悪役令嬢は嫌なので、放浪して好き勝手します

cqrijy

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1部 おっかなびっくり放浪編

5 雨天中止

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翌日、スキル【雨乞い】を取得して雨を降らせた。
おー、よく降ること。一角ブタカレーを煮込みながら窓を叩きつける雨にニンマリした。
もう今日は一日中雨でいいよ。
山菜マスターとの約束も明日に持ち越しだね。行かんけど。

さ、朝ご飯を食べたらもっと景観の良い南国にでも移動しよう。まずはフブルフォレストを抜けて領地に入って、海岸で絶対海の魚を釣る!  小島を泳いで移動しながら海底でも採取をするのがたまらんのだ。とくにお宝探しは時間の経過なんて忘れちまうぜ!

「鳥ラーメンうまー」

イベントの麺フェスで手に入れたインスタント袋麺だ。卵をおとして葱を散らして幸せー。お湯は少な目に、生卵を入れるのがポイント。

「あー、まだいける、まだ入るわ」

カレーはまだ煮込みが足りない。
ならばと収納からシーフードペペロンチーノを出す。
辛いソースもドバドバドバーイ!

「うんみゃ~辛い痺れるぅ」

食べ終えて最後に鯛焼きで糖分摂取。やっぱりアンコは落ち着くぅ。アイスコーヒーでお口の中もすっきり。

さ、着替えよー。
旅用の冒険服を着て、遠出用の装備は何があったかなー?

風になるマント。
走り出したら止まらない下駄。
空飛ぶ魔法のクッション。
息がしやすい鉄仮面。

とりあえず全部装備した。

鉄仮面はあれだ。海中でも火山でも呼吸がしやすい優れものだ。おまけに頭突きで岩をも砕く、戦闘に適した装備。海に着いたらこれで海底に潜んでいる巨大シジミを割ろう。そしてシジミ味噌汁を……うぷぷ。

そこでノック音が響いた。

「……リリー?  起きているかい?」

……その声、山菜マスター?

今日は雨天中止だよ……なにしにきたの?

「起きてまーす」

……ドアは開けたくないな。

「おはよう。ちょっと話できるかい?」

玄関まで駆け寄って声を上げる。
色んなスキルが発動した。

「ごめんなさーい、お風呂上がりだから、いま何も身に付けていないのぉ」
「……っ、あ、ならいい!  そのまま聞いてくれ。てか、まず服を着てくれ。風邪をひいてしまう」
「スキンケアとヘアケアするから、大丈夫。話ってなぁに?」

煙草をくわえ、腕を組む。
さっき食べ過ぎた。トイレの気分になってきた。

「今日は雨が降っているから中止にしよう。恐らく恵みの雨だ。明日にはやむだろう」
「じゃあ、明日あの湧き水のところで待ち合わせですねっ」
「っ、そ……そうだね」

あー、トイレいきたい。
煙草はトイレを誘発するんだよね。私だけ?

「あと、森の浅いところで不審者の目撃情報があった。ここは森の中心に近い。鉢合わすことはないだろうけど、採取するときは気をつけて欲しい」
「そうなんですか!  ……怖いですね。私、今日はずっと家にいます」

今から南国に向かってお魚パラダイスするぜー!
秋刀魚のハラワタ食いてー!

「それがいい。僕は今日はずっと森の見回りをしているから。リリーは安心して。家の周りなら採取もできるよ。その時は僕も付き添うし」
「雨が止んだら採取したいですっ。それまで静かに刺繍でもしてようかな」
「うん……もう服は着た?」
「ヘアケアが終わったから、これからオッパイにクリームを塗ります!」

収納から2本目の煙草を出して吸う。
1回巡って便意おさまったわ。

「そ、そう……それじゃあ僕は見回りをしてくるよ。雨が止んだら、迎えにくるね」
「はいっ、雨が止んだら一緒に採取しましょうね~」

窓から立ち去る山菜マスターを確認。
傘持ってないのかな?
ローブがびしょ濡れだ。

まぁ、ステータス的に大丈夫だろうけど。


トイレ入ってすっきり。
釣具はあるけど釣り餌は現地で確保するか。
今度ルアーとか手作りしたいなぁ。

一応玄関を開ける前に窓から外を覗く。ちなみに外から見たら窓なんて無い。

「…………あの黄色いローブ、山菜マスターだよね?」

5分間トイレにいた。
なのに何故かまだ目視できる距離にいる。
あ、見えなくなった。と思ったら引き返してきた。

まさかこの家の周辺を見回ってるの?
不審者は浅い森でしょうが。
そっちに見回りにいけよ。

「ううぅ……スキルも謎だらけだし、ステータス的に侮れないし……」

……仕方ない。4階に上がる。
ここは各ギルドへの転移門があるからね。

「ムンタリ大陸のドラゴン都市、隠れ支部に行こう。装備はいつもの」

テンプレ装備No.1052
インナー:暗殺者の全身黒タイツ。
頭:心臓麻痺級メデューサのお面。
手:夜営上級者の鉄ヤカン。
足:虫殺しスリッパ

よし。どうせ自分の庭みたいなダンジョンだ。これでいこう。

「夜目も発動させて、と」


転移して一瞬でムンタリ大陸のドラゴン都市、隠れ支部に着いた。

薄暗い。
ギルドの受付には誰もいない。
ここはギルドとは名ばかりの、玄人用の無人ギルドなのだ。受付カウンターの横にある箱に金貨を1枚入れると、洞窟ダンジョンへの扉が開く。あ、前はなかった無人野菜売場がある。まるでコンビニレジ前の饅頭みたいだ。帰りに買おう。



「ヒャッハーーー!  やっぱ貸切ダンジョンはテンション上がるぅーー!」 

地面の虫うぜー!  虫殺しスリッパでマラソンしながら無双する。

足の裏からプチュ、ぶしゅう、ぽき、とか音がする。気持ち悪。洗浄、洗浄。

「あ、奇声コウモリ!」

黒板引っ掻く音を出して威嚇するコウモリだ。
させるか!  心臓麻痺級メデューサのお面を喰らえ!

ボタボタボタ。ほぼ即死。
コウモリが落ちる時はぼた餅がドロップする。おやつフェスティバルの名残だ。回収はしない。放っておけば虫の餌。

げ。ぼた餅で虫が集まってきた。気持ち悪。

「敬え!  このダンジョンの虫は私が飯食わせてきたんだ!  敬ええええ!!」

夜営上級者の鉄ヤカンから熱湯をばら蒔く。虫はぱたぱたひっくり返って動かなくなる。これも回収はしない。放っておけばコウモリの餌。

このヤカンからは40度~100度のお湯が自由に出せる。ちなみにヤカンの蓋の裏は吸盤機能がついており、寂しい一人旅の夜のお供にも使えると鑑定で知っている。この武器を開発した運営の人は絶対病んでる。世も末だ。

「あ、鉱石地帯についた」

手頃な岩をヤカンで殴って粉砕。スカー。何も出てこない。
続いてその辺の岩を蹴りで破壊する。
コロンと何かが出てきた。

「泳ぐ眼、ゲット」

宝玉だが見た目はまんま目玉だ。
常に目がキョロキョロと泳いでいる。
収納に大量にあるが発掘は楽しいのだ。
これはルアー作りの材料にしよう。

目についた岩は蹴りまくって36目玉ゲット。

「ボッシャアアアア!!!」
「よう、ボッシャ。久しぶり」
「ボ……!?」

出てきたボッシャ。
足と口がついた四角い岩だ。
歩くし叫ぶけど素材じゃない。
放っておくとずっと叫んで壁に声を反響させ、モンスターを呼び寄せるので、ヤカンで殴って黙らせる。気絶するけど殺せない。ある意味無敵な岩。

そしていつも黙らせたボッシャに腰をおろして珈琲を飲むのだ。

ダンジョンの中で飲む珈琲は格別。
わざわざ登山用のステンレスマグに移して、雰囲気を楽しむ。

ゲームの中でしていた事と同じ行動をするのは性なのかもしれない。

焚き火でもしてシートをひろげようか。
それなら売るほどあるソーセージも炙ろう。
うん、雰囲気って大事。

ついでにカレーを取りに戻ってソーセージカレーにしようとインビジブルタワーに意識を向けると気付いた……。誰かが私のインビジブルタワーをノックしてる。

家の周りを探知する。
誰も引っ掛からない。
ということは山菜マスターか。

「む……なるほど、インビジブルタワーにかかる雨の量が少ない。小降りになってきたのか」

採取の誘いにきたか。
つーか、既にダンジョンにいるんだが。


仕方ない。焚き火は諦め、転移で戻ってみよう。


家の中に到着。

「リリー!  リリー!!」

ドンドン五月蝿い。
てか透明化してないから家のダメージが凄いな。

現在のタワーの耐久度を鑑定する。
7422/10000【補修可能】

即、補修!
チッ。魔力を5000も持ってかれた。

これ……インビジブルタワーじゃなかったら壊れてるぞ。それなりに頑丈に建てられた貴族の屋敷でも、耐久度500くらいしかないんだからね。
早く止めないと。

「はーい、どうしました?」

玄関に向かい、扉は開けない。

「リリー!?  家にいたのか!」
「はい、刺繍してたら寝ちゃってました」
「……よ、よかった。様子を見にきたら返事がないからっ……まさか家の中に不審者が入ったか、と……気が気じゃなかった」

不審者いる。ずっと家の周りにいる。貴方ですから。

ふぅ。雨乞い発動。

「っきゃ……凄い雨音……また本降りになってきましたね」
「本当だ……それだけこの森が豊かなんだろう。明日はキノコがよく採れるな」
「ほんと!  わーいっ。キノコ大好きー、肉厚でおっきいのも、固くて食感がいい小振りなのも、だーい好きー。今すぐお口一杯に入れて頬張りたーいっ」

スキルが発動して勝手に口が喋ってるだけね。本当に被害を最小にする社交術か?  今のとこ大丈夫だけどさぁ。

「………………明日、沢山、食べさせてあげるから。今は我慢してくれ」
「やったぁ、約束ですよぉ?」
「ああ、必ず」

その日は少し会話して、なかなか帰る素振りがなかったので雨乞い発動させまくったら夜になってようやく山菜マスターは帰った。

なんだこれ……。
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