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10 ドアが開くと砂の海⑤
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腕を伸ばした瞬間、バランスが崩れた。大声を上げた隼斗は、前にのめるようにして転がってしまう。
またたく間に、巨大ミミズが追いついてきた。鼓膜を震わす重鈍な響き。
隼斗、と父が叫んだ。
「その腕にあるやつ、それ使えないのか?」
もつれる足をさらに絡ませ、隼斗は腕のタブレットをのぞき込む。
「なんでもいいから、それ押してみろ!」
言われたとおり液晶に触ると、ボタンが三つ並んだ画面に切り替わった。
すぐに、一番左のボタンを押す。すると、途端に防犯ブザーのようなけたたましい音が辺りに鳴り響いた。
「お早い呼び出しですね。何か御用ですか?」
あわてて耳をふさぐ一家の前に、先ほどの青スーツの男が現れる。
宙に浮き、まるで二階の窓から下界を望むようなかっこうで、のんびりと目を細めた。
なんだか急に、息せき切っている自分がバカらしく思え、隼斗はぐふぅと小さくセキをする。
「あれ何? 何なの? あの、巨大ミミズ」
ああ、と青スーツの男は、のんびりとうなずいた。ちろり、と彼が一瞥する視線に合わせ、隼斗も振り仰いでみる。
巨大ミミズは一時停止中の画面のように鎌首をもたげたまま、動きを止めた。
「あぁ、はい。お伝えするのを忘れておりました。オプションがございますが、内容は選べません」
「オプションって何よ?」
今にも泣き出しそうな顔をしてへたり込んでいたアカネが、ようやく声を上げる。
「サンドワームでございます」
青スーツの男の口から、白い歯がこぼれた。
「これはなかなかの人気でして、通常は三年待ちとなっております。それでも今回は、我々イチオシの特別企画! 無理に配置の許可を得たのです」
ぱちん、と指を鳴らす音が辺りにこだまし、青スーツの男は輪郭線をぼやかし始めた。
「ブザーでの呼び出しは、通常、三回までとなっております」
「三回って……え?」
「四回目からは音のみ鳴りますが、私どもには伝わりません。今ここで鳴らしましたので、残るブザーは、あと二回となります」
またたく間に、巨大ミミズが追いついてきた。鼓膜を震わす重鈍な響き。
隼斗、と父が叫んだ。
「その腕にあるやつ、それ使えないのか?」
もつれる足をさらに絡ませ、隼斗は腕のタブレットをのぞき込む。
「なんでもいいから、それ押してみろ!」
言われたとおり液晶に触ると、ボタンが三つ並んだ画面に切り替わった。
すぐに、一番左のボタンを押す。すると、途端に防犯ブザーのようなけたたましい音が辺りに鳴り響いた。
「お早い呼び出しですね。何か御用ですか?」
あわてて耳をふさぐ一家の前に、先ほどの青スーツの男が現れる。
宙に浮き、まるで二階の窓から下界を望むようなかっこうで、のんびりと目を細めた。
なんだか急に、息せき切っている自分がバカらしく思え、隼斗はぐふぅと小さくセキをする。
「あれ何? 何なの? あの、巨大ミミズ」
ああ、と青スーツの男は、のんびりとうなずいた。ちろり、と彼が一瞥する視線に合わせ、隼斗も振り仰いでみる。
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「あぁ、はい。お伝えするのを忘れておりました。オプションがございますが、内容は選べません」
「オプションって何よ?」
今にも泣き出しそうな顔をしてへたり込んでいたアカネが、ようやく声を上げる。
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青スーツの男の口から、白い歯がこぼれた。
「これはなかなかの人気でして、通常は三年待ちとなっております。それでも今回は、我々イチオシの特別企画! 無理に配置の許可を得たのです」
ぱちん、と指を鳴らす音が辺りにこだまし、青スーツの男は輪郭線をぼやかし始めた。
「ブザーでの呼び出しは、通常、三回までとなっております」
「三回って……え?」
「四回目からは音のみ鳴りますが、私どもには伝わりません。今ここで鳴らしましたので、残るブザーは、あと二回となります」
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