【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜

よどら文鳥

文字の大きさ
7 / 12

7 レントの言い分

しおりを挟む
 どうやらレントは、愛さえなければ何でもして良いという考えらしい。
 しかも、それが一般常識のように主張していた。
 ここは裁判する場所だ。
 そんな主張が通るはずもない。

「レント氏の発言は個人の嗜好であり法に大きく反く行為になる。よって、離婚成立は受理とする」

 レントはホッとした表情をしている。

 いや、違うから!
 これから、あなたはとんでもない判決言い渡されるんですよ!

 どこまでも頭が悪いレントに呆れてしまう。

「レント氏の過失である。数々の不倫行為、シャーリー氏の資産を無断で奪った行為、更には女性騎士団を口説こうとしていた行為も含め、罰する」
「え?」

 また口に出してしまった。
 私の知らないことまでたくさん証拠として出てきていた。
 不倫行為だけじゃなかったのか!
 しかも同僚にまで口説いていたのかい!!

 知らなかった……。
 騎士団同士で仲は良いので、かなりショックだった。
 おそらくレントが一方的に口説いてだけなので、気を遣って黙っていたんだとは思うけど。

「だから全部不倫ではなくただの遊びであってだな……」
「レント氏の発言は却下する。法には関係のないことだ。レント氏は今回の慰謝料としてシャーリー氏に四億五千万ゴールドの支払いを命ずる!」
「はひ!?」

 概ね一万~二万ゴールドが一般的な労働の日当になる。
 レントが仕事を選ばずに強制的な労働を休みなしで毎日働けばギリギリのギリで払える額だろう。
 もちろん今後ただ働くだけの存在になるのは明白だが。

「無理だ。そんなに払えるものか。ならばシャーリーとの離婚はやめる。だから払わん」

 どこまでも頭がお花畑だ。
 私がどれだけストレスを受けたと思っているのだろうか。
 謝って済むような次元ではない。

「お断りします。しっかりと慰謝料払っていただきますので」
「おいおい、俺はこんなにシャーリーを愛しているんだぞ。流石に酷いだろ!」
「いえ、ここまで酷いことをされたら愛せません。むしろ冷めましたので」
「この最低女め!!」

 何も言い返せなかった。
 公の場でここまで無茶苦茶なことを言われてしまって恥ずかしかったのだ。
 こんな発言を聞かされたら、「何故こんな男と結婚したんだ?」と疑われてもおかしくはない。
 情けなくなってしまった。

「俺はこの後の働く気はない! よって貴様に払う金などないぞ?」
「そうですか」
「むしろ、離婚は認めても構わん。そのかわり、離婚した後俺を養うために婚約しろ」
「無理です」

 レントの頭がおかしくなってしまったようだ。
 いや、明らかにおかしい。
 巨額の慰謝料を提示されて、混乱状態になってしまったのだろう。
 話にもならないので、判決だけ済ませてもらい、席を離れた。

 離婚は成立したが、私は汚名を被ってしまったに違いない。
 あのような裁判になってしまい、すぐに噂になってしまった。
 あのような男と結婚してしまったのがいけなかったのだから仕方がない。

 これからどうやって生きていこうか。



 騎士は辞めるつもりはない。
 いつもどおりに訓練場に出ては日々鍛錬に励む。
 これが私の生きがいでもあるのだ。

 村の人たちにどんな目で見られようとも、私は騎士として働いていく。

「シャーリー殿、前に言っていた王都への話なのだが……」
 団長は何か言いにくそうな表情をしている。

 そうか、私がこんな汚名を被ってしまったから王宮へ行くのも無しだと言いたいんだろうな。
 それも仕方がない。
 私はにこやかに微笑んだ。

「気にしないでください。私はこのまま騎士としてやっていければそれで構いませんから」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「なんでしょうか?」
「前は黙っていたんだが、俺は王宮で仕える身になったんだ」
「そうだったんですね、出世おめでとうございます!」

 団長と離れてしまうのは寂しいが、大出世は心から祝福したい。

「いや、シャーリー殿も一緒に王都へ来ないかと……思ってだな」
「え!?」

 うすらわらいの団長の表情は私に一つの希望を与えてくれたような気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

私が家出をしたことを知って、旦那様は分かりやすく後悔し始めたようです

睡蓮
恋愛
リヒト侯爵様、婚約者である私がいなくなった後で、どうぞお好きなようになさってください。あなたがどれだけ焦ろうとも、もう私には関係のない話ですので。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。

クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」 平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。 セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。 結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。 夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。 セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。 夫には愛人がいた。 愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される… 誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」 『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。 セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。 しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。 だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」  大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。  けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。  王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。  婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。  だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。

処理中です...