少年王と時空の扉

みっち~6画

文字の大きさ
66 / 74

66 すべての道はローマに通じる①

しおりを挟む
「今は非常事態です。何人たりとも、中には入ることは許されません」
 き然とした態度でふたりを追い返したローマの兵士は、いつまでもこちらから視線を外さない。
「だめだ、行こう。……ここにいたら、危ない」
 未練げなアカネの背を押して、隼斗は兵士から死角になる場所へと移動する。
 その間じゅう、痛いほどの鋭い視線がふたりを追い続けてきた。
「どこに行くのよ? きっとあの中に入ったらクイズが出題されるんじゃないの?」
 中にある書物は、すべて歴史的に貴重なものだ。
「でもこのままここにいたら、きっと捕まるよ? ……別の方法を考えなくちゃ」
 隼斗は、隣接する荒れた野草園の入り口をうかがった。
「もしかして、向こうから入れるってことは、ないかな」
 姉弟はしゃがんだ体勢のまま、そろそろと壁沿いに歩いた。
「それにしても、ひどい匂い。何もかも、燃えてしまったのかしら」
 顔をゆがめて唇をかむと、アカネはそのまま鼻を押さえた。
「でもさ、なんかちょっとお茶みたいな……ハーブティーとか、そんな匂いもするね」
「ばかねぇ、不謹慎よ」
 すぐに姉にたしなめられてしまった。
「なんでこんなひどいこと、したんだろうね」
 このままでは、貴重な野草もろとも、すべてが燃え尽きてしまう。
「そうね。港の軍船から燃え移ったって、歴史の教科書には載ってた気がするけど」
 そうなのか、と隼斗は荒れ果てた図書館を見つめる。
「このころのエジプトはね、政変が続いていたの。毎日が不安定。女王クレオパトラには妹がいたんだけど、彼女が反乱を起こして、姉を追放したのよ」
「姉妹で、女王の座を争ったってこと?」
「そう。追放されたクレオパトラは、ローマの将軍カエサルの力を借りて、妹の勢力を一掃したの。だから、クレオパトラは女王に復帰できたけど、同時にローマ軍をもこの地に呼び込んでしまった」
 やがて人の気配が近づいてきて、アカネは隼斗をうながして物陰に潜んだ。
「でもね、この一件がなくても、ローマはエジプトを支配するために、たくさんのワナを仕掛けてきたはずよ。クレオパトラはその身を持って、ローマの侵略を防いでいたっていう見方もあるの」
 ふぅん、と隼斗はアカネのことばに耳を傾けながら、感嘆のため息をもらした。
「クレオパトラ、か。ぼくでもその名前、聞いたことがあるよ。そんな人がこの近くにいるのかぁ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

野良犬ぽちの冒険

KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる? ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。 だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、 気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。 やさしい人もいれば、こわい人もいる。 あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。 それでも、ぽちは 思っている。 ──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。 すこし さみしくて、すこし あたたかい、 のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。

処理中です...