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23 むき出しの悪意③
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数人ずつ二列に並んだ大男の先頭に立たされた隼斗を、油つぼを抱えた女が、驚いたように見ている。
「力を出せよ。もっとだ!」
後ろからアムルの声がする。激しく怒鳴りつけられ、あざけられ、隼斗は唇をかんだ。
身長だけは中高校生にも見える隼斗だが、現実には平均的な小学五年でしかない。いくら力を込めても、巨大な石はまったく動く気配がなかった。
押し殺したような笑い声が聞こえて振り返ると、隼斗以外のすべての者が手を離し、顔を真っ赤にして笑っている。
「おお、すまんすまん。ちょっと疲れたんで、休んでしまっていたよ」
おどけるアムルに、女たちまでもが笑い合う。
「……負けたくない。こんな、やつらに」
隼斗の視線は、自然とアムルの胸元で揺れるメダルに向かった。あれを取り返すことができたら、もうこんなところに用はないのだと、隼斗は唇をかむ。
腕のタブレットはすでに、五の数字を指し示していた。家に帰るには、一刻も早く家族を探しに行かなければならない。
再び前を向き、ロープを引く。
石材はピラミッドの表面を登って運ぶものと思い込んでいたが、教科書などでよく見る傾斜の付いた盛り土は頂上まで届いていない。
戸惑う隼斗をさげすむように、アムルが「早く行け」と追い立てる。
遠くから見ると壮大なピラミッドも、間近にするとあまりに大きすぎて、ただの石のかたまりにしか思えない。
下方にぽっかり開けられた穴のような入り口に、一同は進んでいく。
穴の内部は、異様なまでにひやりとしていた。日の光を受けていた目が暗闇に慣れるまで、隼斗は慎重に足を運んだ。
重たいソリに押し出されるようにしてゆるやかな坂を登っていくと、やがて、前方に柔らかな光が待ち受けているのに気づいた。
それは、蛍光灯のようなまばゆさも、松明のような温もりも感じられない不思議な光だった。
「これって……鏡みたい。だけど、はっきり映らないな」
大がかりな理科の実験装置のように、あらゆる場所に配置された鏡モドキは、外部の光を屈折させ石造りの中に淡い光を届けている。
「力を出せよ。もっとだ!」
後ろからアムルの声がする。激しく怒鳴りつけられ、あざけられ、隼斗は唇をかんだ。
身長だけは中高校生にも見える隼斗だが、現実には平均的な小学五年でしかない。いくら力を込めても、巨大な石はまったく動く気配がなかった。
押し殺したような笑い声が聞こえて振り返ると、隼斗以外のすべての者が手を離し、顔を真っ赤にして笑っている。
「おお、すまんすまん。ちょっと疲れたんで、休んでしまっていたよ」
おどけるアムルに、女たちまでもが笑い合う。
「……負けたくない。こんな、やつらに」
隼斗の視線は、自然とアムルの胸元で揺れるメダルに向かった。あれを取り返すことができたら、もうこんなところに用はないのだと、隼斗は唇をかむ。
腕のタブレットはすでに、五の数字を指し示していた。家に帰るには、一刻も早く家族を探しに行かなければならない。
再び前を向き、ロープを引く。
石材はピラミッドの表面を登って運ぶものと思い込んでいたが、教科書などでよく見る傾斜の付いた盛り土は頂上まで届いていない。
戸惑う隼斗をさげすむように、アムルが「早く行け」と追い立てる。
遠くから見ると壮大なピラミッドも、間近にするとあまりに大きすぎて、ただの石のかたまりにしか思えない。
下方にぽっかり開けられた穴のような入り口に、一同は進んでいく。
穴の内部は、異様なまでにひやりとしていた。日の光を受けていた目が暗闇に慣れるまで、隼斗は慎重に足を運んだ。
重たいソリに押し出されるようにしてゆるやかな坂を登っていくと、やがて、前方に柔らかな光が待ち受けているのに気づいた。
それは、蛍光灯のようなまばゆさも、松明のような温もりも感じられない不思議な光だった。
「これって……鏡みたい。だけど、はっきり映らないな」
大がかりな理科の実験装置のように、あらゆる場所に配置された鏡モドキは、外部の光を屈折させ石造りの中に淡い光を届けている。
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