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ソフィアは抱きしめられた

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「仮に周りが全員敵になってしまったとしても、私はこれからお母様と一緒にいたいと思います。むしろ、もう離れないでほしい……」
「ソフィア……」

 必死に私は何度も説得した。
 やがて、ようやくお母様の殺気がなくなった。
 それに伴い、アーヴァイン様たちも馬車の中から出てきた。

「ソフィア様……申し訳ありません。全く動くことができず……」
「我々もなにもできませんでした。ソフィア殿の護衛失格でしょう……」
「そんなことないですよ。それに、お母様が私に危害を加えるはずがないですし」

「ここにいる全員を身動き取れなくするくらいの殺気を放ったのに、ソフィアは動けたのね。さすが私の子供だわ」

 お母様がなんとなく喜んでいるような顔をしてくれた。
 私はこんな顔を見せてくれるお母様とずっと一緒にいたい。

「報復はやめてくださるのですね?」
「そこまで言われたらね……。でも、この二人への恨みは消えることはないわ」
「それでもお母様は手を加えないであげてください」

「ソフィア……おまえ……」

 ずっと震えながらこちらを見ていたゼノ伯爵が、初めて私に対して優しそうな声で名前を呼んでくれた。
 これは私にとっても予想外だったけど、嬉しくも思ってしまった。

「お母様、王宮で私と仲良く接してくださるかたを紹介したいです。一緒に来てくれませんか?」
「うぅん……」

 お母様は今もなお、ためらっている。
 さすがに無理に頼むわけにもいかないか……。
 だが……。

「私からもリリス様にお願い申し上げます。どうか、ソフィア様の頼みを聞いてあげていただけないでしょうか」
「あなたは?」
「申し遅れました。私はソフィア様の専属護衛かつ……ソフィア様のことを愛する者でアーヴァインと申します」
「ほへ!?」

 私は無意識に情けない声を出してしまった。
 いきなりアーヴァイン様はなにを言い出すんだ!
 いくら説得させるとはいえ、そんな冗談を言ってしまったら私まで本気にしてしまうじゃないか。
 しかし、アーヴァイン様はそのまま私のことをギュッと抱きしめてきた。

「はひっ!?」
「私はソフィア様を幸せにしたい! つまり、それは魔女リリア様の幸せも含まれるのです。どうか……、ソフィア様の願いを聞いていただけないでしょうか」
「ちょ……アーヴァイン様?」

 抱きしめられたまま離してくれない。
 普通に恥ずかしい。
 だが、お母様はそんな私たちを見ながらクスクスと笑っていた。

「十年以上ぶりに会えたと思ったら、いきなり幸せ自慢かい。やれやれ……。ソフィアの幸せそうな顔を見てたら、本来の目的も忘れてしまいそうだよ……」
「じゃあ……もしかして……?」

 私は期待に満ちた声でお母様に問いかけた。
 すると、ニコリと微笑み優しく肩に手を乗せてきた。

「良いよ。私も今の国王に会ってみたいと思っていたからね」
「ありがとうございます!!」
「この青年から、よほど好かれているんだね。ソフィアはしっかりと良い子に育ってくれたようでホッとしたわよ」

 そう言いながら、お母様から出ていた殺気のようなオーラが完全に消えた。

 今目の前に立っているのは、かつて恐れられていたという魔女ではない。
 私の大事なお母様なのだ。

 一緒に馬車へ乗り込み、お母様のこれまでの話を聞きながら、王都へと向かっていった。
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