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12 好きな気持ち

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 こんなに自分のことを好きになってくれる人なんて今までいただろうか。

 いや、いない。

 レントは私のことは金と身体目的だったようだし、その前までは男っ気が全くなかったし。
 だんだんと私の顔が赤くなっているような気がしてならなかった。
 真っ暗だし確認のしようもないが。

「あの……今更なんですけど、団長の好きなところ、一つ見つけました」
「ほう。教えて欲しい」

 せっかくなので、さっきの仕返しをしてやろうと思った。

「怒らないですか?」
「怒らない」
「本当に怒らないですか?」
「怒らない」
「紳士なところは好きです」
「……ありがとう」

 ずっと何日も一緒に馬車の中で過ごしてきた。
 だが、一度も手を出そうとしなかった……というのは当然としておく。

 それだけでなく、嫌らしい視線も向けていなかった。
 私が着替えている間はずっと外で待ってくれていたり、いたずらに身体に触れようとはしてこなかったのだ。

 だからこそ、少しだけ感情が沸いた。

「な……シャーリー殿!?」

 そっと団長の背中にくっついた。

「まだ私は団長のことを恋愛感情で好きなのかはわかりません。でも、話を聞いていたら、やっぱり嬉しくて。少しこうしてていいですか?」
「あ、あぁ。俺は構わんが、流石にそんなことされると俺も理性というものがあってだな……」

 後のことはお構いなく、しばらくこのままそばにいさせてもらった。
 もしこれで団長が襲ってきても私に文句を言う資格はない。
 それでも覚悟の上でくっついてみたいと思った。

 ただそれだけの気持ちだったのだ。

 あと十日もすれば王都に到着するだろう。
 その頃に、私はサイバー団長のことを好きになっているのかはわからない。

 いや、一瞬でも団長にくっついていたいと思えたのだから、私の気持ちに素直になった方がいいのかもしれない。
 もしかしたら王都で団長と一緒に暮らしていくのかもしれないと思ったら、ドキドキしてきたのだ。

 いや、それだけではない。

 常に一緒に訓練ができたら楽しそうだ。

 まだ先になるはずの未来を、私は思い描きながら微笑む。

「だんちょう?」
「……」

 どうやら団長は寝てしまったようだ。
 私は微笑みながら団長の耳元でそっと呟いた。

「これからは男として団長を見ていきますね」

 そう呟き、私も団長のそばで目を閉じて意識を預けた。


-----------
【後書き】

最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回は、シャーリーとサイバー団長がそのあとどうなったかというところは、あえて書かずにどうなったんだろうというところでおしまいというパターンにしてみました。

お楽しみいただけたでしょうか。
もしかしたら結ばれたか付き合わなかったかハッキリ書いて欲しいという方もいらっしゃったかもしれません。←ご希望にお答えできず申し訳ございません。

他の更新中の作品も是非宜しくお願い致します。
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