同士で仲は良いので、かなりショックだった。
おそらくレントが一方的に口説いてだけなので、気を遣って黙っていたんだとは思うけど。
「だから全部不倫ではなくただの遊びであってだな……」
「レント氏の発言は却下する。法には関係のないことだ。レント氏は今回の慰謝料としてシャーリー氏に四億五千万ゴールドの支払いを命ずる!」
「はひ!?」
概ね一万~二万ゴールドが一般的な労働の日当になる。
レントが仕事を選ばずに強制的な労働を休みなしで毎日働けばギリギリのギリで払える額だろう。
もちろん今後ただ働くだけの存在になるのは明白だが。
「無理だ。そんなに払えるものか。ならばシャーリーとの離婚はやめる。だから払わん」
どこまでも頭がお花畑だ。
私がどれだけストレスを受けたと思っているのだろうか。
謝って済むような次元ではない。
「お断りします。しっかりと慰謝料払っていただきますので」
「おいおい、俺はこんなにシャーリーを愛しているんだぞ。流石に酷いだろ!」
「いえ、ここまで酷いことをされたら愛せません。むしろ冷めましたので」
「この最低女め!!」
何も言い返せなかった。
公の場でここまで無茶苦茶なことを言われてしまって恥ずかしかったのだ。
こんな発言を聞かされたら、「何故こんな男と結婚したんだ?」と疑われてもおかしくはない。
情けなくなってしまった。
「俺はこの後の働く気はない! よって貴様に払う金などないぞ?」
「そうですか」
「むしろ、離婚は認めても構わん。そのかわり、離婚した後俺を養うために婚約しろ」
「無理です」
レントの頭がおかしくなってしまったようだ。
いや、明らかにおかしい。
巨額の慰謝料を提示されて、混乱状態になってしまったのだろう。
話にもならないので、判決だけ済ませてもらい、席を離れた。
離婚は成立したが、私は汚名を被ってしまったに違いない。
あのような裁判になってしまい、すぐに噂になってしまった。
あのような男と結婚してしまったのがいけなかったのだから仕方がない。
これからどうやって生きていこうか。
♢
騎士は辞めるつもりはない。
いつもどおりに訓練場に出ては日々鍛錬に励む。
これが私の生きがいでもあるのだ。
村の人たちにどんな目で見られようとも、私は騎士として働いていく。
「シャーリー殿、前に言っていた王都への話なのだが……」
団長は何か言いにくそうな表情をしている。
そうか、私がこんな汚名を被ってしまったから王宮へ行くのも無しだと言いたいんだろうな。
それも仕方がない。
私はにこやかに微笑んだ。
「気にしないでください。私はこのまま騎士としてやっていければそれで構いませんから」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「なんでしょうか?」
「前は黙っていたんだが、俺は王宮で仕える身になったんだ」
「そうだったんですね、出世おめでとうございます!」
団長と離れてしまうのは寂しいが、大出世は心から祝福したい。
「いや、シャーリー殿も一緒に王都へ来ないかと……思ってだな」
「え!?」
うすらわらいの団長の表情は私に一つの希望を与えてくれたような気がした。
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