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14 力の限り走りぬけ④
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「もうゲームオーバーでいいからさ」
帰りたい。
そう口にしながらも、どうもこれはただでは済みそうもないと隼斗は考え始めていた。耳のしびれは続いていたし、落ちたときにできたすり傷も、わずかに動いただけでひりひりと痛んだ。
「考えろ、考えるんだ」
青スーツの男は、「時空管理局主催の特別企画」だと説明した。
「本当に時空を超えるなんてこと、あるのかな」
ふらりと踏み出した足が、ずぶずぶと砂の海に沈んでいく。膝の下まで埋もれたところで、ようやく力を込めた。
「それじゃあ、あの横に動くエレベーターは、タイムマシンじゃないか!」
それとも、と隼斗は立ち止まる。
「……VRゲーム?」
どちらにしても、ここに連れてこられたのがあの親切な老夫婦でなくて良かった、と隼斗は薄く笑った。
「あんな段差を乗り越えられないのに、砂漠なんて」
ぼくで良かった、良かった、と呪文のように繰り返し、なんとか自らを奮い立たせる。
「ぼくは、なんだってできる! サンドワームからだって、逃げ切れたし!」
いざとなれば押せばいいと、腕のタブレットに目を落とした。
二分割された下側の液晶をタップすると、三つのボタンが並んだ画面に切り替わる。一番左のボタンだけが、黒い。
「お助けブザーも、あと二回もあるし」
液晶画面が、ぶるりと振動した。
勝手に画面が切り替わり、真ん中に大きく「▽」の図形が記された。ちかちかと点滅し、まるで「押せ」と言われているような気分になる。
慎重に指先を伸ばしてタップすると、それまで「▽」のあった場所にゴシック体の太文字が浮かび上がった。
『サンドワームに襲われ、家族と離れ離れ』
そして、再び「▽」の図形。
隼斗は慎重に画面に触れる。
「ご当選者様はすみやかにピラミッドを目ざしてください、だって?」
帰りたい。
そう口にしながらも、どうもこれはただでは済みそうもないと隼斗は考え始めていた。耳のしびれは続いていたし、落ちたときにできたすり傷も、わずかに動いただけでひりひりと痛んだ。
「考えろ、考えるんだ」
青スーツの男は、「時空管理局主催の特別企画」だと説明した。
「本当に時空を超えるなんてこと、あるのかな」
ふらりと踏み出した足が、ずぶずぶと砂の海に沈んでいく。膝の下まで埋もれたところで、ようやく力を込めた。
「それじゃあ、あの横に動くエレベーターは、タイムマシンじゃないか!」
それとも、と隼斗は立ち止まる。
「……VRゲーム?」
どちらにしても、ここに連れてこられたのがあの親切な老夫婦でなくて良かった、と隼斗は薄く笑った。
「あんな段差を乗り越えられないのに、砂漠なんて」
ぼくで良かった、良かった、と呪文のように繰り返し、なんとか自らを奮い立たせる。
「ぼくは、なんだってできる! サンドワームからだって、逃げ切れたし!」
いざとなれば押せばいいと、腕のタブレットに目を落とした。
二分割された下側の液晶をタップすると、三つのボタンが並んだ画面に切り替わる。一番左のボタンだけが、黒い。
「お助けブザーも、あと二回もあるし」
液晶画面が、ぶるりと振動した。
勝手に画面が切り替わり、真ん中に大きく「▽」の図形が記された。ちかちかと点滅し、まるで「押せ」と言われているような気分になる。
慎重に指先を伸ばしてタップすると、それまで「▽」のあった場所にゴシック体の太文字が浮かび上がった。
『サンドワームに襲われ、家族と離れ離れ』
そして、再び「▽」の図形。
隼斗は慎重に画面に触れる。
「ご当選者様はすみやかにピラミッドを目ざしてください、だって?」
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