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第14話「クロードの不思議なダンジョン2」

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 クルーエル遺跡のダンジョンに先に入っていった冒険者が命からがら帰ってくると、現在列に並んでいる冒険者たちに戦慄が走った。

「おいおい、そんな危険なダンジョンだなんて聞いてねぇぞ! 俺は降りる!!」

「お、俺もだ! 命あっての物種だぜ!!」

 恐怖に駆られた冒険者達が続々リタイヤしていく。中にはそれでも果敢に挑む冒険者もいるようだが、俺たちはどうしようか。シルビア先生を見てみると、ちょっと楽しそうな顔をしている。

「シルビア先生、どうします?」

「そうだな、私は中に行ってみたいと思うがな。中々楽しそうじゃないか」

「あぁ、シルっちのスリル大好き病が発動しちゃってるっす…」

「ス、スリル大好き病!?」

「シルっちってこういうちょっと危険なダンジョン探索とか好きなんすよ。まぁ危機管理は十分していくから危険な目にはそんなにあったこと無いんすけどね」

「厄介な病気ですね…」

 そんな病気を発動させてホントよく今まで無事だったな。ユミナ先生やフラン先生がカバーしてたってことなんだろう。俺も気を付けないとな。

「お前ら適当な事ばかり言うんじゃない。私は別に一体どんな危険なトラップがあるんだろうとか気になっちゃいないぞ? ふふふふ♪」

 めっちゃ楽しそうやんけ。少しは隠そうとしなさいよ先生。

「ユミナ先生はどう思います? やっぱりこんな危険そうなとこ嫌ですよね?」

「うーん、ちょっと怖いけど、シルビアちゃん楽しそうだし…行ってみようかな?」

 ま、まさかユミナ先生も賛成派とは思わなかった。残るはフラン先生だが…。

「フラン先生はどうですか?」

「私は行くの賛成っすよ。なんか楽しそうっすし♪ クロっちは行きたくないんすか?」

「いえ、行きたくない訳じゃないんですけどね…」

 若干ビビっているのは確かだがな、まぁみんな行くって言うなら行くしかないか。多数決は民主主義の鉄則だ。【探索魔法サーチ】でチェックしながら進めばなんとかなるだろう。

「それじゃ、もう中に入ってもいいっぽいし、行きましょうか」

 もはや多数の冒険者が逃げ出して列が崩壊している。中に入るならご勝手に状態だ。

「ああ、行くぞ皆。警戒を怠るなよ!」

「「「了解(っす)!」」」

 

 クルーエル遺跡の内部に侵入する。その遺跡はまるで崩壊したパルテノン神殿のような様相だった。かつて栄えた文明の崩壊後の姿とかそんな感じなんだろうか?

「ここって何の遺跡なんですか?」

「ここはかつての勇者と魔王の戦いで崩壊したクルーエルという街の跡だ。その戦いが熾烈だったようでな。栄えていた街が崩壊して、当時ここの周辺は人も住み着かない不毛の土地になってしまったらしい。まぁ今では過去の遺跡の一つとして冒険者たちの狩場の一つになっているがな」

「そうなんですか…」

 街一つ滅ぼすとかどんな戦いだったんだろう。いまいち想像がつかない。

「あ、ダンジョンの入口が見えてきたっすよ!」

 そこには石造りの門のような入口がそびえ立っていた。その前にはギルド職員がダンジョンの中に入る冒険者のチェックを行っているようだ。

「お疲れ様です。冒険者証の確認をさせていただきます」

「わかった。これでいいか」

 俺達全員の冒険者証を提示する。全員Dランクだから問題ないだろう。

「確認しました。Dランクパーティ『銀月の誓い』の方々ですね。先程から負傷者が出ています。どうか気をつけてくださいね」

「わかりました。ありがとうございます」

 いよいよダンジョン内に突入だ。【無限収納】からカンテラを出して灯してから中に入る。



 ダンジョンの内部に入ると、ヒヤッとした空気に変わる。壁や床は石材で出来ており、人の手によって作られた物だとわかる。しかしこういうダンジョン探索は初めてだが、予想以上にワクワクしてきた。俺も男の子だったってことだな。
 【探索魔法サーチ】でチェックしてみると、とりあえず暫く一本道で敵の反応はない。

「今のところ敵はいないみたいですね」

「そうか、だが警戒は怠るなよ。どこから敵が出てくるかわからないからな」

「了解です」

 暫く歩いたところで、3つに道が分かれている所に出た。その分かれ道のところには石版が置かれており、それになにか書かれている。

「これなんて書いてあるんすかねぇ。私にはこの字は読めないっす」

「私も、ちょっと、わからないかな」

 俺も石版を見てみると、何語かはわからないが読むことはできる。

「えーと、この道を左に曲がりし者には力の試練が、直進せし者には知の試練が待つであろう。右に曲がりし者には死の試練が待つ故、強者のみ進むべし。だそうです」

「クロード、読めるのか?」

 俺には【言語理解”極”】があるからかこの石版の言語も理解できるみたいだ。石版の言葉が理解できなくて右に行く人多そうだな。

「ええ。力の試練と知の試練。どっちが良いですかね? 右は論外ってことで」

「力の試練ってことは何かと戦うってことっすかね?」

「多分そうだと思います。知の試練は何か頭を使うようなことさせられるのかも」 

「私は力の試練の方がいいな。頭を使うのは苦手だ」

「私もどっちかと言えば力の試練の方がいいっすね」

「私は、知の試練の方が、いいな。力無いから」

「クロードはどっちがいいんだ?」

 力の試練がどういう物か解らないが極力魔力を節約していきたいからなぁ。頭で何か考えて先に進めるならそっちの方がいいだろう。

「俺も知の試練の方が良いと思います。戦闘は今後の為にも極力避けたいですし」

「ふむ、2対2か。こういう時は…くじ引きだな!」

 安易だなー。別にいいけど。【無限収納】から紙を取り出し、4枚のくじを作る。先が赤くなっているくじを引いた人が勝ちである。

「それじゃ先生達、先引いていいですよ」

「わかったっす。それじゃ、これっす!」

「私はこれだ」

「それじゃ、これでいい」

「んじゃ俺はこれで。いっせーのーせっ!」

 赤いくじを引いたのはユミナ先生だった。

「やった♪」

 そんなわけで知の試練を受けることに決定したので、真っ直ぐ進むことにする。【探索魔法サーチ】には相変わらず魔物反応は出ていない。
 再び5分ほど歩いたところに、大きな扉のようなものが現れた。その扉の前には水晶のような物が台座の上に置かれている。なにこれ。罠か?
 するとそこに、誰かの声が聞こえてきた。

『知の試練を望みし者よ、水晶にその手を置きし時、試練の開始の合図とする。試練に失敗せし時、汝らには炎の裁きが与えられるであろう』

「ななっ、どこかから声が聞こえたっすよ!?」

「敵か!? クロード!」

「いえ、敵では…ないみたいですけどね。その水晶に手を置いたら試練スタートみたいですよ。失敗したら燃やされるっぽいこと言ってますけど」

「そ、そうか。ここは二人に任せてもいいか?」

「了解です。ユミナ先生、頑張りましょう」

「わかった。頑張る」

 俺とユミナ先生は、手を合わせて水晶の上に手を乗せる。すると、先ほどの声が再び語りかけてきた。

『それでは試練を開始する。10問出題する故全て答えよ!』

 ゴクッと喉を鳴らす。一体どんな問題が出るんだろう?

『第一問! お城のまわりにある 食べられないかきって な~んだ?』

「お城のまわりに、柿があるの?」

 これってもしかして…なぞなぞ??

「い…石垣?」

『正解!!』

「クロードくん、どういうこと?」

「あー、あとで説明しますよユミナ先生」

『第2問!! お店でせっかくかったのに そのままお店においてきちゃうもの な~んだ?』

「…髪の毛」

『正解!!』

「おー、すごい、クロードくん」

 その後もずっとなぞなぞの問題が出題される。なんでここでなぞなぞなんだとか、いったい誰が問題考えたんだとか色々疑問は尽きないが、とりあえず試練は試練。きっちり正解を答えていく。小学校低学年時代、なぞなぞ魔人と呼ばれた俺に挑もうとはいい度胸だ。
 
 そして最終問題。

『第10問! 肺は8 箱は40 花はいくつ?』

「……56」

『正解!! 賢者よ、先に進むがいい!』

 ゴゴゴゴゴゴッと音を立てて扉が開いていく。やっと終わったか。

「ねぇねぇ、クロードくん、どういうこと? 問題、全然、解らなかったよ?」

「私もさっぱりっす。教えて欲しいっす!」

「私は聞いてもわからんから別にいい」

「それじゃ歩きながら説明しますよ」


 なぞなぞの説明をしながら先に進んでいく。細かく説明してようやく二人は理解してくれたようだ。暫く先に進むと、開けた広い空間に出ることができた。そこでは先行した他のパーティが魔物と戦闘しているようだ。全身に金属の鎧を身に纏い、巨大な斧を持った3mくらいある魔物と3人の冒険者が戦っている。

「あれは、ここを守るガーディアンかなにかですかね?」

「そのようだな。どうやらヤバそうだ。みんな加勢するぞ!」

「「「了解(っす)!」」」

 劣勢に追い込まれている冒険者達を救援すべく、魔法で援護する。

『雷よ戒めの鎖となれ! 雷縛鎖ライトニングバインド!』

 俺の放った雷の鎖が、冒険者の男に斧を振り下ろそうとしていた右腕に絡みつき、その動きを拘束する。だが魔物の力が強く、あまり長くは持ちそうもない。

「なっ!? あんた達は…」

「パーティ『銀月の誓い』だ。勝手ながら加勢させてもらう!」

「ありがたい! こちらはパーティ『烈火の盾』だ。加勢感謝する!」

 シルビア先生が冒険者の男を救出し、その場を離れると同時に雷縛鎖ライトニングバインドが引きちぎられてしまった。力強いなこの魔物。

 『烈火の盾』のメンバーたちは全員満身創痍という状態のため、戦力には期待できない。ここは俺たちがやるしかなさそうだ。フラン先生とシルビア先生が速度を活かして武器で攻撃しているが、魔物の鎧には傷ひとつ付いていない。

「くっ! 硬い!」

「この鎧めっちゃ硬いっすよ!?」

「2人共! 鎧が覆っていない関節部分を狙ってください!」

「「了解(っす)!!」」

「ユミナ先生、俺が今からあの魔物を燃やすので、その後すぐに水魔法で急速に冷やしてください!」

「うん、わかったよ」

 俺は気合を入れて火魔法を詠唱し収束をかける。普通に火魔法を打っても鎧の温度が上がらないからだ。十分収束させたところで、前線の二人に声をかける。

「シルビア先生、フラン先生、魔物から離れてください!」

 俺の声を聞き、2人は即座に離脱する。

「喰らえ! 『業炎放射インフェルノエミッション』!!」

 俺の手から放たれた強烈な勢いの火炎放射を魔物の全身に余す所なく浴びせてゆく。急激な熱さに耐えられなかったのか、魔物が咆哮を上げた。

「GUOOOOOOOOON!!!」

 そのまま火炎放射の勢いで押して壁際に追い込み、鎧が熱で十分に赤くなったところで火炎放射を止め、魔法の詠唱を終えていたユミナ先生に指示を出した。

「ユミナ先生、今です!」

「うん! 『水龍陣リヴァイアサークル』!!」

 中級水魔法、水龍陣リヴァイアサークル。対象の足元に魔法陣を配置し、そこから急激な勢いで昇龍の如く大量の水を上昇させる魔法だ。壁際に追い込まれた魔物には避けるすべはない。
 
「GUOOOOOOO!!」

 魔物の鎧が急冷されて水蒸気が立ち込めている。今がチャンスだ!

「シルビア先生、フラン先生! 魔物の鎧に攻撃を!!」

「「了解(っす)!」」

 焼入れされた魔物の鎧は強度が下がり、2人の攻撃によって脆くも破壊されてゆく。そこからはこちら側の前衛2人による一方的な蹂躙が開始されていた。

「鎧が無くなったらこっちのモノっす!!」

「はははははっ! 喰らえ『連牙斬』!!」

「GUOOOO…OOO…」

  暫く二人にボコボコにされた魔物は為す術無くその場に崩れ落ちた。

「やった、勝ったっす~!」

「ふっ、我々の勝利だ!」

 最後の方虐めてるみたいになってた気もするが、まぁ勝ったからいいか。魔物を倒したことに反応したのか奥へと進むための扉が開き、その奥に地下へと降りる階段が見える。

「あそこから下の階に行けるみたいっすね」

「そうみたいですね」

 するとそこに、戦線を離脱して回復に集中していた『烈火の盾』の人達が話しかけてきた。

「すまない、俺はCランクパーティ『烈火の盾』のリーダーをやってるブライト=ローウェルという者だ。後ろのはジュリアとトーマス。救援に来てくれて助かった。感謝する」

「礼には及ばない。私はDランクパーティ『銀月の誓い』のリーダー、シルビアだ。そっちの2人は大丈夫だったか?」

「ああ、なんとかな。だが俺達はもう限界が近いからもう外に戻るが、ここから先に進むなら気を付けた方がいい。どうやらここは普通のダンジョンじゃないみたいだからな。街に帰ってきたら声をかけてくれ。助けてくれたお礼に酒でも奢ろう」

「わかった。気をつけて戻ってくれ」

 『烈火の盾』メンバーはダンジョンを引き返していく。確かにこのダンジョンはなぞなぞといい、さっきの巨大な魔物といい、なんか変な気がする。気をつけて進んでいこう。

「それじゃ、そろそろ先に進もうか」

「「「了解(っす)!」」」


 俺たちは階段を下りて次の階層へ向かう。

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