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第6話「娯楽品作りと将来のこと」

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 波乱のお披露目会の翌日、俺は女神様達からの娯楽品要求を思い出し、行動に移ることにした。

 娯楽品って言っても何がいいかなぁ。一番作りやすいのはオセロなんだけど。でもオセロってすぐ飽きないか? 俺なら5回ぐらいやったらもういいやって感じになる。でもまぁ初回だし一番簡単で作りやすい物でいいよね。うん。

 オセロを作るにあたって、とりあえず一番最初にしなきゃいけないのは材料の確保である。当然ながらそれがないと作れない。この家に材料があるかは分からないが、とりあえず外にある倉庫へ行ってみよう。



 屋敷の裏手にある倉庫に辿り着くと、庭師のローレルさんがその中でパイプを吹かして休憩していた。倉庫には庭師に必要な道具も保管しているし、給湯室なんかもあるからここで休憩していたのだろう。
 このローレルさんの種族はドワーフ。現在73歳だが現役で、長年グレイナード家に仕えて庭の整備をしてくれているベテラン庭師だ。この人なら必要な材料がどこにあるかわかるかもしれない。

「おや、クロード坊ちゃんじゃねぇか! どうしたんだいこんな所に」

「ローレルさんこんにちわ! 実はちょっと探し物してて…」

「探し物? 倉庫にか? もし俺がわかるものなら持ってきてやるけど」

「えっとね、おっきい木の板っていうか、木材なら切り株みたいなのでもいいんだけどあるかなぁ?」

「切り株ってことはでかいやつか? そんなもん何に使うんだい」

「ちょっと工作っていうか、作りたいものがあるんだ」

 工作ねぇ、と顎髭を触りながら考えるローレルさん。ヘソあたりまである白髭がドワーフダンディズムを醸し出している。

「それなら、ちょうどさっき古い木を切り倒したたところだから、それでいいなら持っていくかい?」

 おお、ナイスタイミング!

「それほしい! どこにあるの?」

「庭の裏にあるから案内すらぁ。これから切り分けなきゃならんしな」

「うん! 行こう行こう!」

 ローレルさんの案内で切り倒した木に案内してもらう。それは庭の奥の方に古くから立っていた巨木だった。かなり年季が入っているがこれならいい材料になりそうだ。

「これなんだけど、使えそうかい?」

「うん! 十分使えると思うよ。それで、ここからここくらいまで欲しいんだけど」

 縦に1m分くらいを指定する。太さもかなりあるからこれだけあれば十分なはずだ。余ったら他のことに使えばいいし。

「そんなに使うのか。わかった。切ったあとはどこに運べばいいんだい?」

「あ、運ばなくても俺の魔法で持って行くから大丈夫だよ」

「魔法で!? そういやリューネ奥様に魔法教えてもらってたんだもんな。たまに見てたぜ」

 屋敷の裏手の練習場でやっていたから訓練地獄ブートキャンプを見られていたようだ。見てるだけじゃなくて救い出してくれたらなお良かったのだが。

「んじゃさくっと切っちまうぜ!」

「俺も手伝うね。『水よ刃となれ! 水刃ウォーターカッター』!」

 ローレルさんが斧を取り出し切り分け作業に入る。俺も水魔法で枝を全部幹から切り取った。よし、これで材料ゲットだ! 太い枝部分もオセロの石用に貰っていこう。
 切り分けた木材を無限収納に入れて礼を言う。

「ありがとうローレルさん! すっごく助かっちゃった」

「いやいや、俺なんかで役に立ててよかったよ。また何かあったら言ってくれや」

「うん! その時は宜しくね」

 そう言ってローレルさんに手を振ってその場を立ち去る。早速部屋に戻ってオセロを作ろう。



 部屋に到着すると、無限収納から切ってもらった木材を床の上に取り出す。

「あとはこれを加工するための魔法を作らなきゃだな」


《魔法創造起動。
 術式構成:物質を加工して、思う通りの形に変化させる。
        加工する物の硬度によって魔力消費量が変化する。
 術式名:変形魔法モーフィング

変形魔法モーフィングを創造するコストとしてMPを300消費します。よろしいですか? Y/N

 これでよし。YESっと。
 体の中から魔力が消費され、変形魔法モーフィングが使えるようになった。

「よし、サクッとやってみようか。変形魔法モーフィング発動!」

 変形魔法モーフィングにより1m程の木材が光り輝き、形を変えていく。イメージはオセロ盤。マス目があり、両端に石を置くスペースがあるオーソドックスなやつ。
 ひっくり返した時に石が落ちないようにする蓋をつけるのも忘れない。
 暫くして加工が終わり光が止むと、俺のイメージ通りの10枚のオセロ盤に変化した。変形魔法モーフィングは、材料がある限り同一の物に変化し続けるので大量生産にちょうどいい。

 次にもらった太い木の枝部分を全て出し、これでオセロの石を作る。オセロ盤一つにつき64個。多分足りるだろう。石をオセロ盤10枚分、640個を作り終わったあとに色がないことに気付いた。

「あ、そっか。変形魔法モーフィングじゃ色までは付かないんだ」

 しかしまだ慌てるような時間じゃない。色がなければ魔法で付ければいいじゃない。

《魔法創造起動。
 術式構成:自分の思う様に好きな色を着色する。
 術式名:着色魔法ペインティング

着色魔法ペインティングを創造するコストとしてMPを250消費します。よろしいですか? Y/N

 こんな感じかな。YESっと。着色魔法《ペインティング》作成完了した。
 早速着色魔法ペインティングを発動する。石は黒白に、本体の台座部分は黒で上のマス部分は緑。マス目のラインは8×8で黒に塗った。一般的なオセロの着色である。

「よし! あとは乾かして完成!」

 無事にオセロ盤10セットが完成した。完成したはいいけど、どうやって女神様たちに届けようか。一人で教会行くわけにもいかないし。
 誰かに相談するしかないけど、教会に行く理由が思いつかない。神様にお届け物がしたいとか言ってもただのイタイ子認定されるだろう。どうしようか。うーん。


 そんなことを考え込んでいると、部屋のドアをコンコンっとノックの音が聞こえてくる。

「クロード様! フィリスですが、今大丈夫でしょうか?」

 フィリスが部屋に来たようだ。何かあったのかな?
 無限収納に完成したオセロと余った木材を全部仕舞い、ドアを開けてフィリスを迎え入れる。

「どうしたのフィリス?」

「あ、クロード様! 旦那様が書斎でお呼びなので呼びに来たんです!」

「父さんが? 何の用だろう」

「内容までは聞いてません。部屋に居たら連れてきて欲しいとしか…」

「わかった。すぐ行くからちょっと待ってて」

「はい! お待ちしていますね」

 女神様へのお供え方法については後で考えよう。今は父さんの話の方が先決だ。すぐに支度を整えて部屋を出る。

「おまたせフィリス。それじゃ行こうか」

「はい!」

 俺の部屋から移動して、1階にある父さんの書斎の前まで行く。扉をノックをしてから父さんに声をかけた。

「父さん、クロードです」

 すると書斎の中から父さんの声が聞こえる。どうやら秘書のオリビア母さんは不在らしい。

「クロードか。入りなさい」

「失礼します」

「フィリスは席を外しなさい。クロードと二人で話がある」

「かしこまりました。それではクロード様、失礼いたしますね」

「うん。呼びに来てくれてありがとう、フィリス」

「いいえ。それでは!」

 フィリスが退出し、書斎の中で父さんと二人になる。なんだろう、俺なんかしたっけ?

「クロード」

「はい!」

 ちょっと声が裏返ってしまった。

「ああ、別に咎めるために呼んだわけじゃない。お前に聞きたいことがあってな」

「聞きたいこと?」

 なんだろう、俺の性癖についてとか? 大きいおっぱいとポニテをしている女の子のうなじが大好きです。

「ああ、お前は将来どうしたいと考えている?」

「将来…ですか?」

「知ってのとおり我が子爵家の家督はこのまま行けば順当に長男のマティアスが継ぐし、次男のディオンはそのサポートに入るつもりでいる。フェリシアも、すぐにとは言わんがどこかに嫁に出すことになるだろう。それでクロード、お前は成長したらどうしたいのか聞きたいのだ。お前の魔法の腕なら宮廷魔導師にもなれそうだがな」

 …将来のことか。この異世界に生を受けてからたまに考えてはいた。俺のスキルがあれば商売もできるし、頑張れば宮廷魔導師にもなれるかもしれない。最大の夢はハーレム作ってウハウハすることだけど、そんなこと言ったら父さんにシバかれるのは目に見えている。それ以外だとやっぱりひとつしか答えは出てこなかった。

「父さん、俺は冒険者になりたい!」

 異世界=冒険者だよね。やっぱり。せっかく異世界に来たのだから、色々な土地を巡って美味い食事をしながらいろんな種族の女の子と戯れてみたい。きっとそこには夢と希望とその他諸々が詰まっているに違いない。

「冒険者か。だが本当にいいのか? 冒険者は危険な仕事だ。魔物と戦い命を落としいたものも多くいる。」

「うん、わかってる。それでも俺は冒険者がいい。世界を見て回りたいんだ」

「…わかった。それなら冒険者としての勉強もしなくちゃならないな」

「冒険者の勉強?」

「ああ、冒険者は脳筋のバカが多いイメージだが、実際はかなり頭を使う。植物の判別や迷宮の潜り方、魔物の倒し方や綺麗な解体の仕方とか、他にもいろいろな」

 へー、言われてみればラノベでも冒険者に必要な知識は大量にあるって書いてあった気がする。

「うん! 冒険者の勉強したい! どうすればいいの?」

「そうだな、俺やリューネが教えてもいいが今は時間がない。そこで、お前に指導してくれる冒険者の家庭教師を雇おうかと思う」

 おお! 家庭教師!

「王都に冒険者学校があるからそこに入れたいのだが12歳からだからな。それまでは家庭教師に教えてもらうといいだろう。お前の希望があれば聞くがどうする?」

「んー、とりあえず先生は女性がいいかな。後、厳しくてもいいから技術と知識がある人がいい」

「…なぜ女性がいいんだ?」

「男の冒険者ってむさ苦しくて怖いイメージがあるから、そういう人に教わりたくないっていうか…」

 筋肉ムキムキのむさ苦しい男とずっと一緒とか拷問以外の何者でもない。どうせなら綺麗なお姉さんに手とり足とり教わりたいのだ。

「あぁ、まぁ言いたいことはわかった。お前の要望通りの依頼を冒険者ギルドに出しておく。ただ、すぐに来るかはわからんからな」

「わかった。父さん、わがまま言ってごめんなさい」

「いや、自分の意見ははっきりと言えるようになっておいたほうがいい。これからも何かあればすぐに父さんに言いなさい」

「うん、そうするね! …あ、あの父さん、冒険者ギルドへの依頼、俺が出してきちゃダメかな?」

「なに? クロードがか?」

「うん、自分の家庭教師になってもらうんだから、自分で依頼を出すのが筋かなって思ったの。後ついでに冒険者登録もできたらなと思って」

 ついでに教会に行って神様に貢ぎ物がしたいです。

「いや、ダメじゃないが、冒険者登録までしたいのか…まぁ年齢制限はないからな。クロードなら問題ないか。それじゃサムソンと一緒に行きなさい。それなら許可する」

「わかった、ありがとう父さん!」

 父さんがチリンチリンと机の上に置いてあったベルを鳴らす。するとドアをノックする音が聞こえ、開けるとサムソンが立っていた。今までどこにいたんだサムソン。

「お呼びでしょうか旦那様」

「ああ、クロードと一緒に冒険者ギルドへ行ってくれ。そこでこの子の冒険者登録と冒険者の家庭教師を雇う依頼を出して欲しい」

「冒険者の家庭教師…ですか?」

「ああ、クロードの要望でな。一緒に行ってやってくれ」

「畏まりました。それではクロード様、早速参りましょうか」

「うん! それじゃ父さん、行ってきます!」

「ああ、行ってらっしゃい。気をつけてな」

 サムソンと共に父さんの書斎を後にする。さぁ教会で貢物をして冒険者になりに行こう!



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