少年王と時空の扉

みっち~6画

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21 むき出しの悪意①

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「どうしたボウズ。ふん、己の身が心配か」
 砂地に足を踏ん張って空を仰ぐアムルの胸には、隼斗のメダルが揺れている。
 エジプト展の来場百万人目の記念メダル。老夫婦の好意で隼斗が譲り受け、砂漠で無くしたものと同じ。
 すでに、隼斗の頭には、ひとつの可能性が思い浮かんでいた。
 黄金のメダルに触れたとき、今まで分からなかったことばの渦が理解できた。もしかしたらあれを持っていれば、どこの国のだれとでも会話できるのではないか。
 現に、隼斗はメダルを持ったアムルと話ができる。
 野球の硬式ボールほどの大きさのメダルにそんな効力があるなどとは、いつもの隼斗だったら笑い飛ばしてしまうだろう。
 それでも、ここは常識では測れない世界なのだ。
「どうして、よりによってあんな怖いやつに拾われちゃったんだろ」
 大人に凄まれた経験のない隼斗は、完全におびえていた。
 怖かった。アムルの怒りそのものよりも、隼斗のことばが理解できる者が、彼だけであるという事実が、何よりも。
「苦くてもなんでもいいから、またサミーラのスープが腹いっぱい飲みたい」
 ただただ、腹を満たして眠りたかった。丸くなって眠っていれば、きっと元の世界に帰れるのではないか。
  半そでTシャツとだぶだぶのハーフパンツ姿の隼斗は、この場所では人目を引くのだろう。少しでも立ち止まると、すぐに興味津々の野次馬たちに取り囲まれてしまう。
 心細くて、怖くて、唇が震えた。
 思わず駆け出しそうになる隼斗を抑えたのは、ヒゲをたくわえた男だった。にゅっと、隼斗に手を伸ばし、無理に自分のほうに引き寄せようとしてくる。
 気がつくと、別のだれかが、隼斗のTシャツに触っている。背中を押され、倒れ込む。
 膝が、がくがくと震え、力が抜けた。今度は頭からかぶったシャツを、乱暴に引っ張られる。
「来い、ボウズ」
 とげとげしいアムルの声が、隼斗を呼んだ。その声音には、隼斗に対する嫌悪がにじみ出ていたが、それでも隼斗には、救いだった。
 ふらつく足取りで、アムルの元に急ぐ。
 アムルは隼斗を一瞥し、自分の仲間たちに何事かささやいた。
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