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「バズドド様、今日は私の馬車で一緒に帰りませんか?」
「もちろんだともー。ジュリアーナに誘われたら嬉しさのあまり心臓が飛び出しそうだよ」
大袈裟ですよ。
紹介が遅れましたが、私とバズドド様は婚約関係の仲です。
いわゆる貴族同士の政略結婚ではありますが、私達の関係はそのような肩書きなど不要なほど相思相愛ですからね。
このことは通っているメンソール学園の生徒や教師の間でも有名になっていて、ほとんどの方から私にだけ応援と同情をいただいています。
なぜならば、二つ大きな問題があるからですね。
「そうだ、もしよかったら俺の幼馴染も一緒に送ってはくれないだろうか?」
「リリノアさんですか……」
一つ目の問題が早速浮上しましたね。
リリノアさんはメンソール学園に通う同級生で、バズドド様の幼馴染でもあります。
リリノアさんは難病を抱えているらしく、治療のために遠く離れた地域に引っ越していたそうですが、最近になってこちらへ帰ってきたそうです。
バズドド様達は仲がとても良かったそうで、当然帰ってきたことによって大はしゃぎな毎日を送られていました。
それ以降、私のことは放置されてしまうか、必ずリリノアさんがセットでくっついてきます。
「だめか? 帰り道は同じだから良いじゃないか」
「そうですね。わかりました」
ここで断ってしまうのも失礼ですし、意地悪な女だと思われてしまいそうで「いいえ」などと言えるわけがありません。
「よっしゃ! じゃあリリノアにも声かけてこよーっと!」
あぁ……二つ目の問題も出てきましたね。
バズドド様は准男爵家の長男ではありますが、教育が疎かだったようです。
口調も貴族らしからぬ発言が多いですし、社交ダンスなどまるでできません。
とはいえ、私と一緒のときに少しずつ教えてはいますが、まるで成長しないのです。
「リリノアーーー! 今日ジュリアーナの馬車で送ってってやるから一緒に帰ろー」
教室内で大声で騒がないでほしいです。クラスメイトが見ているじゃないですか。
「アタシも一緒に!? やったー! バズドド、ありがとー!」
リリノアさんも男爵家の長女だそうですが、この口調です。
幼馴染同士で似てしまうものなのでしょうか……。
ほら……大声で騒ぐから、クラスメイトがヒソヒソと噂話を初めてしまったじゃないですか。
「それってジュリアーナ様の馬車なのよね……なんでバズドドが送ってあげるみたいな言い方するのかしら……」
「きっと『お前の馬車は俺のもの』とでも思っているんじゃないでしょうか?」
「リリノアも遠慮というものを知らないのですかね。ジュリアーナ様は伯爵令嬢だというのに……。リリノアは身分をわきまえていませんよね。おまけに二人の間に割り込むなど図々しい……」
「それよりも、なんであんな男にジュリアーナ様が……女の私がジュリアーナ様と添い遂げたいと思うくらいなのに」
「あ、それは私もですわ。ジュリアーナ様は学園一の美女ですもの」
「それだけにあんな男では勿体なさすぎですわね」
私の聴覚はかなり優れていますから、教室内でのヒソヒソ会話くらいなら聞こえてしまうんですよ。
相変わらずバズドド様への批判が目立ちますが、あれでも良いところは僅かながらありますし、私は将来を誓った相手ですから。
余程のことがなければ冷めることはないでしょう。
余程のことがなければですが……。
「もちろんだともー。ジュリアーナに誘われたら嬉しさのあまり心臓が飛び出しそうだよ」
大袈裟ですよ。
紹介が遅れましたが、私とバズドド様は婚約関係の仲です。
いわゆる貴族同士の政略結婚ではありますが、私達の関係はそのような肩書きなど不要なほど相思相愛ですからね。
このことは通っているメンソール学園の生徒や教師の間でも有名になっていて、ほとんどの方から私にだけ応援と同情をいただいています。
なぜならば、二つ大きな問題があるからですね。
「そうだ、もしよかったら俺の幼馴染も一緒に送ってはくれないだろうか?」
「リリノアさんですか……」
一つ目の問題が早速浮上しましたね。
リリノアさんはメンソール学園に通う同級生で、バズドド様の幼馴染でもあります。
リリノアさんは難病を抱えているらしく、治療のために遠く離れた地域に引っ越していたそうですが、最近になってこちらへ帰ってきたそうです。
バズドド様達は仲がとても良かったそうで、当然帰ってきたことによって大はしゃぎな毎日を送られていました。
それ以降、私のことは放置されてしまうか、必ずリリノアさんがセットでくっついてきます。
「だめか? 帰り道は同じだから良いじゃないか」
「そうですね。わかりました」
ここで断ってしまうのも失礼ですし、意地悪な女だと思われてしまいそうで「いいえ」などと言えるわけがありません。
「よっしゃ! じゃあリリノアにも声かけてこよーっと!」
あぁ……二つ目の問題も出てきましたね。
バズドド様は准男爵家の長男ではありますが、教育が疎かだったようです。
口調も貴族らしからぬ発言が多いですし、社交ダンスなどまるでできません。
とはいえ、私と一緒のときに少しずつ教えてはいますが、まるで成長しないのです。
「リリノアーーー! 今日ジュリアーナの馬車で送ってってやるから一緒に帰ろー」
教室内で大声で騒がないでほしいです。クラスメイトが見ているじゃないですか。
「アタシも一緒に!? やったー! バズドド、ありがとー!」
リリノアさんも男爵家の長女だそうですが、この口調です。
幼馴染同士で似てしまうものなのでしょうか……。
ほら……大声で騒ぐから、クラスメイトがヒソヒソと噂話を初めてしまったじゃないですか。
「それってジュリアーナ様の馬車なのよね……なんでバズドドが送ってあげるみたいな言い方するのかしら……」
「きっと『お前の馬車は俺のもの』とでも思っているんじゃないでしょうか?」
「リリノアも遠慮というものを知らないのですかね。ジュリアーナ様は伯爵令嬢だというのに……。リリノアは身分をわきまえていませんよね。おまけに二人の間に割り込むなど図々しい……」
「それよりも、なんであんな男にジュリアーナ様が……女の私がジュリアーナ様と添い遂げたいと思うくらいなのに」
「あ、それは私もですわ。ジュリアーナ様は学園一の美女ですもの」
「それだけにあんな男では勿体なさすぎですわね」
私の聴覚はかなり優れていますから、教室内でのヒソヒソ会話くらいなら聞こえてしまうんですよ。
相変わらずバズドド様への批判が目立ちますが、あれでも良いところは僅かながらありますし、私は将来を誓った相手ですから。
余程のことがなければ冷めることはないでしょう。
余程のことがなければですが……。
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