少年王と時空の扉

みっち~6画

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18 働かざる者食うべからず③

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「え? 今、聞こえ……た?」
 急いで辺りを見渡す。隼斗を取り囲むことばのウズが、一瞬だけ意味を持って聞こえた気がした。
「どうした、ボウズ」
 男に問われ、説明しようとした隼斗の目が、驚きに見開かれる。彼の首に、見覚えのあるものが揺れているのに気づいたのだ。
「あの、それは? ……その、それ……です」
「うん? なんだって?」
 隼斗の意図にはまるで気づかず、男は小首をかしげた。
「とにかく、困っているのならここで暮らしたらいい。ここは、オレたちのチームが住んでいる。みんな仲間だから、心配ない」
「……チーム?」
 少年野球のチームメイトらの顔が、ふいに浮かんだ。
 みんな気心の知れた、隼斗の親しい仲間だった。彼らならば、隼斗が困っていると聞けば、すぐに駆けつけてあれこれ世話を焼いてくれるに違いない。
 もちろん逆に彼らが困っていれば、隼斗は自分のこと以上に味方になって闘うつもりでいた。
「ここはな、いくつかのチームに分かれて住んでいる。まぁ、村……みたいなものだろうな」
「村?」
 ぼう然と、隼斗は繰り返す。
「もちろん、ピラミッド建設のチームのことさ。おれたちは、冷徹で非常な西のやつらと違うぞ? やつらは、仕事を求めて外部から来る人間を、ことごとく追っ払っちまうが、おれら東のチームはそんなことしない。困ってるやつは、どんなやつでも受け入れる。ちゃんと働きさえすればな」
 そう豪快に笑い上げる男の胸には、ファラオの肖像が彫り込まれた黄金色のメダルが揺れていた。
「おれの名はアムルだ。困ったことがあったら、何でも頼ってくれて構わない」
 それから隼斗は、サミーラの勧めでスープをもう一杯飲み干した。最後の一滴まで残らず腹の中に収め、そうする間にもずっと隼斗はアムルの姿を目で追っていた。
「どうして彼は、ぼくの無くしたメダルと同じものを持っているんだろう?」
 ぼんやり物思いに沈み込んだ隼斗は、急に肩先をつかまれて驚いて飛び上がった。
「どうだ、ゆっくり休めたか」
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