少年王と時空の扉

みっち~6画

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69 すべての道はローマに通じる④

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 時おり聞こえてくる会話は、どうやらアカネを中心に弾んでいるらしく、隼斗はすっかり感心してしまった。
 日本でのアカネは、必要な会話でさえ最小限ですませようとする性格だったはずだ。それが、今では商人たちの会話に自分から進んで入り込み、なにかと笑いをとっているらしいのだ。
「きっと、ルクソールの都で、姉ちゃんも苦労したんだろうなあ」
 シュンの顔が思い浮かび、隼斗は顔をほころばせる。
 やがて、こつこつとタルの側面をたたく音が聞こえてきた。それは、タルに入り込む前にアカネの決めた合図だった。
「今の、本当に合図なのかな。ただ単に、ちょっと物が当たっただけかも?」
 ふたを閉め切られたタルの中の隼斗には、外の状況が分からない。おびえたまま小さくたたき返すと、再び外からの合図があった。
 そっと腕を押し上げるが、封印されたままのふたは開かない。耳をすませると、すでに会話は止み、辺りには何かの音楽が鳴っているようだ。何度も呼びかけるも、返事はない。
 不安になった隼斗は、後先も考えずに体を動かしてタルを揺らした。
 ほどなくして、急激に天井から光がもれそそぎ、隼斗を照らした。ふたが開けられたのだ。
「姉ちゃん、着いたの? ぼく、せまいところはあんまり好きじゃな……い……って」
 ここに、隼斗を救出してくれたはずの姉の姿はない。
 代わりに荘厳な音楽と人びとの笑いさざめく声と、好奇心のかたまりのような視線が隼斗を取り巻いている。
 ――やはり、気乗りしないことはやるべきじゃない!
 もしここを無事に出ることができたら、それを今後の教訓にしよう、と隼斗は遠い目をする。
 首をめぐらせて辺りをうかがうが、どうやら隼斗のひそんだタルは、宴のど真ん中に運び込まれたものらしい。
 テーブルには、見たこともないような珍しい料理が載せられ、会場をあざやかに彩っている。
 隼斗の年齢が若かったのと、丸腰であること、それに彼らから見たら奇妙にしか見えない服装をしているせいで、怪しい刺客と判断されなかったことだけが救いだった。
 道化か、と遠くから声が上がった。すると、なるほど確かに、と波紋のような声が広がっていく。
「それはよい。一興頼む」
 隼斗はワケも分からず、宴の真ん中に立たされた。
 ハーフパンツとスニーカー姿の、どこがピエロに見えるのか、隼斗には分からない。
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