小頭はBL

壺の蓋政五郎

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小頭はBL 9

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「馬鹿な考えは捨てろ。安寿様は特別なお人だ。悪霊祓いをしてもらったと感謝すればいいんだ」
 健司がダンプを止めて飛び降りた。
「こんにちは、やっぱり同好会に入りたくて来ました」
「ああいいさ。シャワー浴びるから待ってて」
 健司はいつもの水浴びである。
「康介、後藤さんのあと風呂いただけ。俺はここでシャワーを浴びる。食堂で待ってたら。康介案内してやれ」
「はい、どうぞこっちです」
 食堂の引き戸を開けると晶子が出迎えた。
「お帰り康介、山切は大変だったろ」
「ええ、まあ」
 午前中は安寿の悪霊祓いを受けていた。数えていただけで十二回果てた。午後からは疲れて健司と二人で崖の上にブルーシートを敷いて眠ってしまった。仕事は道具を担ぎ上げただけである。後藤が風呂から出て来た。
「いただきます」
 交代で康介が風呂場に向かった。
「おう、来たの」
「はい、お願いします」
 後藤の挨拶に鉄男が答えた。
「俺は今日は行かないけど小頭と一緒に行けばいいさ」
 厨房から尚子が出て来た。
「鉄男君、ご飯まだでしょ、食べていきな、大したものはないけど味には自信があるの」
「はいでも」
「遠慮なんかしないしない、うちの稼業はとび職だからね、弱いもんを助けるのが心情だよ」
 晶子が付け足した。鉄男は自分が弱い者に思われていると悟った。確かにマイノリティである。付き合った男も複数いる。付き合いが長くなることはなかった。相手は興味本位の欲を果たせば冷たく当たる。罵声を浴びせて去っていく。それから考えが変わった。欲を求めず愛を求めるようになった。自分の性欲処理は自慰で済ますことにした。愛を感じた男だけと交じり合うと決めた。今泉に来て二週間、性欲は我慢している。我慢出来るようになってきた。古本屋で買った般若心経、意味も分からず読経しているが気持ちが安らぐ。康介がブリーフ一丁で出て来た。
「お風呂いただきました」
 晶子が身震いした。先代が亡くなってから男と縁がない。還暦前の熟した身体は爆発寸前である。誰もいなければ康介のブリーフごとしゃぶりたい。康介は健司から許可を得ている。晶子が欲すれば逃げることなく相手になれと。女好きになるためにやりまくれ、そうすれば間違った性癖にならずに済む。晶子の視線を感じて反応した。ブリーフの先が少し動いた。
「外で待っています」
 康介のブリーフ姿に頬を赤らめた鉄男が食堂から飛び出した。「ふーっ」と上気した気持ちを吐き出した。もし康介と二人なら欲には勝てなかったかもしれない。晶子の視線を見ている後藤がニヤニヤしている。尚子は厨房で康介と鉄男の食事の支度をしている。康介のモノがブリーフの窓から飛び出した。尚子が食堂から出てくる気配を感じた後藤が立ち上がる。
「尚子ちゃん、珍しいなこれしょっぱい」
 厨房から料理を差し出す小窓で後藤と尚子は向かい合い立ち話をする。
「あらっ、調味料が変わったのかしら。すぐ直すわ。十分待って」
 ドスケベ後藤が晶子に助け舟を出した。五分あれば用を足す。康介は晶子の視線に近付けた。モノは完全に飛び出している。晶子が咥えた。じっくりと楽しみたいが時間がない。後藤が急かしている。

 鉄男が外に飛び出すとダンプの陰で健司の背中が見える。そっと近付くと上り龍と目が合った。
「はっ」
 思わず声を出してしまった。健司が気付いて振り返る。角刈りに石鹸を擦り付けていたが驚いて落としてしまう。石鹸はダンプのバンパーに跳ねて鉄男の足元に転がった。鉄男が拾った。顔を上げると目の前に健司のモノがぶら下がっている。大きさに驚いた。それがみるみる立ち上がる。健司は恥ずかしくて鉄男に背を向けた。鉄男は我慢出来ずに上り龍に抱き付いた。
「小頭」
 そう言って健司のモノを握り締めた。

 晶子がスパッツを脱いで後藤にアイコンタクト。後藤が尚子に見られぬようにOKサインを出した。康介は午前中に安寿と十二回以上重なったが若さが回復させる。晶子がテーブルに上半身を預けた。康介が後ろに回る。尻が大きくて届かない。康介を長椅子に倒した。その上に跨った。椅子の座りが悪くカタカタと規則正しい音がする。
「何の音?」
 厨房の尚子が後藤に訊いた。
「康介の野郎、育ちの割には悪い癖で貧乏ゆすりしやがって。おおい、康介貧乏ゆすりは止めろ」
 後藤が誤魔化した。しかし揺れば激しくなるばかりである。
「♪、母さんお肩を叩きましょう。たっとんたっとんたっとんとんてか」
 後藤が鼻歌を歌い音消しをする。『カタカタカタカタカタ・・・・』
「♪たっとんたっとんたっとんとん、ばっこんばっこんばっこんこん」
「変な歌、はい出来たわ」
 尚子が窓口に差し出した。
「ごちそうさまで~す」
 康介が発射した。晶子は雑巾に噛み付いて喘ぎ声を殺している。
「あの野郎、飯が遅いから嫌味で言ってんだ。おおーい康介晩飯で来たぞ~」
 後藤が大きな声で二人に知らせた。
「いただきま~す」
 ブリーフを上げながら答えた。晶子も腹の肉に引っ掛かるスパッツを捩じり込むようたくし上げた。

 鉄男は両手でしごいた。鉄男は健司が自分と同類であることを確信した。
「小頭、そうなんですね?」
「放してくれねえか、俺はあんたに感じているんじゃねえ、頭の中で尚子さんのことを想い出していたんだ。偶然さ」
 健司が身体を揺すって鉄男を振り解いた。
「嘘、そんなの嘘だわ」
 鉄男は健司の嘘を信じない。
「嘘なもんか、俺はとび職だよ、小松組の小頭だよ。勘違いしないでくれ。着替えて着るから食堂で待ってな」
 健司はいきり立ったモノを乗馬ズボンで隠して二階の部屋に戻った。

 尚子が料理を運んだ。晶子は康介の横に座っている。まだ物足りない。後藤は酒をすすりながら晶子を見てニヤニヤしている。
「気持ち悪い後藤さん、母さん見て笑っている」
 尚子が二人を交互に見ながら言った。
「後藤さんはどうして結婚しないんですか?」
 康介がストレートに訊いた。
「若い時から女遊びばかりしていたから罰が当たって結婚出来ないんだよ、康介もこんな男になっちゃ駄目だよ」
 晶子は後藤を悪い見本に仕立てた。
「そりゃその通りですけどね・・・まあいいか」
 後藤が鼻で笑った。欲に負けて秘密を握られた晶子はそれ以上返せない。鉄男が入って来た。
「さあ鉄男君、急いで食べなさい、小頭と神輿の練習に行くんでしょ」
 尚子が飯をよそいながら言った。
「すいません尚子さん、食欲がないんです」
 上気して頬が赤い鉄男は下を向いた。まだ手の中に健司のぶっとい感触が残っている。
「いいのよ、おにぎりにしておくから帰ってから食べれば」
 尚子は外に出た鉄男に何かあったのか心配だった。
「小頭は外でシャワーを浴びてたろ?」
 後藤が意地悪な質問をした。後藤は健司が尚子に言い寄らないのはおかまかもしれないと疑っている。そうであれば鉄男と外で何かあったのかもしれないと勘ぐった。
「さあ、分かりません」 
 外に出て健司の水浴びに気付かない方がおかしい。
「健司の上り龍はカッコいいだろう?」
 後藤がさらに詰め寄る。鉄男が下を向いて首を振る。晶子も後藤の予想が当たりに思えて来た。鉄男の視線は隣のテーブルの下に向いた。あろうことか康介のブリーフからモノが飛び出している。康介は鉄男の視線に気付いている。上下させた。
「さあ行こうか。尚子さん、握り飯にしといてください」
 健司が食堂に入って来た。真っ白な鯉口のダボに赤のフンドシ、丈の長い半纏を角帯で結んでいる。これが健司の晴れ姿。胸に今泉神輿同好会と銘がある。角刈りをポマードで逆立てている。眉が太くキリリとしている。
「カッコいい」
 声を出したのは康介だった。尚子が健司に寄った。
「小頭、気を付けて」
 尚子は誰もいなければ抱き付いてしまいたいと思った。
 
  健司と鉄男はバンで出掛けた。さっきのことで二人共ぎごちない。
「さっきはごめんなさい。みっともないとこみせてしまって」
 鉄男が後ろから抱き付いて健司のモノを握ったことを詫びた。
「いいさ、君の性についてよく分からないけど秘密にしておこう」
 健司は今すぐにでも抱きしめたい気持ちを抑えていた。さっきのことを想い出すと自然にモノが反応する。ふんどしだから持ち上がる勢いを押さえ付けられている。しかしモノがモノだけに突き破る勢いである。それにシミがついてはうまくない。神輿の練習中に半纏が開けてしまうとふんどしが露わになる。このまま鉄男の傍に付きっ切りになれば収まることはない。ここで一発発射しておくのが無難である。左手でハンドルを握り右手でふんどしの右横を広げた。すかさず飛び出したモノがハンドルの裏側に当たる。
「小頭は尚子さんと結婚するんですよね?」
「誰に聞いたの?」
「店長です」
「鉄男君て言ったよね?」
「鉄男でいいです」
「それじゃ鉄男の性の対象は男なんだ?いやおかしなことは考えていない。色んな性があると思っているから。他の人が何て言おうと俺は平気だよ。だから安心して」
 どうしてやりたいと素直に言えないのか。カッコつけてこのまま齢を重ねて自分の性を表に出せず一生を終えてしまうのか。健司は鉄男の出現により悩みが深くなった。

 晃が戻る。後藤がぺこんと頭を下げた。尚子は厨房で洗い物を始めたばかりである。
「あらお帰りなさい」
 晶子が上気した顔で出迎えた。上気の原因は康介の感触を想い出していたからである。
「ただいま、母さん顔が赤いよ。血圧高いんじゃない」
 晃が心配した。
「俺の酒を一杯だけ付き合ってくれたからさ、そうだよね姐さん」
 後藤がフォローしたがわざとらしい。
「ならいいけど、無理しない方がいい」
 晃は後藤の言い分と晶子の態度が噛み合わないような気がした。
「さあて寝るかな、花の土曜日、金もねえしな」
 後藤が無心を布石した。
「後藤さん、話があるんだ。少し時間いいかな?」
 晃の誘いに頷いた。
「母さんも、姉さんもちょっと集まってくれる」
 尚子が厨房から出て来た。
「どうしたの晃、そんな改まって」
 尚子が布巾で手を拭っている。
「驚かないで聞いて欲しい。小松組を解散する」
 三人が驚いて『えっ』の発音のまま口を開けている。
「それはいつか、今年の今泉のお祭り後に解散する」
 晃は続けて言った。
「解散てお前、小頭に相談もしないで」
 晶子が筋を通すことを勧めた。
「そうよ、小頭に先ず相談すべきよ。今の小松組は小頭の技術と信用で繋いでいるぐらい分かっているでしょ」
 尚子も晶子に同意した。
「またなんで、それも急に?」
 後藤が話を戻した。
  
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