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66 すべての道はローマに通じる①
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「今は非常事態です。何人たりとも、中には入ることは許されません」
き然とした態度でふたりを追い返したローマの兵士は、いつまでもこちらから視線を外さない。
「だめだ、行こう。……ここにいたら、危ない」
未練げなアカネの背を押して、隼斗は兵士から死角になる場所へと移動する。
その間じゅう、痛いほどの鋭い視線がふたりを追い続けてきた。
「どこに行くのよ? きっとあの中に入ったらクイズが出題されるんじゃないの?」
中にある書物は、すべて歴史的に貴重なものだ。
「でもこのままここにいたら、きっと捕まるよ? ……別の方法を考えなくちゃ」
隼斗は、隣接する荒れた野草園の入り口をうかがった。
「もしかして、向こうから入れるってことは、ないかな」
姉弟はしゃがんだ体勢のまま、そろそろと壁沿いに歩いた。
「それにしても、ひどい匂い。何もかも、燃えてしまったのかしら」
顔をゆがめて唇をかむと、アカネはそのまま鼻を押さえた。
「でもさ、なんかちょっとお茶みたいな……ハーブティーとか、そんな匂いもするね」
「ばかねぇ、不謹慎よ」
すぐに姉にたしなめられてしまった。
「なんでこんなひどいこと、したんだろうね」
このままでは、貴重な野草もろとも、すべてが燃え尽きてしまう。
「そうね。港の軍船から燃え移ったって、歴史の教科書には載ってた気がするけど」
そうなのか、と隼斗は荒れ果てた図書館を見つめる。
「このころのエジプトはね、政変が続いていたの。毎日が不安定。女王クレオパトラには妹がいたんだけど、彼女が反乱を起こして、姉を追放したのよ」
「姉妹で、女王の座を争ったってこと?」
「そう。追放されたクレオパトラは、ローマの将軍カエサルの力を借りて、妹の勢力を一掃したの。だから、クレオパトラは女王に復帰できたけど、同時にローマ軍をもこの地に呼び込んでしまった」
やがて人の気配が近づいてきて、アカネは隼斗をうながして物陰に潜んだ。
「でもね、この一件がなくても、ローマはエジプトを支配するために、たくさんのワナを仕掛けてきたはずよ。クレオパトラはその身を持って、ローマの侵略を防いでいたっていう見方もあるの」
ふぅん、と隼斗はアカネのことばに耳を傾けながら、感嘆のため息をもらした。
「クレオパトラ、か。ぼくでもその名前、聞いたことがあるよ。そんな人がこの近くにいるのかぁ」
き然とした態度でふたりを追い返したローマの兵士は、いつまでもこちらから視線を外さない。
「だめだ、行こう。……ここにいたら、危ない」
未練げなアカネの背を押して、隼斗は兵士から死角になる場所へと移動する。
その間じゅう、痛いほどの鋭い視線がふたりを追い続けてきた。
「どこに行くのよ? きっとあの中に入ったらクイズが出題されるんじゃないの?」
中にある書物は、すべて歴史的に貴重なものだ。
「でもこのままここにいたら、きっと捕まるよ? ……別の方法を考えなくちゃ」
隼斗は、隣接する荒れた野草園の入り口をうかがった。
「もしかして、向こうから入れるってことは、ないかな」
姉弟はしゃがんだ体勢のまま、そろそろと壁沿いに歩いた。
「それにしても、ひどい匂い。何もかも、燃えてしまったのかしら」
顔をゆがめて唇をかむと、アカネはそのまま鼻を押さえた。
「でもさ、なんかちょっとお茶みたいな……ハーブティーとか、そんな匂いもするね」
「ばかねぇ、不謹慎よ」
すぐに姉にたしなめられてしまった。
「なんでこんなひどいこと、したんだろうね」
このままでは、貴重な野草もろとも、すべてが燃え尽きてしまう。
「そうね。港の軍船から燃え移ったって、歴史の教科書には載ってた気がするけど」
そうなのか、と隼斗は荒れ果てた図書館を見つめる。
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「姉妹で、女王の座を争ったってこと?」
「そう。追放されたクレオパトラは、ローマの将軍カエサルの力を借りて、妹の勢力を一掃したの。だから、クレオパトラは女王に復帰できたけど、同時にローマ軍をもこの地に呼び込んでしまった」
やがて人の気配が近づいてきて、アカネは隼斗をうながして物陰に潜んだ。
「でもね、この一件がなくても、ローマはエジプトを支配するために、たくさんのワナを仕掛けてきたはずよ。クレオパトラはその身を持って、ローマの侵略を防いでいたっていう見方もあるの」
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「クレオパトラ、か。ぼくでもその名前、聞いたことがあるよ。そんな人がこの近くにいるのかぁ」
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