少年王と時空の扉

みっち~6画

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19 働かざる者食うべからず④

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 アムルは外を指し示し、隼斗を誘った。
「今からおれは仕事の時間だが、もしおまえに働く気があるのなら、いっしょに連れて行ってやる」
 歩き疲れた隼斗は、このままここで眠ってしまいたい、というのが本音だった。だが今ここで置いていかれては、ことばの通じない隼斗ではどうすることもできない。
 家族を見つけるまでは、彼について行くしかないのだ。
 隼斗が行くと告げると、アムルはうれしそうに「良かった」と繰り返した。
「実は、人手が足りない。このままでは西のやつらに差を付けられちまう」
 それだけは勘弁ならねえ、とアムルの鼻息は荒い。
「うちのチームの仕事は正確でていねいだが、それだけに時間と労力もかかるのさ」
 日影を出ると、灼熱の太陽が砂地を熱している。少しでも日よけにしようと、シャツを頭からかぶった。
「おい、こっちだ」
 アムルが、大きな穴の前へと続く小道の前で手招いている。
「どこへ行くの?」
「ここを抜けると、建設現場の目の前に着くのさ。近道だよ」
 確かに、トンネルを抜けると目と鼻の先に台地が広がり、くっきりと空を切り取る建造物が見えた。 
「どうだ?」
 誇らしげに、アムルは鼻を鳴らす。
「おれたちはあそこで働いている。完成にはまだ多少の時間が必要だが、これだけでも立派なものだろう」
「ピラミッド? やっぱりこれって、その……王様、いやファラオの……」
 アムルは破顔した。
「これが完成すれば、クヌム神の加護の下、クヌム・クフ・ウイ様の威光は、地平のかなたまで鳴り響くであろうな」
 クフ王か、と隼斗はうなる。
 有名な、ギザの三大ピラミッドのひとつを建設させたと言われる王の名だ。
「ええっと、ひとつだけ?」
「何を言う? あれほどのものが、そうやすやすとあってたまるか」
 だとすれば、ここはギザに最初にピラミッドが建設された時代ということなのだろうか。
「もう意味が分からない。ここに来て、何をすればいいのさ」
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