【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥

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1 最愛の人から婚約破棄を申し込まれてしまった

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「ヒマリよ、婚約破棄を宣言するので俺とは別れてほしい」
「え!? どうしていきなり! 今までずっと一緒にいてくれたでしょう?」

 私ことヒマリ=ファールドは、信じられずに驚いたままだった。
 目の前にいるレン=ジェイムスは王宮直属騎士である。

 ここは王宮の訓練場近くにある広場だからいつものまったりデートかと思ったら、こんなことを告げられてしまった。
 レンとは小さい頃から一緒で、仲が良く五年前からは恋仲になった。

 レンが王宮で仕えるようになってから婚約まで発展して、両家共に両親の許可をなんとか得たばかりなのだ。
 自分で言うのも恐縮だが、私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほどいい関係だったはずなのに何故……。

「理由は簡単だ。ヒマリほどの人間なら、俺より凄い人と一緒になるべきなんだ」
「そんな! いきなり勝手だし!! 誰よりも好きなのはレンなのよ! それに今日は……」
「そうだよ。ヒマリの誕生日だ。婚約破棄宣言は、俺からの最後の誕生日プレゼントだよ……」

 レンが本心で言っているようには思えない。
 何度も喧嘩したことはあったが、こんなに酷いことは言われたことがないのだ。
 だが、疑った自分がバカだと思い知るのはこの後だった。

「それに、俺には最愛の女性がいるんだ。その人の幸せを第一に考えることにしている」
「ふざけないでよ! ずっと私と一緒にいながらそんなこと考えていたの!?」
「あぁ」

 レンの目がマジになっている。
 長年ずっと一緒にいたから、仕草や行動で本気なのか冗談なのかの区別はできる。
 だからこそ、私にとってはこの上ないショックだったのだ。

「レンのバカ!! ずっとずっと一緒だと思っていたのに……。私だけがレンのことを愛していたというの……」
「俺からの誕生日プレゼントを無駄にしないでほしい……」
「からかわないでよ! もう知らない!!」

 涙をポタポタ流しながら、馬車に飛び込み、そのまま我が子爵家へと向かった。

 馬車の中でも涙が止まらず、化粧がどんどんと落ちて酷い顔になってしまっているに違いない。
 こんな私ではレンより凄い人と結ばれるわけがないだろう。
 というよりも探す気持ちも全くないが。

「うぅ……どうしてレンがあんなことを」

 納得ができない。
 婚約はしているのだから、私がイエスと言うまでは正式には婚約破棄が認められないだろう。
 あとはレンのご両親と話せばもしかしたら……。
 私の両親には話しても無駄だと思うので、今日のところは黙っておくか。
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