探偵ドラゴンと怪盗ドラゴン ~ドラゴンに転生したら純白のドラゴンヒロインと探偵怪盗ごっこをすることになった件~

おもいこみひと(元七色一浪)

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第三話 予告状をつくろう!

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「よこくじょう!? よこくじょうって、あのよこくじょうか!?」

 純白の怪盗ドラゴンことフーリヤは深紅の瞳を輝かせ、ぴょんぴょんと跳ねる。

「ああ、その予告状だ。『明日の夜更け、薔薇の宝石を頂きにまいります』というふうに予告して、その上で華麗にぬす…回収しきるアレだ」

「よし作ろう。今すぐ作ろう。紙とペンをよこせ!」

「はい、どうぞ」

 鼻息荒く差し出されたフーリヤの手に、僕は真っ白な紙と羽ペン、それからインク瓶を渡す。いずれも華麗な怪盗に相応しい、上質で貴重な代物である。宝を回収しない僕にとって痛い出費ではあったが、そもそも貴族や王家なんかに予告状は送るのだし、必要経費だと割り切った。

 しかし渡した瞬間、嫌な予感が。

 フーリヤは、それを受け取るなり足元のごつごつした岩肌の上で筆を走らせる。当然文字はガタガタで…、それ以前に力を入れ過ぎてペンが折れる。うっかりインク瓶を倒す。紙の上半分は真っ黒。

 少しの沈黙。しかしフーリヤは何でもないようにインクのついた手を差し出す。

「替えちょうだい」

「……はいはい。今度は机の上で慎重に書いてください」

 僕はハンカチで彼女の手を拭く。それから代わりの、しかし上質で貴重な三点セットを渡す。…わかっている。これは場当たり的で考えナシのフーリヤにあらかじめ忠告しなかった僕の落ち度である。

 フーリヤは、しかし僕の心労をよそに宝石の山の中腹で顔を出していた木製の机と椅子を引っ張り出し、火口の真ん中でせっせと書き始めたようである。

 その様子を見届けた僕は、宝石の山のふもとに腰を下ろし、一息つく。

 フーリヤは繊細な装飾品を扱うために人間の姿で盗み…いや回収を働くらしいのだが、見ての通り人間の姿になったからといって彼女本人は繊細さのかけらもない。

 ああ、なんと嘆かわしい。そのドラゴンは神々しく洗練された姿だというのに、その少女はガラス細工のような繊細さと脆さを彷彿させるというのに、中身はこのありさまである。…もっとも、この見方は僕のドラゴン像やフーリヤ像の押し付けに過ぎないのだが。

「できた!」

 宝石の壁の向こうからそんな声がしたかと思えば、繊細にして大雑把な美少女がその壁を軽々と飛び越えてきた。

 そして「どう?」と予告状を差し出してくる。

 内容はこうであった。

『今宵、貴方の心を盗みに参ります 怪盗ドラゴン フーリヤ』

 …これに一瞬ドキッとしてしまったのは、ここだけの話。

 しかし怪盗ドラゴンという字面を見て冷静になる。すると、ここでの『心』は『心を意味する宝石』なのでは、という至極まっとうなことに思い至る。

 そこから連想するなら、『心臓』あるいは『愛』。前者なら、例えば一族の心臓、シンボルたる宝石。後者なら、例えば愛する人に贈られたという、愛のあるエピソードをもつ宝石。そんなことも考えられる。

「それで、この予告状はどこの国のどなたさんに出すんだ?」

 僕は問う。

 するとフーリヤはふふふっ、とあざとく笑って見せて「ないしょ」と答えた。

 またしてもドキッとしてしまったが、しかし内緒では少し困る。あらかじめ場所がわかった方が、何かあったときに対処はしやすいのだ。

「だって教えてしまったら面白くないからね」

 そんな僕の気を知ってか知らずか、悪戯っぽい笑みのままフーリヤは言う。

 まあ、予告状を出してくれるのなら、少なくとも地元民に冤罪がかかってしまうことはないだろう。『怪盗ドラゴン』というなんとも胡散臭い字面ではあるが、しかしこの世界におけるドラゴンが畏敬や崇拝の対象である以上、それを騙って盗みを働くなどこの世界の人間が想定するはずもあるまい。

 一仕事終えた僕は、フーリヤにひとこと言ってから、フラフラと飛んで自身の住処に戻った。フーリヤのところよりは狭い、しかしドラゴン一体は十分に入る広さの洞穴である。

 普通に考えれば、四六時中フーリヤと一緒にいれば話が早いことくらいはわかる。人間の体力ならともかく、ドラゴンの体力なら可能だ。

 では、何故そうしないのか。

 まずもって、探偵と怪盗が同居するというのはちゃんちゃらおかしな話である。何より形にこだわるフーリヤ氏が納得しない。

 それにそもそも、この世界におけるドラゴンという存在は二体以上で生活しない。というか、そもそも二体以上で行動しない。群れないのである。

 もっとも、これは人間である冒険者から聞いた話である。フーリヤから聞いた話ではない。ただ彼女以外のドラゴンとは僕も会ったことがないので、だからどうという話ではないが。

 ただ少なくとも、僕とフーリヤの関係性は、奇妙なものになってくるのであろう。

 そんなことを改めて考えつつ、僕は人の姿のまま、その姿では有り余る広さと深さの洞穴で眠りにつく。

 世界中から買いそろえ、きっちり手入れをしている無数の剣に囲まれながら、眠りにつく。

 今日も、疲れた。

 
 
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