少年王と時空の扉

みっち~6画

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31 太陽を背負った男①

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 ぐずぐずと重たい足取りの隼斗と違い、シュンは砂地を踏みしめるのがうまい。杖を付いているとは思えない、滑らかさだ。
 初めはわずかに思えても、気が付くとその差は開いていくばかりだ。
 懸命に食らいついていくと、いつでもシュンは姿が見えなくなるぎりぎりのところで隼斗を待っていてくれた。
「うまいね、砂の上を歩くの」
 布で覆われたシュンのひとみが、ぎょろり、と光った。
「おまえたちが、不得手なのだ」
 それから不自然な間があって、「おまえは、だな」とシュンは言い直した。
「行こう」
 銀の覆いの合間から、黄金のメダルが揺れているのが見える。
「ねえ、シュン。待って、……待ってよ。本当にギザの台地に行くの? ぼく、今そこから逃げてきたばかりなんだよ。会いたくない人が、いるんだ」
 涼しげな目元で隼斗を見やり、シュンは肩をすくめた。
「おまえの事情は、すでに承知している。だが、残念ながらおれの行き先は変わらない」
 ――どんな理由があろうと、メダルから離れては、だめだ。
 心のどこかで、冷静に分析している自分がいる。だがそれとは別の声が、忌まわしいアムルのいる台地には近寄ってはいけない、とも忠告してくる。
 それでも、せっかくことばの通じる相手がいるのに、離れてしまうのは惜しい。それがどれほどありがたいことなのか、すでに隼斗は身を持って思い知らされていた。
 やはり離れてはだめだ、と隼斗は唇を引き結ぶ。
「少し、話をしない?」
 返事を待たずに、隼斗は砂地に座り込んだ。シュンの歩みが止まったのを確認し、隼斗は話し始める。その間に、シュンの心が変わればいいな、との思惑もあった。
「ぼくね、本当は喜んでいたんだ……最初はね。冒険ができる、夏の最高の思い出ができるぞって思ったから。だって、こんな経験したやつなんて、ぼくのほかにだれもいないでしょう?」
 違いない、とシュンはすぐさま肯定した。
「でもアムルに会って、いっしょに過ごして、心の底から怖いって思った。初めてだった、あんな感情。あいつ、ぼくのメダルを持っているんだ。盗んだんだよ。あれがあれば、ことばが通じない相手とでも話をすることができるんだ。今の、ぼくたちみたいにね」
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