【完結】婚約相手は私を愛してくれてはいますが病弱の幼馴染を大事にするので、私も婚約者のことを改めて考えてみることにします

よどら文鳥

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 最初、御者と護衛は不思議そうな顔をしていましたが、私が構いませんと言って従わせます。
 本来ならばリリノアさんを送るなど想定していませんから無理もないでしょう。

 バズドド様とリリノアさんを乗せて馬車は動き始めました。

「バズドドー、今日はありがとね。ジュリアーナも一緒だけど我慢するわ」

 喧嘩を売っているとしか思えませんが、ここは我慢しておきます。
 私が出ずともすぐに怒ってくれる方が目の前にいるわけですから。

「窮屈な思いをさせてすまないな」

 あれ……何かがおかしいです。
 流石に私のことをこれだけ侮辱してきたのですから、バズドド様が注意してくれるかと思っていたのですが……。

「良いよ、バズドドがいてくれるし。それにこれだったら窮屈でも我慢できるー」

 そう言ってリリノアさんはバズドド様の真横にベッタリです。
 婚約者の私がいるのにも関わらず、遠慮というものが全くありません。

「こらこらダメだよリリノア。今の俺にはジュリアーナという大事な婚約者がいるんだぞ」

 そうです、それくらいは言ってください。
 私とて、愛する男が他の女とベタベタくっついているところを見ていたら、流石にイライラしてしまいますので。

「でも今は緊急事態でもあるからな。リリノアがこれで落ち着けるなら構わない。良いだろジュリアーナ?」
「え……!? は、はい……」

 本心としては今すぐ離れてくださいと言いたいのですが、ただくっついているだけで激怒してしまうようでは、バズドド様の気持ちを疑うようなものです。
 バズドド様の行為が愛ではなく幼馴染同士の友情であるならば、我慢するしかありません。
 しかし、私の表情はどんどん険悪なものになってしまいます。

「リリノアよ、今すぐそこから離れるように、従わなければこの場で下ろす」
「ひ!?」

 ずっと黙って見ていた護衛が厳しい口調でリリノアさんに叱責しました。

「護衛の方、リリノアは病弱なんですよ。馬車に乗ったら酔ってしまうでしょう。気を紛らわすために俺はこうやって……」
「アタシ……気持ち悪くなってきちゃうー……」

「だったら最初から乗るでない! 窮屈だと!? 笑わせるな。これだけ広い馬車はそうそうあるまい。文句があるなら双方降りるのだ」

 あぁ……護衛を怒らせてしまいました。
 あまりにも凄まじい威圧で二人とも震えています。

「今日だけは送っていってあげてください。これは私からの命令です」
「承知しましたお嬢様。出しゃばったマネをしてしまい申し訳ございません」

「でもリリノアさん、私の婚約者からはもう少し離れてほしいです」
「わ……分かったわよ」

 バズドド様はいまだに震えています。

 発端はこの二人だということは間違いないので、ここは放っておくことにしましょうか。
 これも貴族として……いえ、常識として勉強していってくださいね。

 私はバズドド様のことを愛していますから、立派な人間になってほしいのです。

 とは言いましても、私とて立派な人間では無いですけどね。
 共に成長できる夫婦になりましょう。
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