15 / 55
第15話 反則技には反則技だ!
しおりを挟む
翌朝早朝、ラピスマリン号はアコルダン半島の港に到着した。
同じく下船する乗客の中にオーガストの姿がないかと陸人は目を光らせていたが、客が多いせいか彼の姿を確認することはできなかった。
「さっきから何をきょろきょろしている?」
シメオンが不審げに眉を寄せている。
「あいつがいないかと思って…」
「“あいつ”?」
「僕がデルタストーンをあげちゃったおじさん」
「ああ。あのスピーカー野郎か」
「うん。昨日の夜、広間で見かけたんだ」
「途中で降りたんじゃないのか」
「いや、あのおじさんジャンの秘宝のこと知ってるみたいだったし、僕らと同じように二つ目のデルタストーンを探しに来たのかも」
「じゃあ俺達は尾行されているかもしれないな」
「うわ…やだな」
「何を言ってる。付いてきてくれた方がありがたいじゃないか。石を取り返すチャンスだ」
翌朝早朝、ラピスマリン号はアコルダン半島の港に到着した。
同じく下船する乗客の中にオーガストの姿がないかと陸人は目を光らせていたが、客が多いせいか彼の姿を確認することはできなかった。
「さっきから何をきょろきょろしている?」
シメオンが不審げに眉を寄せている。
「あいつがいないかと思って…」
「“あいつ”?」
「僕がデルタストーンをあげちゃったおじさん」
「ああ。あのスピーカー野郎か」
「うん。昨日の夜、広間で見かけたんだ」
「途中で降りたんじゃないのか」
「いや、あのおじさんジャンの秘宝のこと知ってるみたいだったし、僕らと同じように二つ目のデルタストーンを探しに来たのかも」
「じゃあ俺達は尾行されているかもしれないな」
「うわ…やだな」
「何を言ってる。付いてきてくれた方がありがたいじゃないか。石を取り返すチャンスだ」
寄港地から目的地の岬まではそれほど遠くはない。陸人達は下船してそのまま真っ直ぐ岬方面へ向かった。
「ねぇ、ここどこ?少し休もうよ」
歩き始めて一時間。陸人は早くも音を上げていた。遠くないとは言っても、岬まで軽く10キロほどはある。
「ねぇってば…もう疲れたよ。足が棒みたいだよ」
「気のせいだ。黙って歩け」
何を言ってもシメオンは取り合ってくれず、結局休憩なしのまま目的地へとたどり着いたのであった。
広大な海を見渡す岬は人気のない寂しい場所だった。こじんまりとした礼拝堂がぽつんと建っている他、何もない。
「どこかにコンビニとかないのかな?僕、お腹すいたよ」
「気のせいだ」
「気のせいじゃないよ!」
「突っ立ってないで、石を探しにいくぞ」
「探すって…どこを?」
「どう見たってあの礼拝堂が怪しいだろう」
シメオンは先頭を切って礼拝堂の方へ歩いて行った。
「あ、待ってよ!」
年季の入った重厚な扉を押し開け、中へと足を踏み込む。
長いこと手入れをされていないのか、じめじめとして埃っぽい上、天井の一部が崩れ落ちている。
「もうほとんど廃墟みたいだね。床とかすごいギシギシ言ってるよ。抜けないか心配だなぁ…」
「そう簡単には抜けないだろ」
「それが抜けるんだよなぁ~。ボロ屋をナメない方がいいよ」
「なるほど、お前の実家も相当なボロ屋なんだな」
「違うよ、僕の家じゃなくて――――あっ!」
陸人は立ち止まり、背中の風呂敷に手を伸ばした。
風呂敷の布越しに、巻物が放つ光が見えたのだ。
「きっと近くに石があるんだよ!」
「何?どこだ?」
「奥の、あの祭壇の近くじゃないかな?」
「よし…」
シメオンは腕まくりをして祭壇を持ち上げ、床から少しずらした。しかし、祭壇の下から隠し扉らしきものは見当たらなかった。
「チッ…はずれか」
「ねぇ、そこにある女神像はどうかな」
陸人は祭壇の脇に設置されている石像を指さした。
「ああ?コレか?」
シメオンが眉をひそめながら石像に近付いていく。
「おい、これは女神像じゃないぞ。男神像だ」
「え?だって髪長いし、スカートみたいなの履いてるじゃん」
「はぁ…お前が性別を判断する基準は服装と髪型だけなのか?このカラダをよく見てみろ」
シメオンは石像の腹部から太腿にかけて手のひらでなぞりながら、
「女のカラダはこんなに筋肉質じゃない」
「ふーん…。触ったことあるの?」
「失敬な。あるに決まってるだろう。この俺が童貞に見えるか?」
「いや―――別にそういうつもりじゃないんだけどさ…。ほら、騎士団って男所帯ってイメージあるし、女性と知り合う機会少なそうだなぁって思って。あ…まさか相手って、ラブドールとかじゃないよね?」
「てめぇ、シバくぞ?」
「わっ…ごめんごめん!」
陸人は慌てて石像の後ろに身を隠した。
すると突然、正面扉がバンと大きな音を立てて開いた。
赤いマントを羽織った三人の男女が一斉に中へと入ってくる。
「動くな!」
張りのある声で命じたのは、中央に立つ若い女。白いチュニックに、編み上げブーツ、右手には眼球のようなものが嵌め込まれた不気味なロッドを携えている。
「リザ…!どうして――――」
「陸人のお馬鹿さん。あたしが盗賊の親分だとは夢にも思わずベラベラとなんでも喋っちゃうんだから」
「と…盗賊?!」
「そう。悪名高い盗賊団“レディーバード”のリザ様とはこのあたしのことよ」
シメオンがギロリと陸人を睨む。
「陸人、お前この女に全部喋ったのか?」
「だ…だって、まさか盗賊だなんて思わなかったんだよ」
「誰も信用するなとあれほど言ったろうが!学習能力のないガキめ、お前はサルと一緒だ!」
「言っておくけど、サルは羊より知能があるんだぞ」
「なんだと?!誰のせいでこんな体になったと思ってんだ!」
「おい!人の話を聞けよっ!」
リザが声を荒げた。凄みのある低い声と乱暴な口調は陸人達を黙らせるには十分だった。
「悪いけど、ここに隠されていたお宝はあたし達がもらったから」
そう言って、彼女は右の胸ポケットからチラリと青い石を覗かせた。墓場で見つけたデルタストーンと同様、三角形の形をした石だ。
続いて、左の胸ポケットからも何かを取り出した。色は違うが、同じ三角形の赤い石――――
「ど…どうしてそれを君が持ってるんだ?」
陸人にはまったくわけがわからなかった。
「その赤い石は、オーガストが持っていたはず…。どうして君の手元に?」
「おねだりして、もらっちゃった」
「嘘だ…」
「は?」
「そんなの嘘だ。相手が絶世の美女ならともかく、君みたいな普通顔の女の子にあいつが絆されるわけがない!」
「なんですって?!あんた、いい度胸してるじゃない?」
「そうかな?ありがとう!」
「どういたしまして―――って…褒めてないっつーの!」
「そんなことよりオーガストは今どこにいるの?」
「ふっ…。あんた馬鹿ねぇ」
突然リザは腹を抱えて笑い出した。
「な…何がおかしいんだよ!」
「オーガストなら、あんたの隣りに立ってるじゃない」
「彼はオーガストじゃない、羊人間のシメオンだ」
「そっちじゃないっつーの!反対側よ!」
「反対側…?だってこれは石ぞ――――」
石像の顔を見上げた瞬間、陸人はハッとした。この憎たらしい顔は確かにオーガスト・ロウだ。
――――嘘だろ…?なんでオーガストが石に…?
動揺する陸人を見て、リザはまた笑い出した。
「そのお兄さん、脅しても中々石を渡してくれなくてね…。ムカついたから、このメドゥーサのロッドで両脚を石化させてやったってわけ。まぁあたしも悪魔じゃないし?お宝さえ奪っちゃえば用はないから、命だけは助けてやろうと思ったんだけどさぁ…」
あどけなさを残した少女の笑顔が、醜い悪魔の顔へと歪んでいく。
「あいつ、石を渡したと思ったら突然あたしに反撃してこようとしたのよ。で、めんどくさかったから全身石にしてやったの。ホ~ント良い気味!アーハッハッハッハッハ!」
リザの高笑いに身震いを覚えながら、陸人は巻物を背中の後ろに隠し、シメオンと視線を通わせた。
「リザの目的は僕の持ってるジャンの巻物だ。大人しく渡せば僕らも石化されずに済むかもしれないけど…」
「お前、本気でそう思うのか?あんな悪に満ちた笑い方をする女に、そんな慈悲の心があるわけないだろう。だからいいか、何が何でも絶対に巻物を渡すなよ」
「そんな事言われたって、どうすればいいのかわかんないよ。オーガストみたいに両脚を石化されたら否が応にも地図を奪われちゃうし…」
「とにかく何か方法を考えろ!」
「あんな反則級の杖にどうやって立ち向かえばいいんだよ!」
「反則技には反則技だ!」
「持ってないよ、そんな技!」
言い争っている間にも、リザは一歩ずつ陸人達に近付いてきていた。
「チッ…仕方ないな」
シメオンが剣を抜き、リザに殺気を放つ。
「盗賊だか暴走族だか知らんが、所詮はただの女―――その趣味の悪い杖さえ奪ってしまえばお前なんぞ怖くはない。見ていろ、一瞬にしてお前の杖を奪ってやる。この白銀の氷輪団第一部隊隊長シメオン・ヴァロシャーツ様の名にかけてな!」
「ごちゃごちゃうるさいっつーの。“メドゥーサの眼差し!石になれ!”」
リザのロッドについている目玉から光線が発射された。
シメオンは一瞬にして石になった。
「シメオン!」
「さーてと、そろそろお目当てのものをもらおうかしら?」
リザが陸人に杖の先端を向ける。
「石にされたくなかったら、その巻物を渡しなさいな」
「くっ…」
「なんか技出そうとしたって無駄よ。“メドゥーサの眼差し”は先制攻撃技だから、何したってあんたが先に石になるわ」
「大人しく渡したら、シメオン達を元の姿に戻してくれる?」
「いいわよ」
陸人はゆっくりと背中に隠した巻物を体の前に持ってきた。
「ありがと、陸人」
「あの…そろそろその目玉の杖、おろしてくれないかな?暴発とか、心配だし…」
「あはは…!陸人ってホント臆病ね」
「笑ってないで早く――――」
瞬間、目玉がぎょろりと陸人に焦点を当てた。
「うわぁぁぁ!こっち見たあぁぁぁぁ!」
「“メドゥーサの眼差し!”」
「え…!ちょっ…待って―――主人公が石になったら話進まないじゃん!」
「何言ってんの。あんたはもう降板よ。次回からはあたしが主人公やるんだから」
「はぁ?!そりゃないよ!」
「うっさい。“石になれ!”」
「うわぁぁぁぁ!」
同じく下船する乗客の中にオーガストの姿がないかと陸人は目を光らせていたが、客が多いせいか彼の姿を確認することはできなかった。
「さっきから何をきょろきょろしている?」
シメオンが不審げに眉を寄せている。
「あいつがいないかと思って…」
「“あいつ”?」
「僕がデルタストーンをあげちゃったおじさん」
「ああ。あのスピーカー野郎か」
「うん。昨日の夜、広間で見かけたんだ」
「途中で降りたんじゃないのか」
「いや、あのおじさんジャンの秘宝のこと知ってるみたいだったし、僕らと同じように二つ目のデルタストーンを探しに来たのかも」
「じゃあ俺達は尾行されているかもしれないな」
「うわ…やだな」
「何を言ってる。付いてきてくれた方がありがたいじゃないか。石を取り返すチャンスだ」
翌朝早朝、ラピスマリン号はアコルダン半島の港に到着した。
同じく下船する乗客の中にオーガストの姿がないかと陸人は目を光らせていたが、客が多いせいか彼の姿を確認することはできなかった。
「さっきから何をきょろきょろしている?」
シメオンが不審げに眉を寄せている。
「あいつがいないかと思って…」
「“あいつ”?」
「僕がデルタストーンをあげちゃったおじさん」
「ああ。あのスピーカー野郎か」
「うん。昨日の夜、広間で見かけたんだ」
「途中で降りたんじゃないのか」
「いや、あのおじさんジャンの秘宝のこと知ってるみたいだったし、僕らと同じように二つ目のデルタストーンを探しに来たのかも」
「じゃあ俺達は尾行されているかもしれないな」
「うわ…やだな」
「何を言ってる。付いてきてくれた方がありがたいじゃないか。石を取り返すチャンスだ」
寄港地から目的地の岬まではそれほど遠くはない。陸人達は下船してそのまま真っ直ぐ岬方面へ向かった。
「ねぇ、ここどこ?少し休もうよ」
歩き始めて一時間。陸人は早くも音を上げていた。遠くないとは言っても、岬まで軽く10キロほどはある。
「ねぇってば…もう疲れたよ。足が棒みたいだよ」
「気のせいだ。黙って歩け」
何を言ってもシメオンは取り合ってくれず、結局休憩なしのまま目的地へとたどり着いたのであった。
広大な海を見渡す岬は人気のない寂しい場所だった。こじんまりとした礼拝堂がぽつんと建っている他、何もない。
「どこかにコンビニとかないのかな?僕、お腹すいたよ」
「気のせいだ」
「気のせいじゃないよ!」
「突っ立ってないで、石を探しにいくぞ」
「探すって…どこを?」
「どう見たってあの礼拝堂が怪しいだろう」
シメオンは先頭を切って礼拝堂の方へ歩いて行った。
「あ、待ってよ!」
年季の入った重厚な扉を押し開け、中へと足を踏み込む。
長いこと手入れをされていないのか、じめじめとして埃っぽい上、天井の一部が崩れ落ちている。
「もうほとんど廃墟みたいだね。床とかすごいギシギシ言ってるよ。抜けないか心配だなぁ…」
「そう簡単には抜けないだろ」
「それが抜けるんだよなぁ~。ボロ屋をナメない方がいいよ」
「なるほど、お前の実家も相当なボロ屋なんだな」
「違うよ、僕の家じゃなくて――――あっ!」
陸人は立ち止まり、背中の風呂敷に手を伸ばした。
風呂敷の布越しに、巻物が放つ光が見えたのだ。
「きっと近くに石があるんだよ!」
「何?どこだ?」
「奥の、あの祭壇の近くじゃないかな?」
「よし…」
シメオンは腕まくりをして祭壇を持ち上げ、床から少しずらした。しかし、祭壇の下から隠し扉らしきものは見当たらなかった。
「チッ…はずれか」
「ねぇ、そこにある女神像はどうかな」
陸人は祭壇の脇に設置されている石像を指さした。
「ああ?コレか?」
シメオンが眉をひそめながら石像に近付いていく。
「おい、これは女神像じゃないぞ。男神像だ」
「え?だって髪長いし、スカートみたいなの履いてるじゃん」
「はぁ…お前が性別を判断する基準は服装と髪型だけなのか?このカラダをよく見てみろ」
シメオンは石像の腹部から太腿にかけて手のひらでなぞりながら、
「女のカラダはこんなに筋肉質じゃない」
「ふーん…。触ったことあるの?」
「失敬な。あるに決まってるだろう。この俺が童貞に見えるか?」
「いや―――別にそういうつもりじゃないんだけどさ…。ほら、騎士団って男所帯ってイメージあるし、女性と知り合う機会少なそうだなぁって思って。あ…まさか相手って、ラブドールとかじゃないよね?」
「てめぇ、シバくぞ?」
「わっ…ごめんごめん!」
陸人は慌てて石像の後ろに身を隠した。
すると突然、正面扉がバンと大きな音を立てて開いた。
赤いマントを羽織った三人の男女が一斉に中へと入ってくる。
「動くな!」
張りのある声で命じたのは、中央に立つ若い女。白いチュニックに、編み上げブーツ、右手には眼球のようなものが嵌め込まれた不気味なロッドを携えている。
「リザ…!どうして――――」
「陸人のお馬鹿さん。あたしが盗賊の親分だとは夢にも思わずベラベラとなんでも喋っちゃうんだから」
「と…盗賊?!」
「そう。悪名高い盗賊団“レディーバード”のリザ様とはこのあたしのことよ」
シメオンがギロリと陸人を睨む。
「陸人、お前この女に全部喋ったのか?」
「だ…だって、まさか盗賊だなんて思わなかったんだよ」
「誰も信用するなとあれほど言ったろうが!学習能力のないガキめ、お前はサルと一緒だ!」
「言っておくけど、サルは羊より知能があるんだぞ」
「なんだと?!誰のせいでこんな体になったと思ってんだ!」
「おい!人の話を聞けよっ!」
リザが声を荒げた。凄みのある低い声と乱暴な口調は陸人達を黙らせるには十分だった。
「悪いけど、ここに隠されていたお宝はあたし達がもらったから」
そう言って、彼女は右の胸ポケットからチラリと青い石を覗かせた。墓場で見つけたデルタストーンと同様、三角形の形をした石だ。
続いて、左の胸ポケットからも何かを取り出した。色は違うが、同じ三角形の赤い石――――
「ど…どうしてそれを君が持ってるんだ?」
陸人にはまったくわけがわからなかった。
「その赤い石は、オーガストが持っていたはず…。どうして君の手元に?」
「おねだりして、もらっちゃった」
「嘘だ…」
「は?」
「そんなの嘘だ。相手が絶世の美女ならともかく、君みたいな普通顔の女の子にあいつが絆されるわけがない!」
「なんですって?!あんた、いい度胸してるじゃない?」
「そうかな?ありがとう!」
「どういたしまして―――って…褒めてないっつーの!」
「そんなことよりオーガストは今どこにいるの?」
「ふっ…。あんた馬鹿ねぇ」
突然リザは腹を抱えて笑い出した。
「な…何がおかしいんだよ!」
「オーガストなら、あんたの隣りに立ってるじゃない」
「彼はオーガストじゃない、羊人間のシメオンだ」
「そっちじゃないっつーの!反対側よ!」
「反対側…?だってこれは石ぞ――――」
石像の顔を見上げた瞬間、陸人はハッとした。この憎たらしい顔は確かにオーガスト・ロウだ。
――――嘘だろ…?なんでオーガストが石に…?
動揺する陸人を見て、リザはまた笑い出した。
「そのお兄さん、脅しても中々石を渡してくれなくてね…。ムカついたから、このメドゥーサのロッドで両脚を石化させてやったってわけ。まぁあたしも悪魔じゃないし?お宝さえ奪っちゃえば用はないから、命だけは助けてやろうと思ったんだけどさぁ…」
あどけなさを残した少女の笑顔が、醜い悪魔の顔へと歪んでいく。
「あいつ、石を渡したと思ったら突然あたしに反撃してこようとしたのよ。で、めんどくさかったから全身石にしてやったの。ホ~ント良い気味!アーハッハッハッハッハ!」
リザの高笑いに身震いを覚えながら、陸人は巻物を背中の後ろに隠し、シメオンと視線を通わせた。
「リザの目的は僕の持ってるジャンの巻物だ。大人しく渡せば僕らも石化されずに済むかもしれないけど…」
「お前、本気でそう思うのか?あんな悪に満ちた笑い方をする女に、そんな慈悲の心があるわけないだろう。だからいいか、何が何でも絶対に巻物を渡すなよ」
「そんな事言われたって、どうすればいいのかわかんないよ。オーガストみたいに両脚を石化されたら否が応にも地図を奪われちゃうし…」
「とにかく何か方法を考えろ!」
「あんな反則級の杖にどうやって立ち向かえばいいんだよ!」
「反則技には反則技だ!」
「持ってないよ、そんな技!」
言い争っている間にも、リザは一歩ずつ陸人達に近付いてきていた。
「チッ…仕方ないな」
シメオンが剣を抜き、リザに殺気を放つ。
「盗賊だか暴走族だか知らんが、所詮はただの女―――その趣味の悪い杖さえ奪ってしまえばお前なんぞ怖くはない。見ていろ、一瞬にしてお前の杖を奪ってやる。この白銀の氷輪団第一部隊隊長シメオン・ヴァロシャーツ様の名にかけてな!」
「ごちゃごちゃうるさいっつーの。“メドゥーサの眼差し!石になれ!”」
リザのロッドについている目玉から光線が発射された。
シメオンは一瞬にして石になった。
「シメオン!」
「さーてと、そろそろお目当てのものをもらおうかしら?」
リザが陸人に杖の先端を向ける。
「石にされたくなかったら、その巻物を渡しなさいな」
「くっ…」
「なんか技出そうとしたって無駄よ。“メドゥーサの眼差し”は先制攻撃技だから、何したってあんたが先に石になるわ」
「大人しく渡したら、シメオン達を元の姿に戻してくれる?」
「いいわよ」
陸人はゆっくりと背中に隠した巻物を体の前に持ってきた。
「ありがと、陸人」
「あの…そろそろその目玉の杖、おろしてくれないかな?暴発とか、心配だし…」
「あはは…!陸人ってホント臆病ね」
「笑ってないで早く――――」
瞬間、目玉がぎょろりと陸人に焦点を当てた。
「うわぁぁぁ!こっち見たあぁぁぁぁ!」
「“メドゥーサの眼差し!”」
「え…!ちょっ…待って―――主人公が石になったら話進まないじゃん!」
「何言ってんの。あんたはもう降板よ。次回からはあたしが主人公やるんだから」
「はぁ?!そりゃないよ!」
「うっさい。“石になれ!”」
「うわぁぁぁぁ!」
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる