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第30話「メイドさん選考会」
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王都のギルドでメイドさん募集を出してから一週間後、俺とフィリスは募集の結果を聞くために再び冒険者ギルドへとやってきた。
「すいません、一週間前に求人出した者なんですけど」
「あ、いらっしゃいませ! メイドの募集をかけていたクロードさんですね」
「ええ。どんな感じですか?」
「いっぱい応募ありましたよ! こちらが応募してきた方達の応募書類です」
そう言って受付さんは机に紙の束を取り出した。…これ全部応募してきたのか?
「あの、何人ぐらい応募してきたんですか?」
「えっと、全部で58名ですね。やっぱりお給金がいいと集まる人数も違いますね!」
月に金貨20枚ってそんなに高い部類だったのか…。就職難なのか?
「それじゃあとはこの応募書類の中から書類審査をして、その後面接みたいな感じでいいんですかね」
「採用方法はクロードさんの方で決めていただいて大丈夫ですよ。書類審査で通った方にはこちらから連絡を差し上げますので。落ちた方には不採用通知をお送りします」
「わかりました。それじゃ選んできますね」
冒険者ギルドの別室を借り、応募書類に目を通すことにした。応募書類には氏名や年齢、職歴や手持ちのスキルなんかが書いてあった。履歴書みたいなもんか。写真も貼ってあるのは正直びっくりしたが、冒険者ギルドにそういうカメラっぽい魔道具があるらしい。
「フィリスも一緒に選んでね」
「わかりました!」
一枚一枚見ていく。俺がメイドさんを選ぶ基準は
1、可愛さ 2、家事スキルの有無 3、戦闘スキルの有無
の3項目だ。種族まで問うつもりはない。でもやっぱり一緒に住むなら当然可愛い子のほうがいい。ついでに家を任せるなら多少戦えたほうがいいだろう。その審査基準の中で俺とフィリスが厳選して選び出したのは以下の4人だ。
氏名:クーリア 年齢:18歳 種族:狼獣人
職歴:タリス伯爵家メイド(6年)
スキル:【洗濯LV4】【掃除”LV3”】【料理”LV2”】
戦闘スキル:【体術”LV3”】【斧術”LV3”】
銀髪ロングで小柄な可愛い目と耳をした女の子だ。
氏名:リューシア 年齢:149歳 種族:エルフ
職歴:ベンジャミン子爵家メイド(23年)
スキル:【洗濯LV5】【掃除”LV5”】【料理”LV4”】
戦闘スキル:【風魔法”LV4”】【弓術”LV4”】
緑髪ポニテの美人エルフさん。
氏名:サクラ 年齢:16歳 種族:人間
職歴:冒険者
スキル:【洗濯LV3】【掃除”LV3”】【料理”LV5”】
戦闘スキル:【剣術”LV3”】【火魔法”LV3”】【光魔法”LV2”】
黒髪でボブカットの可愛い女の子。
氏名:カノン 年齢:21歳 種族:虎獣人
職歴:グロリア商会(2年)
スキル:【洗濯LV3】【掃除”LV5”】【料理”LV3”】
戦闘スキル:【体術”LV4”】【爪術”LV4”】
赤髪でショートカットの優しそうな女性だ。ナイスバディ。
選び出すのにえらい時間かかった。可愛い子は多かったのだが戦闘をしたことがない子がほとんどだったのだ。まぁメイドさんなんだから仕方ないけど。とりあえず決まったので、受付さんに報告する。
「この4名でお願いします。明日の10時に俺の家で面接したいので伝えていただけますか?」
「畏まりました。それではお伝えしておきます。残りの方は不採用でよろしいですか?」
「ええ。よろしくお願いします」
そう言って冒険者ギルドを出た。どんな子が来るのかちょっと楽しみ。
そして翌日。10時前には全員家に集まっていた。今はリビングで待機してもらっている。とりあえず昨日、2階の一室に机を置いて面接会場にしておいた。
「それじゃ面接始めようか。フィリス、家に来た順に一人づつ呼んできてもらえる?」
「わかりました!」
ここからは面接官モードで真面目にいこう。暫くするとノックの音が聞こえてくる。
「どうぞ」
「失礼します」
中に入ってきたのは緑髪のエルフさん。きちんとした動きで椅子の横に立ち、一礼してくる。
「初めまして、リューシアと申します。本日はよろしくお願い致します」
「この家の面接担当のクロードです。こちらこそよろしく。座っていいですよ」
「はい、失礼致します」
俺の容姿には何の反応もなく椅子に座る。出来るなこの人。
「それじゃ志望動機を聞かせてもらえますか?」
「はい。私は以前ベンジャミン子爵様の家に仕えさせて頂いていたのですが、そちらの家で23年程メイドをしてまいりました。次の仕事もメイドがしたいと思い求人を探していたところ、こちらの求人を拝見しましたので志望させて頂きました」
「前職はどうしてお辞めになったんですか?」
「それは…」
なんか言い淀んでいる。言いたくないようなことなのかな?
「正直に言って頂いていいですよ。言いたくないなら言わなくても大丈夫です」
「いえ…クロード様に不快な思いをさせてしまうかと思いましたので…」
「構いません。もし教えていただけるのなら教えてください」
「畏まりました。前に仕えておりましたベンジャミン子爵様の第2夫人の方がその…エルフ嫌いな方で、あらぬ罪を着せられて追い出されてしまったのです」
「あらぬ罪とは?」
「家のお金を横領したと。私も無実を訴えたのですが聞いては頂けませんでした…」
「そうですか…大変でしたね」
「いえ…」
ダウトだな。俺の【真眼】は誤魔化せないよ。称号に【殺人鬼】、スキルに【窃盗】や【強奪】があるのは頂けない。正直美人のエルフは勿体無いが、まだ先もあるし早急にお帰り願おう。その後他愛もない質問をして、結果は後日と言ってお帰り頂いた。
「フィリス、次の人よろしく」
「わかりました!」
暫くして、次の人がノックをして入って来る。
「失礼します! 狼牙族のクーリアなのです! よろしくお願いするのです!!」
なんか元気な子だな。こういう子は割と嫌いじゃない。この子のステータスがこんな感じ。
名前:クーリア
年齢:18歳 種族:狼獣人
称号:狼牙族 狼メイド
加護:神狼の加護
レベル:18
HP:440/440
MP:118/118
筋力:98 体力:113 魔力:25
精神:48 敏捷:168 運:13
技能スキル
【体術”LV3”】【斧術”LV3”】【礼儀作法”LV2”】
【洗濯LV4】【掃除”LV3”】【料理”LV2”】
「面接官のクロードです。こちらこそよろしく。どうぞお座り下さい」
「はい! 失礼するのです!」
「それじゃ志望動機を教えていただけますか?」
「はい! 私メイドの仕事好きなので、あと給料高いので応募したのです!」
「前職はなぜ辞めたのですか?」
「前のご主人様の息子、私に嫌なことしてきたのです。それが嫌で辞めたのです」
「嫌なこととはどんなことか聞いてもいいですか?」
「私の尻尾や耳を引っ張ったり、嫌いなもの食べさせられたり、お風呂覗かれたりしたのです。あと寝てるところにベッドに入ってきたりとか、トイレも覗かれたのです!」
普通に最低だなそいつ。ていうかただの変質者だろ。何よりも獣人の女の子の耳や尻尾に許可なくイタズラするのは頂けない。ダメ、絶対。
「わ、わかりました。それじゃ次に得意料理はなんですか?」
「肉料理なのです! 焦がさずに焼けるのですよ!」
うん。なんとなくそんな感じはしたよ。それから色々聞いたけど、この子は不幸っぽいけどいい子だな。可愛いし合格にしよう。合格者は帰らずにリビングで待っててもらう。
「最後にうちのメイドになるとして、要望とかありますか?」
「ご飯をいっぱい食べたいのです!」
お腹いっぱい食べさせてあげよう。
「それじゃ次の子よろしく」
「了解です!」
次の子がノックして入ってくる。緊張してるのか動きが硬い。椅子の横に立ち、一礼してくる。
「サクラと申します! よろしくお願いします!!」
「面接官のクロードです。よろしくお願いします。座っていいですよ」
「こ、子供!? あ、すいません! 失礼しましゅ!」
噛みながら椅子に座る。子供って言われたがこういう子は嫌いじゃない。彼女のステータスも見せてもらおう。
名前:サクラ=クニシゲ
年齢:16歳 種族:人間
称号:Eランク冒険者
加護:剣神の加護
レベル:15
HP:254/254
MP:221/221
筋力:46 体力:77 魔力:68
精神:71 敏捷:83 運:50
EXスキル
【植物支配】
魔法スキル
【火魔法”LV3”】【光魔法”LV2”】
技能スキル
【洗濯LV3】【掃除”LV3”】【料理”LV5”】
【剣術”LV3”】【盾術”LV2”】
このEXスキル、なんか凄そうだな。
EXスキル【植物支配】:スキルを発動する事で植物を自在に操ることが出来る。植物の成長を促したり、植物の配合の調整や改造、異種交配などもすることができる。
使い方次第じゃかなりチートになりそうだが、戦闘には使ってないのかな?
「それじゃ志望動機を教えていただけますか?」
「は、はい! ボ、ボクは冒険者なんですけど、魔物と戦ったりするのが苦手なんです。それで別の仕事をしようと思って探していたら、お、御社の求人を見つけたので志望しました!」
ボクっ娘…だと!? てか御社て。
「ありがとうございます。では次に趣味などがあれば教えてください」
「しゅ、趣味は編み物と料理です!」
「どんな料理が得意ですか?」
「えっと、カレーとハンバーグと卵焼きです!」
「得意なスポーツはありますか?」
「す、水泳と卓球は得意です!」
ほぼ決まりだな。この子は転生者か転移者のどっちかだ。この世界に卓球なんてないし。【真眼】で調べてみても勇者とかじゃないみたいだけどな。しかしカレーが得意なのは好感度急上昇だ。色々と面白そうだし、この子も採用しよう。
「それじゃ最後に、うちのメイドに採用されるとして、何か要望はありますか?」
「えっと、料理だけじゃなくてお菓子も作らせてもらえたら嬉しいです!」
「わかりました。それじゃリビングでお待ちください」
「はい!」
「それじゃ最後の人呼んできて」
「わかりましたー!」
次の人がノックをして入ってくる。最後の子は虎獣人の子だ。
「失礼しまーす。カノンです。よろしくおねがいしますね」
「面接官のクロードです。よろしくお願いします。どうぞお座りください」
「はーい。あの、質問いいですか?」
「え? はい、どうぞ」
「面接官さんって何歳なんですか?」
「…12歳ですけど、それが何か?」
「ううん、可愛いなぁって思っただけですよ♪」
その質問は減点だが声が可愛い。俺が好きな声優の種○さんに似ている。そんな彼女のステータスがこちら。
名前:カノン
年齢:21歳 種族:虎獣人
称号:Dランク冒険者 神速メイド 子供好き
加護:獣神の加護
レベル:30
HP:504/504
MP:343/343
筋力:102 体力:140 魔力:81
精神:90 敏捷:204 運:80
EXスキル
【虎獣変化】
魔法スキル
【風魔法”LV3”】【無魔法”LV4”】
技能スキル
【洗濯LV3】【掃除”LV5”】【料理”LV3”】
【体術”LV4”】【爪術”LV4”】【礼儀作法”LV4”】
【索敵”LV4”】【隠密”LV5”】【罠設置”LV4”】
【罠解除”LV3”】【鍵開け”LV4”】
素早さ特化の前衛斥候タイプ…フラン先生と同じだな。魔法も使えるなら強いかも知れない。
「あ、ありがとうございます。それでは志望動機を聞かせてください」
「えっとぉ、一番の理由はお給料が高いからですね。あと私、メイドさんの仕事が好きなんですよぉ。なんていうか、私の天職? みたいな感じと思ってます」
「では前職はなぜ辞められたのですか?」
「同僚からしつこく迫られたんです。それで襲ってきたところを撃退したら、その人会社の重役の子供だったみたいで、あっという間にクビになっちゃいました」
「そ、そうですか。その後は大丈夫なんですか?」
「はい。もう大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます♪」
「いえ。それでは次の質問ですが、戦闘スキルが豊富ですが冒険者もやってたんですか?」
「…はい。でももう冒険者からは足を洗ったんです」
「そ、そうですか。それじゃ次の質問ですが…」
どうやら彼女は冒険者をやってる時に何かがあってメイドに転身したみたいだ。それが何かは知らないがこの能力の人材を逃す手はないだろう。メイド兼警備員な感じで採用しよう。
「それでは最後に、うちのメイドに採用されるとして、何か要望はありますか?」
「これはお仕事と関係ないんですけど、クロードくんとお風呂入りたいな♪」
「・・・か、考えておきます」
「うん。よろしくお願いしますね」
こうして面接が終了した。なんか地味に個性強そうな面子だがいい子っぽいし大丈夫だろう。俺はフィリスと共に応募者のみんなが待つリビングへと向かった。中の様子を見てみると、3人で仲良く話しているみたいだ。新人同士、これからも仲良くして欲しいものだ。
「やぁみんな。面接お疲れ様」
「あ、クロードくんだ! 私に会いに来てくれたの?」
「合ってるけど違うよ。面接結果を発表しに来たんだ」
「!!」
その一言であたりは静まり返る。この適度な緊張感がいい感じだね。
「面接の結果・・・・・・・・・・・・・・・この場にいる全員、合格です!」
「「「や、やったぁ!」」」
「それじゃ改めて自己紹介するね。俺はクロード=グレイナード。この家の主で男爵やってます」
「め、面接官さんじゃなかったんですか?」
「うん。みんな俺が主人で男爵とか言ったら緊張するかと思って黙ってたんだ。ごめんね。それでこっちがうちのメイド長のフィリスだ。フィリス、挨拶して」
「私メイド長なんですか!?」
「そりゃそうでしょ、俺と一番付き合い長いし。フィリスにはみんなを統括して指導してもらうからよろしくね。厳しくしなきゃダメだよ?」
「わ、わかりました。私頑張ります! 改めてメイド長のフィリスです。わからないことがあったらなんでも聞いてくださいね!」
「「「よろしくお願いします!」」」
「それじゃ契約書を渡すから、内容を確認してサインしてもらえるかな」
3人に契約書を渡す。中身は労働条件や給与、休みについてなどが書かれている。あとは3人の部屋を決めなきゃならないな。契約書を受け取ったあと、2階に移動する。
「みんな住み込みってことでいいんだよね?」
「「「はい!」」」
「それじゃこの2階の部屋ならどこ使ってもいいから選んでくれるかな。間取りは全部一緒だけどね」
「えっと…こ、こんな豪華な部屋を使ってもいいんですか!?」
「うん。大丈夫だよ。遠慮せずに使ってほしいな」
全員から歓声が上がる。みんな喜んでくれているみたいだな。部屋は余っているから有効活用しないとね。それぞれが部屋を決めた後、引越しの準備をするために解散することになった。
「仕事の開始は15日からで、それまでは誰もいないから注意してね」
「わかりました」
「それじゃみんなまたね。今日はお疲れ様」
「「「お疲れ様でした」」」
3人が帰ると、家の中が静かになる。人がいなくなるとちょっと寂しいと思っちゃうね。
「クロード様、みんないい子でよかったですね!」
「そうだね。フィリスもこれからメイド長として頑張ってもらうけど大丈夫?」
「はい! みんなにも早く慣れてもらえるように頑張りますね!」
「うん。よろしくね」
とりあえずこれで家のことはなんとかなるだろうから、あとは俺が入試を頑張るだけだな。これで俺が落ちたら色々洒落にならないから帰って勉強しよう。
「すいません、一週間前に求人出した者なんですけど」
「あ、いらっしゃいませ! メイドの募集をかけていたクロードさんですね」
「ええ。どんな感じですか?」
「いっぱい応募ありましたよ! こちらが応募してきた方達の応募書類です」
そう言って受付さんは机に紙の束を取り出した。…これ全部応募してきたのか?
「あの、何人ぐらい応募してきたんですか?」
「えっと、全部で58名ですね。やっぱりお給金がいいと集まる人数も違いますね!」
月に金貨20枚ってそんなに高い部類だったのか…。就職難なのか?
「それじゃあとはこの応募書類の中から書類審査をして、その後面接みたいな感じでいいんですかね」
「採用方法はクロードさんの方で決めていただいて大丈夫ですよ。書類審査で通った方にはこちらから連絡を差し上げますので。落ちた方には不採用通知をお送りします」
「わかりました。それじゃ選んできますね」
冒険者ギルドの別室を借り、応募書類に目を通すことにした。応募書類には氏名や年齢、職歴や手持ちのスキルなんかが書いてあった。履歴書みたいなもんか。写真も貼ってあるのは正直びっくりしたが、冒険者ギルドにそういうカメラっぽい魔道具があるらしい。
「フィリスも一緒に選んでね」
「わかりました!」
一枚一枚見ていく。俺がメイドさんを選ぶ基準は
1、可愛さ 2、家事スキルの有無 3、戦闘スキルの有無
の3項目だ。種族まで問うつもりはない。でもやっぱり一緒に住むなら当然可愛い子のほうがいい。ついでに家を任せるなら多少戦えたほうがいいだろう。その審査基準の中で俺とフィリスが厳選して選び出したのは以下の4人だ。
氏名:クーリア 年齢:18歳 種族:狼獣人
職歴:タリス伯爵家メイド(6年)
スキル:【洗濯LV4】【掃除”LV3”】【料理”LV2”】
戦闘スキル:【体術”LV3”】【斧術”LV3”】
銀髪ロングで小柄な可愛い目と耳をした女の子だ。
氏名:リューシア 年齢:149歳 種族:エルフ
職歴:ベンジャミン子爵家メイド(23年)
スキル:【洗濯LV5】【掃除”LV5”】【料理”LV4”】
戦闘スキル:【風魔法”LV4”】【弓術”LV4”】
緑髪ポニテの美人エルフさん。
氏名:サクラ 年齢:16歳 種族:人間
職歴:冒険者
スキル:【洗濯LV3】【掃除”LV3”】【料理”LV5”】
戦闘スキル:【剣術”LV3”】【火魔法”LV3”】【光魔法”LV2”】
黒髪でボブカットの可愛い女の子。
氏名:カノン 年齢:21歳 種族:虎獣人
職歴:グロリア商会(2年)
スキル:【洗濯LV3】【掃除”LV5”】【料理”LV3”】
戦闘スキル:【体術”LV4”】【爪術”LV4”】
赤髪でショートカットの優しそうな女性だ。ナイスバディ。
選び出すのにえらい時間かかった。可愛い子は多かったのだが戦闘をしたことがない子がほとんどだったのだ。まぁメイドさんなんだから仕方ないけど。とりあえず決まったので、受付さんに報告する。
「この4名でお願いします。明日の10時に俺の家で面接したいので伝えていただけますか?」
「畏まりました。それではお伝えしておきます。残りの方は不採用でよろしいですか?」
「ええ。よろしくお願いします」
そう言って冒険者ギルドを出た。どんな子が来るのかちょっと楽しみ。
そして翌日。10時前には全員家に集まっていた。今はリビングで待機してもらっている。とりあえず昨日、2階の一室に机を置いて面接会場にしておいた。
「それじゃ面接始めようか。フィリス、家に来た順に一人づつ呼んできてもらえる?」
「わかりました!」
ここからは面接官モードで真面目にいこう。暫くするとノックの音が聞こえてくる。
「どうぞ」
「失礼します」
中に入ってきたのは緑髪のエルフさん。きちんとした動きで椅子の横に立ち、一礼してくる。
「初めまして、リューシアと申します。本日はよろしくお願い致します」
「この家の面接担当のクロードです。こちらこそよろしく。座っていいですよ」
「はい、失礼致します」
俺の容姿には何の反応もなく椅子に座る。出来るなこの人。
「それじゃ志望動機を聞かせてもらえますか?」
「はい。私は以前ベンジャミン子爵様の家に仕えさせて頂いていたのですが、そちらの家で23年程メイドをしてまいりました。次の仕事もメイドがしたいと思い求人を探していたところ、こちらの求人を拝見しましたので志望させて頂きました」
「前職はどうしてお辞めになったんですか?」
「それは…」
なんか言い淀んでいる。言いたくないようなことなのかな?
「正直に言って頂いていいですよ。言いたくないなら言わなくても大丈夫です」
「いえ…クロード様に不快な思いをさせてしまうかと思いましたので…」
「構いません。もし教えていただけるのなら教えてください」
「畏まりました。前に仕えておりましたベンジャミン子爵様の第2夫人の方がその…エルフ嫌いな方で、あらぬ罪を着せられて追い出されてしまったのです」
「あらぬ罪とは?」
「家のお金を横領したと。私も無実を訴えたのですが聞いては頂けませんでした…」
「そうですか…大変でしたね」
「いえ…」
ダウトだな。俺の【真眼】は誤魔化せないよ。称号に【殺人鬼】、スキルに【窃盗】や【強奪】があるのは頂けない。正直美人のエルフは勿体無いが、まだ先もあるし早急にお帰り願おう。その後他愛もない質問をして、結果は後日と言ってお帰り頂いた。
「フィリス、次の人よろしく」
「わかりました!」
暫くして、次の人がノックをして入って来る。
「失礼します! 狼牙族のクーリアなのです! よろしくお願いするのです!!」
なんか元気な子だな。こういう子は割と嫌いじゃない。この子のステータスがこんな感じ。
名前:クーリア
年齢:18歳 種族:狼獣人
称号:狼牙族 狼メイド
加護:神狼の加護
レベル:18
HP:440/440
MP:118/118
筋力:98 体力:113 魔力:25
精神:48 敏捷:168 運:13
技能スキル
【体術”LV3”】【斧術”LV3”】【礼儀作法”LV2”】
【洗濯LV4】【掃除”LV3”】【料理”LV2”】
「面接官のクロードです。こちらこそよろしく。どうぞお座り下さい」
「はい! 失礼するのです!」
「それじゃ志望動機を教えていただけますか?」
「はい! 私メイドの仕事好きなので、あと給料高いので応募したのです!」
「前職はなぜ辞めたのですか?」
「前のご主人様の息子、私に嫌なことしてきたのです。それが嫌で辞めたのです」
「嫌なこととはどんなことか聞いてもいいですか?」
「私の尻尾や耳を引っ張ったり、嫌いなもの食べさせられたり、お風呂覗かれたりしたのです。あと寝てるところにベッドに入ってきたりとか、トイレも覗かれたのです!」
普通に最低だなそいつ。ていうかただの変質者だろ。何よりも獣人の女の子の耳や尻尾に許可なくイタズラするのは頂けない。ダメ、絶対。
「わ、わかりました。それじゃ次に得意料理はなんですか?」
「肉料理なのです! 焦がさずに焼けるのですよ!」
うん。なんとなくそんな感じはしたよ。それから色々聞いたけど、この子は不幸っぽいけどいい子だな。可愛いし合格にしよう。合格者は帰らずにリビングで待っててもらう。
「最後にうちのメイドになるとして、要望とかありますか?」
「ご飯をいっぱい食べたいのです!」
お腹いっぱい食べさせてあげよう。
「それじゃ次の子よろしく」
「了解です!」
次の子がノックして入ってくる。緊張してるのか動きが硬い。椅子の横に立ち、一礼してくる。
「サクラと申します! よろしくお願いします!!」
「面接官のクロードです。よろしくお願いします。座っていいですよ」
「こ、子供!? あ、すいません! 失礼しましゅ!」
噛みながら椅子に座る。子供って言われたがこういう子は嫌いじゃない。彼女のステータスも見せてもらおう。
名前:サクラ=クニシゲ
年齢:16歳 種族:人間
称号:Eランク冒険者
加護:剣神の加護
レベル:15
HP:254/254
MP:221/221
筋力:46 体力:77 魔力:68
精神:71 敏捷:83 運:50
EXスキル
【植物支配】
魔法スキル
【火魔法”LV3”】【光魔法”LV2”】
技能スキル
【洗濯LV3】【掃除”LV3”】【料理”LV5”】
【剣術”LV3”】【盾術”LV2”】
このEXスキル、なんか凄そうだな。
EXスキル【植物支配】:スキルを発動する事で植物を自在に操ることが出来る。植物の成長を促したり、植物の配合の調整や改造、異種交配などもすることができる。
使い方次第じゃかなりチートになりそうだが、戦闘には使ってないのかな?
「それじゃ志望動機を教えていただけますか?」
「は、はい! ボ、ボクは冒険者なんですけど、魔物と戦ったりするのが苦手なんです。それで別の仕事をしようと思って探していたら、お、御社の求人を見つけたので志望しました!」
ボクっ娘…だと!? てか御社て。
「ありがとうございます。では次に趣味などがあれば教えてください」
「しゅ、趣味は編み物と料理です!」
「どんな料理が得意ですか?」
「えっと、カレーとハンバーグと卵焼きです!」
「得意なスポーツはありますか?」
「す、水泳と卓球は得意です!」
ほぼ決まりだな。この子は転生者か転移者のどっちかだ。この世界に卓球なんてないし。【真眼】で調べてみても勇者とかじゃないみたいだけどな。しかしカレーが得意なのは好感度急上昇だ。色々と面白そうだし、この子も採用しよう。
「それじゃ最後に、うちのメイドに採用されるとして、何か要望はありますか?」
「えっと、料理だけじゃなくてお菓子も作らせてもらえたら嬉しいです!」
「わかりました。それじゃリビングでお待ちください」
「はい!」
「それじゃ最後の人呼んできて」
「わかりましたー!」
次の人がノックをして入ってくる。最後の子は虎獣人の子だ。
「失礼しまーす。カノンです。よろしくおねがいしますね」
「面接官のクロードです。よろしくお願いします。どうぞお座りください」
「はーい。あの、質問いいですか?」
「え? はい、どうぞ」
「面接官さんって何歳なんですか?」
「…12歳ですけど、それが何か?」
「ううん、可愛いなぁって思っただけですよ♪」
その質問は減点だが声が可愛い。俺が好きな声優の種○さんに似ている。そんな彼女のステータスがこちら。
名前:カノン
年齢:21歳 種族:虎獣人
称号:Dランク冒険者 神速メイド 子供好き
加護:獣神の加護
レベル:30
HP:504/504
MP:343/343
筋力:102 体力:140 魔力:81
精神:90 敏捷:204 運:80
EXスキル
【虎獣変化】
魔法スキル
【風魔法”LV3”】【無魔法”LV4”】
技能スキル
【洗濯LV3】【掃除”LV5”】【料理”LV3”】
【体術”LV4”】【爪術”LV4”】【礼儀作法”LV4”】
【索敵”LV4”】【隠密”LV5”】【罠設置”LV4”】
【罠解除”LV3”】【鍵開け”LV4”】
素早さ特化の前衛斥候タイプ…フラン先生と同じだな。魔法も使えるなら強いかも知れない。
「あ、ありがとうございます。それでは志望動機を聞かせてください」
「えっとぉ、一番の理由はお給料が高いからですね。あと私、メイドさんの仕事が好きなんですよぉ。なんていうか、私の天職? みたいな感じと思ってます」
「では前職はなぜ辞められたのですか?」
「同僚からしつこく迫られたんです。それで襲ってきたところを撃退したら、その人会社の重役の子供だったみたいで、あっという間にクビになっちゃいました」
「そ、そうですか。その後は大丈夫なんですか?」
「はい。もう大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます♪」
「いえ。それでは次の質問ですが、戦闘スキルが豊富ですが冒険者もやってたんですか?」
「…はい。でももう冒険者からは足を洗ったんです」
「そ、そうですか。それじゃ次の質問ですが…」
どうやら彼女は冒険者をやってる時に何かがあってメイドに転身したみたいだ。それが何かは知らないがこの能力の人材を逃す手はないだろう。メイド兼警備員な感じで採用しよう。
「それでは最後に、うちのメイドに採用されるとして、何か要望はありますか?」
「これはお仕事と関係ないんですけど、クロードくんとお風呂入りたいな♪」
「・・・か、考えておきます」
「うん。よろしくお願いしますね」
こうして面接が終了した。なんか地味に個性強そうな面子だがいい子っぽいし大丈夫だろう。俺はフィリスと共に応募者のみんなが待つリビングへと向かった。中の様子を見てみると、3人で仲良く話しているみたいだ。新人同士、これからも仲良くして欲しいものだ。
「やぁみんな。面接お疲れ様」
「あ、クロードくんだ! 私に会いに来てくれたの?」
「合ってるけど違うよ。面接結果を発表しに来たんだ」
「!!」
その一言であたりは静まり返る。この適度な緊張感がいい感じだね。
「面接の結果・・・・・・・・・・・・・・・この場にいる全員、合格です!」
「「「や、やったぁ!」」」
「それじゃ改めて自己紹介するね。俺はクロード=グレイナード。この家の主で男爵やってます」
「め、面接官さんじゃなかったんですか?」
「うん。みんな俺が主人で男爵とか言ったら緊張するかと思って黙ってたんだ。ごめんね。それでこっちがうちのメイド長のフィリスだ。フィリス、挨拶して」
「私メイド長なんですか!?」
「そりゃそうでしょ、俺と一番付き合い長いし。フィリスにはみんなを統括して指導してもらうからよろしくね。厳しくしなきゃダメだよ?」
「わ、わかりました。私頑張ります! 改めてメイド長のフィリスです。わからないことがあったらなんでも聞いてくださいね!」
「「「よろしくお願いします!」」」
「それじゃ契約書を渡すから、内容を確認してサインしてもらえるかな」
3人に契約書を渡す。中身は労働条件や給与、休みについてなどが書かれている。あとは3人の部屋を決めなきゃならないな。契約書を受け取ったあと、2階に移動する。
「みんな住み込みってことでいいんだよね?」
「「「はい!」」」
「それじゃこの2階の部屋ならどこ使ってもいいから選んでくれるかな。間取りは全部一緒だけどね」
「えっと…こ、こんな豪華な部屋を使ってもいいんですか!?」
「うん。大丈夫だよ。遠慮せずに使ってほしいな」
全員から歓声が上がる。みんな喜んでくれているみたいだな。部屋は余っているから有効活用しないとね。それぞれが部屋を決めた後、引越しの準備をするために解散することになった。
「仕事の開始は15日からで、それまでは誰もいないから注意してね」
「わかりました」
「それじゃみんなまたね。今日はお疲れ様」
「「「お疲れ様でした」」」
3人が帰ると、家の中が静かになる。人がいなくなるとちょっと寂しいと思っちゃうね。
「クロード様、みんないい子でよかったですね!」
「そうだね。フィリスもこれからメイド長として頑張ってもらうけど大丈夫?」
「はい! みんなにも早く慣れてもらえるように頑張りますね!」
「うん。よろしくね」
とりあえずこれで家のことはなんとかなるだろうから、あとは俺が入試を頑張るだけだな。これで俺が落ちたら色々洒落にならないから帰って勉強しよう。
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