【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜

よどら文鳥

文字の大きさ
20 / 27

【別サイド】覚悟を決めて

しおりを挟む
「「乾杯」」

 クラフトとジオンは一息ついた。
 互いに、急激に多忙になったため、この時間がひじょうに貴重なのである。

「あともう一息と言ったところだな」
「兄上は動きすぎだ。みんなに働き過ぎるなと言っているのに示しがつかんぞ?」

「はっはっは、全くだ。だが、無理しているわけではない。むしろ、国がどんどん変化している過程を見れる第一人者だからな。こんなに楽しい仕事を休むなどできんよ」

 クラフトは満足そうな表情をしながらワイングラスを口につける。
 ジオンも、まったくだと頷きながらワインを飲む。

「イデアとアメリが来てくれてから国が激的に変わったよな……」
「アメリが命がけでイデアを無事連れてきた。そしてイデアは聖なる力だけでなく、貴重な人材までも連れてきてくれたようだ。しかも皆信頼できる良き者たちだ」

「ブラークメリル王国って国民はすげーのに、上がポンコツだからもったいねーよな。もしもブラークメリルの善人な人間が全員きたらそれこそ革命が起きてしまうだろうな」
「はっはっは……そんなバカな……」

 ジオンは冗談まじりに言いながらワインを追加する。
 前回の夜の楽しみと違い、少しばかり余裕が生まれていたのだ。

「よいしょっと……でもわかんねーぞ。イデアの聖なる加護ってもうなくなっちまったんだし、あんな無防備な国じゃいつモンスターが襲来するかわからんし。そんな恐怖が付きまとった国には俺はいたくねーな」

「モンスターか……。今の結界ならばどんなモンスターでも侵入は不可能だろう」
「まちがいねーな。しかも、イデアが他の聖女たちに教えてんだろ。もう安心だし、イデアに感謝だな」

「イデアの結界は素人の私にでも規格外だということはわかる。あれほどの実力を持ってしても、国に対してなにも要求してこない。最初の報酬を強引に渡してなんとか受け取ってくれたが……」
「欲も無ければ野望もなさそうだ。まさに兄上にとって好みじゃね?」
「う……」

 クラフトの顔が赤らめた。
 決してワインで酔ったものではない。
 クラフトがふと、イデアのことを考えたらそうなってしまったのだ。

「ついに兄上にも春がやってきたな。いや、むしろやってきてくれたと言うべきか」
「それはジオンもだ。しかし、イデアが私のような人間に興味を持ってくれるかどうか……」
「ま、普通の人間なら国王って肩書きだけで寄ってくるだろうけどな。今までもそうだった」

 クラフトに求婚をしてきた人間は、ほとんどと言っていいほど地位や名誉、そして金銭的な目当てだった。
 それを何度も見抜いてきたフラフトは、今まで誰とも婚約を交わさないつもりでいた。

 だが、イデアが来たことによって、その感情が一気に崩壊したのである。

「思い切って兄上からイデアに告白しちまえばいいんじゃね!?」
「な!? 本気で言っているのか!?」
「だってよ、イデアを見てたら自分から意中の人間に積極的になるタイプじゃねーよありゃ。それに、見た目も結構可愛いし、放っておいたらそこらへんの奴に取られちまうんじゃね?」

「それは困る!!」
「じゃあ兄上から言うしかねーよな」

 ジオンの後押しに負けたのだ。
 クラフトは翌日イデアに思い切って気持ちを打ち明ける覚悟を決め、ワインを追加で飲むのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

地味で無能な聖女だと婚約破棄されました。でも本当は【超過浄化】スキル持ちだったので、辺境で騎士団長様と幸せになります。ざまぁはこれからです。

黒崎隼人
ファンタジー
聖女なのに力が弱い「偽物」と蔑まれ、婚約者の王子と妹に裏切られ、死の土地である「瘴気の辺境」へ追放されたリナ。しかし、そこで彼女の【浄化】スキルが、あらゆる穢れを消し去る伝説級の【超過浄化】だったことが判明する! その奇跡を隣国の最強騎士団長カイルに見出されたリナは、彼の溺愛に戸惑いながらも、荒れ地を楽園へと変えていく。一方、リナを捨てた王国は瘴気に沈み崩壊寸前。今さら元婚約者が土下座しに来ても、もう遅い! 不遇だった少女が本当の愛と居場所を見つける、爽快な逆転ラブファンタジー!

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。 「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」 隣には涙を流す義妹ルミレア。 彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。 だが――王太子は知らなかった。 ヴァレリオン公爵家が 王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証―― 王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。 婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。 「では契約を終了いたします」 その瞬間、王国の歯車は止まり始める。 港は停止。 銀行は資金不足。 商人は取引停止。 そしてついに―― 王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。 「私は悪くない!」 「騙されたんだ!」 見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。 王太子、義妹、義父母。 すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。 「契約は終わりました」

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

虐げられた聖女が魔力を引き揚げて隣国へ渡った結果、祖国が完全に詰んだ件について~冷徹皇帝陛下は私を甘やかすのに忙しいそうです~

日々埋没。
恋愛
「お前は無能な欠陥品」と婚約破棄された聖女エルゼ。  彼女が国中の魔力を手繰り寄せて出国した瞬間、祖国の繁栄は終わった。  一方、隣国の皇帝に保護されたエルゼは、至れり尽くせりの溺愛生活の中で真の力を開花させていく。

処理中です...