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3部 人魚と選ばれし番編
5 予想外を越えた
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翌日の朝。
マリアーナさんが経営する巨大養殖場についた。
今日はバイトにきたのだ。
おまけに歩合制で給料がもらえる!
うふふ……楽しみぃ。
「おはようございます! 今日もよろしくお願いします!」
「おう、来たね! ってリリーあんた……凄い匂いだね。大丈夫かい?」
「何がですか?」
あっ……朝ご飯でフィックスさんに作ってもらった濃厚な豚骨ベースの葱たっぷりの超美味しい肉麺食べたから匂っちゃったかー。
何故か昨夜はラーメンに襲われる夢を見たんだよね。お腹が一杯でもう入らないってとこまでラーメンに襲われて、気付いたら朝で超空腹だったんだ。だから4回もおかわりしてしまった。
いけないいけない。洗浄。
ついでに飴玉舐めておこう。
「っ、フィックスの奴……無茶させられてないかい?」
えーと……確かに朝から晩までご飯作ってもらってるから、たまには私がやらないといけないよね。でもフィックスさんのご飯……おぃちぃょぅ!
「実は私、お皿洗いくらいしかやらないんですよ。甘えすぎですよね……」
「……そう、かい。元気ならいいんだよ」
心配そうなマリアーナさんに連れられて淡水オタマナマズの生け簀にきた。
前世で泳いだ25mプールみたいな生け簀。
うお。でっけーおたまじゃくし。
うじゃうじゃいるな。
探知すると……わぉ、生け簀に五百匹はいる。
これナマズなんだよね。
「ここにいるナマズはどれも10年物でね。毎年卵もらってんだ。これが一缶で金貨20枚。高級な卵なんだよ」
「……へぇ」
キャビア的な?
見せられた缶の内容量は50g。
私なら一口で終わるな。
「ほら、あけたよ、食べてみな」
「いいんですか!」
現れたのは真っ赤なプチプチ。
わぁ、とびっ子みたいで美味しそうっ。
指で救って舐めてみる。
「!?」
やばい……前世で食べたフォアグラだ。
あ、しかも鼻に抜ける後味が鳥のレバーペースト風味。私の大好物やんけ。
今世でフォアグラらしきもの、初めて食べた。野生の鳥で肥大したフォアグラ持ってるやついないもんな。
これ、バケットにつけて食べたひ……。
「ナマズとは思えない芳しさで濃厚で味が複雑な卵ですね」
「だろ? 今回はこのナマズから卵を回収してほしいんだ。報酬は回収した卵の1割だよ」
「えー、それ多くないですか? 100kg回収したら10kgですよ? 10kgって……缶にしたら金貨四千枚ですよ?」
「あっはは、最高で15kg回収した奴等がいたが、その記録は2年間塗り替えられてないよっ」
「……うふふ」
塗り替えたろ。
「まずナマズを掴むだろ」
「チェンジ……チェンジ」
「ナマズが鳴いてる!」
「ああ、オタマナマズは鳴くんだ」
そういや黒スッポンも鳴いてたなぁ。
「こうやって腹を上にして、そっと腹部を撫でてやるんだ」
「ほうほう」
「しばらくすれば寝るから……」
「あ、目閉じた」
「そしたらまた腹を上から下に撫でて……」
「……おおっ」
生みたて魚卵の赤いプチプチ。あ、オタマナマズが目をあけた途端、卵を生むのをやめた。
「これで大体60gだね」
聞くと一回寝かせて回収したナマズは来年まで卵を出してくれないらしい。
「こんなもんか。卵を回収したナマズは、隣の生け簀に移しておいてくれ」
「その回収した卵はすぐに缶詰めに?」
「ああ、鮮度のいい内にね」
「……マリアーナさん、本当に回収した卵の1割を報酬に頂けるんですね? 缶でもらえるんですね?」
「ああ、そうだよ?」
「ンフっ……がんばりまぁす」
さぁ、やっか!
まずはマリアーナさんがやったみたいにナマズを優しく手に取って──つるっと滑って生け簀にぼちゃん。
む、ナマズのぬめぬめが手強いな。
慌てちゃいけない。
さぁ、もう一度────3回ぼちゃんした。
「…………」
収納から【全てを掴む手袋】を出す。
実体の無い精霊だろうが透明化した妖精だろうが全てを掴む手袋だ。
逃げられると思うなよ。
さ、掴んだら腹を上にして、そっと撫でてやる。
1分、2分──こいつ5分経っても寝ない。
しかも冷めた目でこちらを見つめながら普通に肺呼吸してやがる。
「チェンジ! チェンジ!」
「…………そうきたか」
ステータスを開いて状態異常魔法を取得。
睡魔、沈黙、混乱、盲目、弱体化、記憶障害、幻痛、なんでもござれだ。
チェンジできると思うなよ。
こっちはフォアグラ食いてーんだ。
極薄く睡魔をかける。
「あ……寝た」
優しく腹を上から下に撫でて……出た出た。
そおっと、そおっと、壊れ物を扱うように、これ以上にないほど優しく慎重に……あ、うそぉ。片手一杯に出てきたぁ。
よしよし、いい子いい子。
とても可愛い。
鑑定すると200g……うっほ!
天に向けて目を閉じて祈る。
ありがとう、ありがとうっ。スキル万歳。
さ、鮮度のいい内に収納しておきましょうかねぇ~、と思ったら横から【目覚めのそよ風】がきてナマズが起きて暴れた。私の手に乗った卵をバチンとヒレで叩き、生け簀にぼちゃん。
「…………」
誰だいま横から風魔法かましてきた奴。
見るとローブを着た青年がいた。
「あっはははっ、その顔! なにその顔! 最高だよ君!」
青年がバカ笑いしてフードが脱げた。
灰色の髪をオールバックにしたお坊ちゃん顔。
ちなみにはたかれた卵、私の顔面に全部飛び散りました。
「ねぇ、君。この養殖場で働いてるのー? ボク、隣国のアルレントから派遣されてきた魔導師なんだ」
「……」
「……ねぇ、聞いてるー? もしかして魔法なんて初めて見た? あはは、びっくりさせちゃった?」
……魔導師。
唇に飛び散った卵をペロリと舐めて鑑定。
ステファン・ロザリード
19歳 魔導師
HP 15533/15600
MP 89088/90074
【スキル】
火魔法/精霊術(風)/空中停止/魅惑の声/魔法障壁/古代術式魔法
雑魚が!
MP低すぎて精霊術も風魔法しか派生してない雑魚が!
「カプルス共和国は海の幸が豊富って聞いてたのに、昨夜なんてどこも品薄でさぁー。せっかく嫌いな船も我慢して乗って来たのに、どうなってんのー?」
青年に状態異常魔法──記憶障害をかける。
これにかかると全ての記憶が消え、1分間しか記憶が持たなくなる。1時間で全て解除されちゃうけどねー。
「…………あれ、ここ……どこ? ボクは……誰?」
顔を洗浄。
ナマズを優しく掴んでうすーく睡魔。
よぅしよぅし、いい子いい子。
卵を回収したら生け簀にぼちゃん。
それの繰り返し。要領も掴めてきた。掌より指で優しく愛撫するとリラックス効果でより早く卵を出してくれる。完全に慣れてくると作業高速化のスキルで回収しまくった。
あ、その辺で頭を抱えながらうろうろしてた青年が正気に戻ったのでまた記憶障害をかける。
この手順で昼までにナマズ五百匹から100kgの卵を回収した。あぁ涎がとまらん……。
「100kg回収したら10kgの報酬で二百缶のところ五百缶も貰えたんです! 最高15kg回収したマリンちゃんとシリンちゃんがドン引きしてたけどマリアーナさんは凄く褒めてくれたんですよ!」
「リリーは凄いね。このパンにつけてお食べ」
「わぁ、薄切りしたバケットだぁ! 軽く炙ってあるじゃないですかぁ…………おいしい、おいちぃ、おぃちぃょぅ!」
「可愛い可愛い。水煮もお食べ」
「ありがとうございます!」
わぁ、アクアパッツァだぁ!
しかもぷくぷく魚だぞ!
お腹ぱんぱんにうま味が詰まった白身魚だ。めちゃ煮込まれててもうゼラチンの域。ニンニクとドライトマトと貝からも濃いエキスが出てる。この出汁がやばい。パンを浸すともっとやばい。
「──、──!」
おおっ、店内が賑わってる。
今日は淡水オタマナマズの魚卵解禁日。この店でも取り扱っているので皆さん食べにきて常時満席。
混んでるので厨房でお昼ご飯を頂いている。
あぁ。野菜に包まれたお肉が柔らかくて舌でほどける。久々に串焼きもいっぱい食べちゃった。焼いてる時のタレが焦げる匂いと油が垂れてジュウ!と鳴る音があかん。
この厨房は匂いと音がやばいのだ。
しかも目の前にエロいフィックスさんまでいて……。
「ひゃ、絶景……」
「……リリぃ、今日は船乗るの?」
おふっ。
いつの間にか背後に移動して、手を私の左右の肩に置いて、頭上に甘く囁かれた。はぅ。脳天に蜂蜜が垂れてきたみたい。
見上げると蠱惑的な笑みを浮かべるフィックスさんがいた。
「乗りたい?」
「はぃ……フィックスさん、に乗りた」
「わかった」
うあぁ……返事と共に熱い舌が入ってくる。はぅん。もっと……。下半身がびしゃびしゃになってきてきゅっとお尻を締め付けた。
「フィックス、少し手伝ってくれないか?」
いきなり掛けられた声に慌てふためき喉の奥まできていたフィックスさんの舌を飲み込んでしまった。
ゴクン、て。
「っ、」
目を見開いてずるんと舌を引き抜いたフィックスさん。
「………………リ、リー」
フィックスさん、頬が真っ赤。
目が潤んでいる。
そして息が荒い。
おまけに両腕で顔を隠して厨房に座り込んだ。
わぁ……わぁ……わぁ……凄いの見た。
「お嬢ちゃん、怖いな……知らないぞ?」
あ、食べ終えた皿を沢山抱えたテリーさんだ。
店が混んでるからフィックスさんに何か頼みにきたんだ。
「あっ……え、えーと、テリーさん? フィックスさんはその、……あの、私にも手伝えることでしょうか?」
「使いを頼みたい。葉物の野菜に、あと何でもいいから牛肉と馬肉が欲しい」
急いで収納から羽衣ほうれん草と深紅レタスを10束ずつ出す、あと闘神ミノタウロスと雷神ペガサスも出す。
「お嬢ちゃん……それは食べ切れないだろう」
えーっと、えっと、それならとさっきのよりは小さい闘神ミノタウロスと雷神ペガサスと入れ換えるとテリーさんが呆れ顔をした。
「あっ、解体! 私、やりますんで、すみません、1分、下さい!」
「……しばらくフィックスは使い物にならないしな。頼む」
「はい!」
収納から【お肉屋さんゾゾの解刀】を出して刀を振り払い、戦神と雷神の首を切り落とす。
血抜きは済んでいるので腹切りして内臓を出す。
宙に蹴り上げた二体とも胴体を切り落とし、落ちてくる瞬間に背中の皮を切り削ぐ。そこからべりっと背ロースを剥がして急いでテリーさんに渡す。
「10kgの牛と10kgの馬です!」
「お嬢ちゃん、凄い光景だ」
「すみませんっ、後でそこらじゅう掃除しときます!」
ああっ、厨房が酷い有り様……。
残りの肉は収納して、洗浄しまくった。
「フィックスさん」
未だ顔を隠して座り込んでいるフィックスさんに、紅茶を淹れながら話し掛けると、ぴくっと肩を揺らした。
「ごめんなさぃ……謝ります。何でもしますから許して下さい」
そっと顔を上げたフィックスさんの前に腰を下ろし、トレーに乗せた紅茶を差し出す。
「なにこれ?」
「色んな衝撃を緩和させる紅茶です。あらゆる状態異常を治す九十九杉の成分が入ってます」
フィックスさんがしゅるっと舌を伸ばして紅茶に触れた瞬間、カップが空になった。
「どうですか? 少しマシになりましたか?」
そおっと肩や背中を擦って顔を覗きこむと、潤んだ目が一瞬だけ視線をよこし、また瞼が伏せられた。睫毛が小刻みに震えている。うぅ……だめだ。腹切りして謝罪しよう。お肉屋さんゾゾの解刀どこいった? あ、まだ床に放置して──。
「リリー……俺ね」
「は、はいっ」
「舌、に……小さな穴が開いてるんだ。針先より小さい穴が……」
「……はい」
まさかさっきので穴が開いた?
私の喉は凶器なのか。もう二度とやらないから。フィックスさぁん。
「そこがね」
「はぃ……」
「そこが…………凄く敏感なんだ……さっき触れられて、初めて知った」
「……へっ? びん、かん?」
そう聞くとフィックスさんの顔が一気に赤く染まった。恥じらうように手で口元を隠す、いや確実に恥ずかしがってるフィックスさん、それを見た数秒後、私はトレーで顔を隠して床でじたばたと悶絶した。
「……悪い子だね、リリぃ」
「ひぇっ、好き、なんでもします、フィックスさんの為ならなんでもするぅう……!」
「……もう」
テリーさんに渡した肉は串焼きにされ、瞬く間に売れていき、何故かテリーさんの判断で完売と同時に店を閉めた。
「テリーごめん」
「……戻ったか? ならいい」
フィックスさんに対してとくに気にしてない様子のテリーさんは、呆れた顔を私に向けた。
「さっきはフィックスの孔を突いたのか?」
「こう? ……なんですかそれ?」
「急所だ」
急所……って。
「……ッフィックスさん! 大丈夫!? どこか痛いとこない!?」
「ないよ」
「だって急所ですよ!? テリーさん、急所に当たった時いつもどうしてます!? 冷やしたり温めたりとか、対処方法を教えて下さい!」
「知らん」
それに俺の急所は舌じゃないからな、とテリーさんがフィックスさんを見た。あ、フィックスさん目そらした。成る程、個人で急所の場所が違うんだ。そりゃ同族とはいえ、知られたくないよね……。
「人間みたいに頭や首とか、そういう急所ではないんですね?」
「ああ。だが弱いところ、だな」
え。急所で弱いところって、それってまさかキンテキ的な……フィックスさんも、敏感なところって言ってたし……。
「その弱点は、自身でもなかなか見付けられないんだが……お嬢ちゃんが見付けたってことは、」
「み、見付けたってことは!?」
「リリぃ」
「? フィックスさん、顔が赤いです。急所が腫れて熱を持ったのかもしれません。すぐに薬を作りますのでフィックスさんはベットに行──」
あれぇ?
目がまわる。
一瞬の間もおかずにフィックスさんの部屋の天井が見えた。
「は、わっ……ぐるぐる」
「……やっぱりリリーは俺の番だね」
「フ、フィックスさ、……?」
「そんな気はしてたけど……嬉しい」
寝たまま後ろからぎゅっと抱き締められ、髪に吐息が吹きかかる。
「愛してるよ」
「ひゃ、っ」
きゃうん。
ぐるぐるしてたら耳に蜂蜜が流れ込んできた。
「……あ、まぁい……蜜がぁ~」
「可愛い……俺のリリぃ。もう髪や皮膚からも、俺の匂いがする。もっと染めたい」
「ひぇ、っ既に……私の体は、フィックスさんのご飯で出来てま、すぅ」
フィックスさんは髪に鼻を埋めて甘く囁いてくる。それが鼓膜から蜂蜜がまわってぐるぐる止まんない。目の前に蜜蜂もブンブンだ。
そんな前後不覚な状態で抱かれて、ずっと耳に蜂蜜を流し込まれて、とろとろになって気付くと夜になっていた。
あと、急所……についてもきちんと説明頂きましたよ。弱点といっても命を脅かすものやキンテキ的なものではないようで、ホッとして今はシーツの中でフィックスさんによしよしされている。
「──でね、でね、フィックスさんが私の初恋なんですよぅ」
「うんうん」
「さっきもエッチだしかっこいぃし……こんなに安心できる彼がいて、無防備になれることが私にはとても幸せなことなんです。……だからさっきはフィックスさんを失ってしまうのではないかと、とても不安でした……」
「ごめんね。さっきはリリーの顔が見れなかった……見ると触れられた舌の感触が蘇って、」
そっと目をふせたフィックスさん。また呼吸が荒くなり、睫毛が揺れている。
「……だ、大丈夫?」
コクンと頷かれたものの、そういやその弱点って、あまり人に知られたくないものではないのかと……例えばテリーさんとか……その事についても聞くと、フィックスさんは遠い目をした。
「大丈夫……なんとなくわかったから。テリーがフィクサーナと会えない間、こうやって思い出して耐えてるんだろうね」
「?」
どうしたんだろ?
『それであの余裕』『精神安定剤』『成る程』とか、ぶつぶつ言ってる。
あ、そういやフィクサーナさんて……。
「あの、テリーさんの奥様って、フィックスさんの育てのお母さん、でしたよね?」
「うん。会いたい?」
「え……か、彼女って、しょ、紹介して、くれるんですかぁー……?」
「ううん、俺の番って、紹介する」
マリアーナさんが経営する巨大養殖場についた。
今日はバイトにきたのだ。
おまけに歩合制で給料がもらえる!
うふふ……楽しみぃ。
「おはようございます! 今日もよろしくお願いします!」
「おう、来たね! ってリリーあんた……凄い匂いだね。大丈夫かい?」
「何がですか?」
あっ……朝ご飯でフィックスさんに作ってもらった濃厚な豚骨ベースの葱たっぷりの超美味しい肉麺食べたから匂っちゃったかー。
何故か昨夜はラーメンに襲われる夢を見たんだよね。お腹が一杯でもう入らないってとこまでラーメンに襲われて、気付いたら朝で超空腹だったんだ。だから4回もおかわりしてしまった。
いけないいけない。洗浄。
ついでに飴玉舐めておこう。
「っ、フィックスの奴……無茶させられてないかい?」
えーと……確かに朝から晩までご飯作ってもらってるから、たまには私がやらないといけないよね。でもフィックスさんのご飯……おぃちぃょぅ!
「実は私、お皿洗いくらいしかやらないんですよ。甘えすぎですよね……」
「……そう、かい。元気ならいいんだよ」
心配そうなマリアーナさんに連れられて淡水オタマナマズの生け簀にきた。
前世で泳いだ25mプールみたいな生け簀。
うお。でっけーおたまじゃくし。
うじゃうじゃいるな。
探知すると……わぉ、生け簀に五百匹はいる。
これナマズなんだよね。
「ここにいるナマズはどれも10年物でね。毎年卵もらってんだ。これが一缶で金貨20枚。高級な卵なんだよ」
「……へぇ」
キャビア的な?
見せられた缶の内容量は50g。
私なら一口で終わるな。
「ほら、あけたよ、食べてみな」
「いいんですか!」
現れたのは真っ赤なプチプチ。
わぁ、とびっ子みたいで美味しそうっ。
指で救って舐めてみる。
「!?」
やばい……前世で食べたフォアグラだ。
あ、しかも鼻に抜ける後味が鳥のレバーペースト風味。私の大好物やんけ。
今世でフォアグラらしきもの、初めて食べた。野生の鳥で肥大したフォアグラ持ってるやついないもんな。
これ、バケットにつけて食べたひ……。
「ナマズとは思えない芳しさで濃厚で味が複雑な卵ですね」
「だろ? 今回はこのナマズから卵を回収してほしいんだ。報酬は回収した卵の1割だよ」
「えー、それ多くないですか? 100kg回収したら10kgですよ? 10kgって……缶にしたら金貨四千枚ですよ?」
「あっはは、最高で15kg回収した奴等がいたが、その記録は2年間塗り替えられてないよっ」
「……うふふ」
塗り替えたろ。
「まずナマズを掴むだろ」
「チェンジ……チェンジ」
「ナマズが鳴いてる!」
「ああ、オタマナマズは鳴くんだ」
そういや黒スッポンも鳴いてたなぁ。
「こうやって腹を上にして、そっと腹部を撫でてやるんだ」
「ほうほう」
「しばらくすれば寝るから……」
「あ、目閉じた」
「そしたらまた腹を上から下に撫でて……」
「……おおっ」
生みたて魚卵の赤いプチプチ。あ、オタマナマズが目をあけた途端、卵を生むのをやめた。
「これで大体60gだね」
聞くと一回寝かせて回収したナマズは来年まで卵を出してくれないらしい。
「こんなもんか。卵を回収したナマズは、隣の生け簀に移しておいてくれ」
「その回収した卵はすぐに缶詰めに?」
「ああ、鮮度のいい内にね」
「……マリアーナさん、本当に回収した卵の1割を報酬に頂けるんですね? 缶でもらえるんですね?」
「ああ、そうだよ?」
「ンフっ……がんばりまぁす」
さぁ、やっか!
まずはマリアーナさんがやったみたいにナマズを優しく手に取って──つるっと滑って生け簀にぼちゃん。
む、ナマズのぬめぬめが手強いな。
慌てちゃいけない。
さぁ、もう一度────3回ぼちゃんした。
「…………」
収納から【全てを掴む手袋】を出す。
実体の無い精霊だろうが透明化した妖精だろうが全てを掴む手袋だ。
逃げられると思うなよ。
さ、掴んだら腹を上にして、そっと撫でてやる。
1分、2分──こいつ5分経っても寝ない。
しかも冷めた目でこちらを見つめながら普通に肺呼吸してやがる。
「チェンジ! チェンジ!」
「…………そうきたか」
ステータスを開いて状態異常魔法を取得。
睡魔、沈黙、混乱、盲目、弱体化、記憶障害、幻痛、なんでもござれだ。
チェンジできると思うなよ。
こっちはフォアグラ食いてーんだ。
極薄く睡魔をかける。
「あ……寝た」
優しく腹を上から下に撫でて……出た出た。
そおっと、そおっと、壊れ物を扱うように、これ以上にないほど優しく慎重に……あ、うそぉ。片手一杯に出てきたぁ。
よしよし、いい子いい子。
とても可愛い。
鑑定すると200g……うっほ!
天に向けて目を閉じて祈る。
ありがとう、ありがとうっ。スキル万歳。
さ、鮮度のいい内に収納しておきましょうかねぇ~、と思ったら横から【目覚めのそよ風】がきてナマズが起きて暴れた。私の手に乗った卵をバチンとヒレで叩き、生け簀にぼちゃん。
「…………」
誰だいま横から風魔法かましてきた奴。
見るとローブを着た青年がいた。
「あっはははっ、その顔! なにその顔! 最高だよ君!」
青年がバカ笑いしてフードが脱げた。
灰色の髪をオールバックにしたお坊ちゃん顔。
ちなみにはたかれた卵、私の顔面に全部飛び散りました。
「ねぇ、君。この養殖場で働いてるのー? ボク、隣国のアルレントから派遣されてきた魔導師なんだ」
「……」
「……ねぇ、聞いてるー? もしかして魔法なんて初めて見た? あはは、びっくりさせちゃった?」
……魔導師。
唇に飛び散った卵をペロリと舐めて鑑定。
ステファン・ロザリード
19歳 魔導師
HP 15533/15600
MP 89088/90074
【スキル】
火魔法/精霊術(風)/空中停止/魅惑の声/魔法障壁/古代術式魔法
雑魚が!
MP低すぎて精霊術も風魔法しか派生してない雑魚が!
「カプルス共和国は海の幸が豊富って聞いてたのに、昨夜なんてどこも品薄でさぁー。せっかく嫌いな船も我慢して乗って来たのに、どうなってんのー?」
青年に状態異常魔法──記憶障害をかける。
これにかかると全ての記憶が消え、1分間しか記憶が持たなくなる。1時間で全て解除されちゃうけどねー。
「…………あれ、ここ……どこ? ボクは……誰?」
顔を洗浄。
ナマズを優しく掴んでうすーく睡魔。
よぅしよぅし、いい子いい子。
卵を回収したら生け簀にぼちゃん。
それの繰り返し。要領も掴めてきた。掌より指で優しく愛撫するとリラックス効果でより早く卵を出してくれる。完全に慣れてくると作業高速化のスキルで回収しまくった。
あ、その辺で頭を抱えながらうろうろしてた青年が正気に戻ったのでまた記憶障害をかける。
この手順で昼までにナマズ五百匹から100kgの卵を回収した。あぁ涎がとまらん……。
「100kg回収したら10kgの報酬で二百缶のところ五百缶も貰えたんです! 最高15kg回収したマリンちゃんとシリンちゃんがドン引きしてたけどマリアーナさんは凄く褒めてくれたんですよ!」
「リリーは凄いね。このパンにつけてお食べ」
「わぁ、薄切りしたバケットだぁ! 軽く炙ってあるじゃないですかぁ…………おいしい、おいちぃ、おぃちぃょぅ!」
「可愛い可愛い。水煮もお食べ」
「ありがとうございます!」
わぁ、アクアパッツァだぁ!
しかもぷくぷく魚だぞ!
お腹ぱんぱんにうま味が詰まった白身魚だ。めちゃ煮込まれててもうゼラチンの域。ニンニクとドライトマトと貝からも濃いエキスが出てる。この出汁がやばい。パンを浸すともっとやばい。
「──、──!」
おおっ、店内が賑わってる。
今日は淡水オタマナマズの魚卵解禁日。この店でも取り扱っているので皆さん食べにきて常時満席。
混んでるので厨房でお昼ご飯を頂いている。
あぁ。野菜に包まれたお肉が柔らかくて舌でほどける。久々に串焼きもいっぱい食べちゃった。焼いてる時のタレが焦げる匂いと油が垂れてジュウ!と鳴る音があかん。
この厨房は匂いと音がやばいのだ。
しかも目の前にエロいフィックスさんまでいて……。
「ひゃ、絶景……」
「……リリぃ、今日は船乗るの?」
おふっ。
いつの間にか背後に移動して、手を私の左右の肩に置いて、頭上に甘く囁かれた。はぅ。脳天に蜂蜜が垂れてきたみたい。
見上げると蠱惑的な笑みを浮かべるフィックスさんがいた。
「乗りたい?」
「はぃ……フィックスさん、に乗りた」
「わかった」
うあぁ……返事と共に熱い舌が入ってくる。はぅん。もっと……。下半身がびしゃびしゃになってきてきゅっとお尻を締め付けた。
「フィックス、少し手伝ってくれないか?」
いきなり掛けられた声に慌てふためき喉の奥まできていたフィックスさんの舌を飲み込んでしまった。
ゴクン、て。
「っ、」
目を見開いてずるんと舌を引き抜いたフィックスさん。
「………………リ、リー」
フィックスさん、頬が真っ赤。
目が潤んでいる。
そして息が荒い。
おまけに両腕で顔を隠して厨房に座り込んだ。
わぁ……わぁ……わぁ……凄いの見た。
「お嬢ちゃん、怖いな……知らないぞ?」
あ、食べ終えた皿を沢山抱えたテリーさんだ。
店が混んでるからフィックスさんに何か頼みにきたんだ。
「あっ……え、えーと、テリーさん? フィックスさんはその、……あの、私にも手伝えることでしょうか?」
「使いを頼みたい。葉物の野菜に、あと何でもいいから牛肉と馬肉が欲しい」
急いで収納から羽衣ほうれん草と深紅レタスを10束ずつ出す、あと闘神ミノタウロスと雷神ペガサスも出す。
「お嬢ちゃん……それは食べ切れないだろう」
えーっと、えっと、それならとさっきのよりは小さい闘神ミノタウロスと雷神ペガサスと入れ換えるとテリーさんが呆れ顔をした。
「あっ、解体! 私、やりますんで、すみません、1分、下さい!」
「……しばらくフィックスは使い物にならないしな。頼む」
「はい!」
収納から【お肉屋さんゾゾの解刀】を出して刀を振り払い、戦神と雷神の首を切り落とす。
血抜きは済んでいるので腹切りして内臓を出す。
宙に蹴り上げた二体とも胴体を切り落とし、落ちてくる瞬間に背中の皮を切り削ぐ。そこからべりっと背ロースを剥がして急いでテリーさんに渡す。
「10kgの牛と10kgの馬です!」
「お嬢ちゃん、凄い光景だ」
「すみませんっ、後でそこらじゅう掃除しときます!」
ああっ、厨房が酷い有り様……。
残りの肉は収納して、洗浄しまくった。
「フィックスさん」
未だ顔を隠して座り込んでいるフィックスさんに、紅茶を淹れながら話し掛けると、ぴくっと肩を揺らした。
「ごめんなさぃ……謝ります。何でもしますから許して下さい」
そっと顔を上げたフィックスさんの前に腰を下ろし、トレーに乗せた紅茶を差し出す。
「なにこれ?」
「色んな衝撃を緩和させる紅茶です。あらゆる状態異常を治す九十九杉の成分が入ってます」
フィックスさんがしゅるっと舌を伸ばして紅茶に触れた瞬間、カップが空になった。
「どうですか? 少しマシになりましたか?」
そおっと肩や背中を擦って顔を覗きこむと、潤んだ目が一瞬だけ視線をよこし、また瞼が伏せられた。睫毛が小刻みに震えている。うぅ……だめだ。腹切りして謝罪しよう。お肉屋さんゾゾの解刀どこいった? あ、まだ床に放置して──。
「リリー……俺ね」
「は、はいっ」
「舌、に……小さな穴が開いてるんだ。針先より小さい穴が……」
「……はい」
まさかさっきので穴が開いた?
私の喉は凶器なのか。もう二度とやらないから。フィックスさぁん。
「そこがね」
「はぃ……」
「そこが…………凄く敏感なんだ……さっき触れられて、初めて知った」
「……へっ? びん、かん?」
そう聞くとフィックスさんの顔が一気に赤く染まった。恥じらうように手で口元を隠す、いや確実に恥ずかしがってるフィックスさん、それを見た数秒後、私はトレーで顔を隠して床でじたばたと悶絶した。
「……悪い子だね、リリぃ」
「ひぇっ、好き、なんでもします、フィックスさんの為ならなんでもするぅう……!」
「……もう」
テリーさんに渡した肉は串焼きにされ、瞬く間に売れていき、何故かテリーさんの判断で完売と同時に店を閉めた。
「テリーごめん」
「……戻ったか? ならいい」
フィックスさんに対してとくに気にしてない様子のテリーさんは、呆れた顔を私に向けた。
「さっきはフィックスの孔を突いたのか?」
「こう? ……なんですかそれ?」
「急所だ」
急所……って。
「……ッフィックスさん! 大丈夫!? どこか痛いとこない!?」
「ないよ」
「だって急所ですよ!? テリーさん、急所に当たった時いつもどうしてます!? 冷やしたり温めたりとか、対処方法を教えて下さい!」
「知らん」
それに俺の急所は舌じゃないからな、とテリーさんがフィックスさんを見た。あ、フィックスさん目そらした。成る程、個人で急所の場所が違うんだ。そりゃ同族とはいえ、知られたくないよね……。
「人間みたいに頭や首とか、そういう急所ではないんですね?」
「ああ。だが弱いところ、だな」
え。急所で弱いところって、それってまさかキンテキ的な……フィックスさんも、敏感なところって言ってたし……。
「その弱点は、自身でもなかなか見付けられないんだが……お嬢ちゃんが見付けたってことは、」
「み、見付けたってことは!?」
「リリぃ」
「? フィックスさん、顔が赤いです。急所が腫れて熱を持ったのかもしれません。すぐに薬を作りますのでフィックスさんはベットに行──」
あれぇ?
目がまわる。
一瞬の間もおかずにフィックスさんの部屋の天井が見えた。
「は、わっ……ぐるぐる」
「……やっぱりリリーは俺の番だね」
「フ、フィックスさ、……?」
「そんな気はしてたけど……嬉しい」
寝たまま後ろからぎゅっと抱き締められ、髪に吐息が吹きかかる。
「愛してるよ」
「ひゃ、っ」
きゃうん。
ぐるぐるしてたら耳に蜂蜜が流れ込んできた。
「……あ、まぁい……蜜がぁ~」
「可愛い……俺のリリぃ。もう髪や皮膚からも、俺の匂いがする。もっと染めたい」
「ひぇ、っ既に……私の体は、フィックスさんのご飯で出来てま、すぅ」
フィックスさんは髪に鼻を埋めて甘く囁いてくる。それが鼓膜から蜂蜜がまわってぐるぐる止まんない。目の前に蜜蜂もブンブンだ。
そんな前後不覚な状態で抱かれて、ずっと耳に蜂蜜を流し込まれて、とろとろになって気付くと夜になっていた。
あと、急所……についてもきちんと説明頂きましたよ。弱点といっても命を脅かすものやキンテキ的なものではないようで、ホッとして今はシーツの中でフィックスさんによしよしされている。
「──でね、でね、フィックスさんが私の初恋なんですよぅ」
「うんうん」
「さっきもエッチだしかっこいぃし……こんなに安心できる彼がいて、無防備になれることが私にはとても幸せなことなんです。……だからさっきはフィックスさんを失ってしまうのではないかと、とても不安でした……」
「ごめんね。さっきはリリーの顔が見れなかった……見ると触れられた舌の感触が蘇って、」
そっと目をふせたフィックスさん。また呼吸が荒くなり、睫毛が揺れている。
「……だ、大丈夫?」
コクンと頷かれたものの、そういやその弱点って、あまり人に知られたくないものではないのかと……例えばテリーさんとか……その事についても聞くと、フィックスさんは遠い目をした。
「大丈夫……なんとなくわかったから。テリーがフィクサーナと会えない間、こうやって思い出して耐えてるんだろうね」
「?」
どうしたんだろ?
『それであの余裕』『精神安定剤』『成る程』とか、ぶつぶつ言ってる。
あ、そういやフィクサーナさんて……。
「あの、テリーさんの奥様って、フィックスさんの育てのお母さん、でしたよね?」
「うん。会いたい?」
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「ううん、俺の番って、紹介する」
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