悪役令嬢は嫌なので、放浪して好き勝手します

cqrijy

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3部 人魚と選ばれし番編

4 お手伝い

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翌日。
ムンタリ大陸ドラゴン都市。
沈没船探索3回目。
この前見つけた3隻から様々なデザインの古代魔石が出てきた。

目を閉じて祈る少年。
美しい貴婦人の横顔。
幼子を抱くシスター。
薔薇に包まれたエンブレム。
他にも細工の凝った植物の蔦や、シンプルで規則的な模様が彫られたもの、装飾は無く花や星の形になったもの、色々ゲットした。

素敵すぎる。
飾るだけでも絵になる。
どれもじっくり眺めて撫で撫でしてから収納。

さて、船に戻って紅茶でも飲みますか!



「お。まだ金剛龍がとんでるな」

今日は転移してきても飛竜がいなかった。
ずっと金剛龍が一体だけで上空を旋回している。

ん。空中停止した。

ブレスでも吐く準備か?
私は紅茶にミルクを淹れる準備をする。

「そなた……何故この大陸にきた?」

結界と隠密だけど、やっぱり龍系は気配を探れるんだね。

鯛焼きをパクつきながら金剛龍を見上げる。

「そこにいるのだろう?」

おるけど。

「何故応答しない?  我はもうそなたを攻撃しない。酷い目に合ったからな」

確かに緊縛プレイの痕が痛々しい。
でも鱗は再生するからね。

隠密を解除して、紅茶を飲む。

「……やはりいたか」
「なんの用ですか?  私はドラゴンとか一切興味が無いので、用が済んだら帰ります。だから身の上話とか、世間話とか、お願い事とか、そういうのは聞きませんよ?  そちらも聞かないで下さいね」
「…………名を、教えてほしい。それだけでいい」
「ドラゴン系はいつも先制攻撃してくるくせに、負けそうになった時とか、死にそうになった時とか、勝手に契約しようと名前を聞いてくるのでうざいです」
「……おい待て。今までどれだけ倒してきたのだ?」
「そんなの覚えてませんよ。いちいち聞かないで下さい。一服したら帰りますんで」

煙草に火をつけてひと吸い。

ドラゴンが持ち掛けてくる契約というのは、平和条約みたいなものだ。君の邪魔はしないから、この界隈で見掛けても私を攻撃しないでね、その代わり足になるよ、って契約。

名前を教えると契約完了になるが、ドラゴンの素材は高値で売れるのだ。瀕死まで追い詰めないと契約を持ち掛けてこないが、討伐によるアイテムや回復薬の持ち出しも痛手だ。元をとるには殺るしかないし、私は殺ったことしかない。
あ、前世ゲームでね。

「……また来るのか?」
「あと6隻残ってるので、そのうち。それが済んだら消えます」
「では忠告しておこう。この海には人魚の番を探している腐鮫がいる。百年も前にこの界隈の人魚はそいつに全て食い殺された。そなたは長く潜れるが人間だ。腐鮫に人魚と思われぬよう気をつけることだ」
「腐鮫ですか。なら見かけたら浄化しときます」
「……フッ、ハハ……頼もしいことよ」

腐鮫……なにかしらの呪いで鮫にされたドラゴンのことだ。おまけにゾンビ。
てか鮫につがいなんていない。
腐鮫にされたドラゴンに、人魚の番がいたのだろう。それをいつまでも探し求めてこの海をさ迷ってるのかもしれない。

う~ん。海のロマンやねぇ。

「じゃ、そろそろ帰るんで」
「ではそなたがこの船にいる間は、我が上空を見張っていてやろう。そなたを邪魔する者なきよう、このリィヤ、そなたの助けとなる!」

は?

「ではさらばだ!」

空の彼方へ消えていった金剛龍。


よし、やっと消えたか。
上空に金剛龍がいるとお魚ちゃんあまり来ないから帰ってほしかったんだよね。
まだ2時だ。漁でもすっか!







ちょうど5時。
ささっとフィックスさんのお部屋に転移!
なんか転移する時って、変なポーズとっちゃうんだよね。握り拳でシャッ!みたいな。

とりあえず全身を洗浄!
収納から夢見山羊のモコモコピンクパジャマに早着替え。上はパーカーで、下は半パン。モコモコな靴下とモコモコなスリッパもついてる。
で、猫耳カチューシャで素早くメイクして、収納。

ついでにゆるふわパーマをゆるゆるな三つ編みにした。ヘアゴムはキャンディーの形のやつ。

昨日行為の後にフィックスさんとお風呂に入って、上がったあとモコモコグリーンパジャマ着たら襲われたんだよね。
あぁ……今日も期待してしまう。
思い出しただけでお尻にきゅっと力が入る。

さ、お土産の入った紙袋を抱えて一階におりよう。
混んでたらご飯だけ貰って部屋で食べよー。




「おかえりリリー」
「フィックスさぁん、ただいま戻りましたぁー」

腰を引き寄せられて額と額を合わせた。

「今日はどうだった?」
「もう古代魔石の宝庫で金剛龍を騙して帰らせたら百眼磯巾着の大群が三隻の沈没船に産卵に押し寄せて百黄卵たくさんゲットしてきましたよー」

近くにいた従業員さんにこれ皆で食べてと百眼磯巾着が産卵した百黄卵入りの紙袋を渡す。てかこの店の眷属の皆さん、全員大好物が卵ってね。可愛すぎでしょ。

「お嬢ちゃん、もう声を潜めろとは言わないから、せめてこっちに意識を向けてくれないか?」

あ、テリーさん!
入り口のドアに背を預けて呆れ顔をしている。

「昨夜のモコモコ」
「ひゃ、っ」

フィックスさんが私のパジャマに顔を埋める。はい、今日もモコモコパジャマです。
うひゃぁ、ぐりぐりされて擽ったぁい。

……ってあれ?
視線を感じて店内を見ると全員身なりの良い格好で、耳や尻尾がついている。獣人が15人もいるぞ。そして人間のお客さんがひとりもいない。なにこの獣人率。

げ。
ビィセェス王子もおるやんけ。
なんでやねん。

「やはり……番、だ」

ビィセェス王子。
私を見て立ち上がりました。
目が血走っております。
前世で見たエイリアンみたいな涎がだらだらで、まるで獲物に襲いかかる直前のように歯茎を見せた。
気持ち悪。

「……この匂い、」
「っ、ビィセェス様!」

くわっと鬼のような形相になり、数人の配下に押さえ付けられるようにつかまれて、また席に戻されていた。

「そんなっ……何故……昨日嗅いだ時は、雄の匂いなんてついていなかった!」
「ビィセェス様!  ……今は、どうか!」

うわ。この匂い。
獣臭。昨夜のだ。
獣人全員から私に視線が集まった。
何故か視線が集まるとその匂いが私に集中した。
土の匂いと獣臭=動物園みたいなね。
なんやねんもう皆してその懇願するような顔。ペットショップの売れ残りじゃあるまいし──あかん。臭いがきつい。バレないようそっと口呼吸をすると、テリーさんが咳払いをした。途端、獣人たちがキャン!と頭を抱えてテーブルに突っ伏せた。

「手伝おうか?」

あ、フィックスさんが私のパジャマから顔を上げると、獣人達がいる席からガタガタと尋常じゃない摩擦音が響いて、そのあといつものお店の匂いに戻った。

「……わ、我々は……ビィセェス様と食事に、この店にきた、だけだ……他意は、ない……」
「そう。注文は?」
「ぜ、全員にビールを……」

…………ふむ。
カウンターには誰も座っていなかったが、いつもの席にはつかず厨房の一番奥にある席に引っ込んだ。流石の抜けてる私でもそろそろ察します。

あれは獣人大戦争だ!

なーんちゃって♪

さ、ご飯ご飯♪

「あ、百黄卵おいしいですか?」
「我々、昇天しそうです」
「皆さん卵を生で丸のみにするの好きなんですねー」

あ、ご飯が運ばれてきたー!
今日はフィックスさん、帰ってきたら月下葉があるよって言ってたけど、月下花に月下蕾もあるじゃないかぁ……はぅぅ……稀少すぎて昇天しそぅ。

これ、海中で月の光を浴びて育つ野菜なのよー!

「食前酒もどうぞ。蕾に合いますよ」
「ありがとうごさいます!」
「葉の煮浸しに花を軽く揚げたもの、おかわりもありますので」
「わぁ!  なにこれ美味しい!  おいしい!  おいちぃよう!」

揚げ物は海塩パウダーかけると更にうまあぁぁ。前世日本人の私からしたら性癖ど真ん中のご飯やんけ!
この透き通ったお酒おぃちぃ。
あ、鑑定したら東ガント海の漣酒だ。
超辛口だぞぉ。とまんない。

「スープもお食べ」
「ありがとうございます!」

わぁ、フィックスさんが海鮮汁を持ってきてくれた。お椀からはみ出す豪腕蟹のハサミが入ってるぅー!
これ、食べたかったの!
中身が肉厚で食べごたえあるぅ。
濃厚な蟹ミソが溶け込んだ出汁が五臓六腑を満たしていくぅぅ。

「ふぁ、ぁあっ」
「そんなえっちな顔しないで」
「フィックスさんのせいです。責任とって下さい」
「いいよ……可愛い」


あぁ……海鮮出汁入りの卵焼きも翠豆を甘く煮たのも全部美味しかったなぁ。最後に熱々の麺を啜りながらスープも飲み干した。

「ごっちそうさまでーすっ!」

よし、皿洗いは任せろ!
と思ったらグラスしか溜まってなかった。
蝶のように舞いながらそこらじゅう洗浄していって、終いにはやることがなくなったので従業員の皆さんと駄弁りながら卵ネタに花を咲かせていると呆れ顔のテリーさんがこちらを見ていた。やばっ。

「ああっ、すみません……部外者が厨房に入り浸って……!」
「初めははっきりした物言いのしっかりした印象だったが、本当に抜けているんだな。だがフィックスにはそれがいいんだろう」
「リリーは可愛いからね。おいで」

フィックスさんに手を引かれてがらんとした店内の客席に座った。

そしてテーブルを挟んだ目の前にはビィセェス王子が一人で座っていた。なんでやねん。

「食後のオレンジパイがあるよ」
「ひゃほーい、食べます!」
「お嬢ちゃん、いやフィックス、お前も駄目だぞ」

なんとオレンジパイ、一台届きました。
香りでもうあかん。

「あ、切る切る、私やるー」
「リリーは座ってて。話をしないとね」
「ん?」

フィックスさんが目をやったビィセェス王子を見る。
青銀の髪が逆立って小刻みに震えている。顔色も真っ青だし。
それにしても脂汗が凄い。洗浄したろか?

「……あの、これは何の話の場でしょうか?」

テリーさんを見ると煙草に火を点けてから言った。

「ふぅー……そんな大層な場じゃない。ただ会話するだけでいい」
「はぁ……会話を?」

もっと脂汗をかき出したビィセェス王子に話し掛けた。

「あの、そちらの方。私に何か御用でしょうか?」
「私はビィセェス・リオ・バーダス……このカプルス共和国の王族だ……っ、そして君は、私の番だ!」

いや、ちゃうし。
お前の番はヒロインのマーガレット・パステルだよ。

「王族、ですか……」
「そうだ」
「ここって共和制の国で君主はいないはずですが、王族ってことは王侯貴族のように支配者階級に属するんですか?」
「それは違う。我々は獣人。古よりカプルス共和国を護る辺境伯でもあり、辺境に戻れば一国の王子でもある。君主国が攻めてきた場合、我々はカプルス共和国の主となり、戦う義務がある」

よく解らんが、アマリリスの記憶と掛け合わせてみたところ、前世でいう米軍みたいなものだと理解した。

「騎士団みたいなものですか?」
「ああ、役割は同じだ」
「スタンピードが起こったら魔獣と戦うんですか?」
「その通りだ。この国には魔法が使える人族が少ない。だから我々獣人が護っている」
「それで今日はたまの休みに外食でもとこのお店にいらしたんですね」
「ち、違う!  私は君の番なんだ……!」

いや、ちゃうし。
だからお前の番はヒロインのマーガレット・パステルだって。これ、公式情報だから。

「番ってなんですか?」
「……雄と雌の、1対だ」
「そうですか」
「そうだっ……私は、番として正式に君に求愛する。そして連れ帰る」
「え、どこに?」
「王宮だ」
「どうして?」
「どうしてって……君が私の番だからだ」
「私はただの平民ですよ。どうして初対面の王子に連れてかれなくちゃいけないんですか?」
「っ、な!」
「高貴な人は頭が賢いから説明が簡素なんですね。平民の私でも解るように言ってもらえないでしょうか?」
「…………っ、番とは、理屈じゃない。本能で求めるものなんだ。私の本能が、君を求めた。それだけだ」
「それって片方が求めたら番にされちゃうの?  貴方のその説明だと、モテる人なら番が大勢いることになりますが、雄と雌の1対ならそういうことじゃないですよね?」
「……そ、そうだが。番同士は惹かれ合うんだ。出会っただけでお互いを求めて止まなくなる。私は君の匂いだけで番だと解った。姿を見て確信した。君が私の番であることは間違いない」
「番同士は惹かれ合う?  私は貴方を求めてないんですが、貴方は私を求めている。これだと番の定義に当てはまりませんよね?  おかしくないですか?」
「……そ、そんな筈は」
「若い男が女の体を求めるように、貴方は私を見て一般的な欲を抱いたんじゃないですか?  あ、それは後ろめたいことではないので、むしろ健康ですね」
「……そ、そんな!  違う、この衝動はそんなものじゃない!  もう少し時間をくれっ……しばらく二人で過ごせばっ、きっと君も私が番だと解るだろう!」
「先程の貴方は素性も知らない私を見てたった数秒で目が血走って呼吸を荒げて涎を垂らしていました。それが互いに求め合う番に対する行動で、番だと認識して体が反応するまでの時間だとしたら、私はさっきからこんなに貴方と視線を合わせて話しているのに、姿を見て声を聞いて匂いを嗅いでもなんの反応も出ないんですが──これを覆す言葉はお持ちですか?」
「っ、………………な、い」

ビィセェス王子がテーブルに崩れ落ちた。

「で、も……君が、番じゃないなら……この衝動は……一体……?」
「そう気を落とさないで下さい。いつかきっと番に出会えますよ。諦めずに探してみて下さい。私に出来るのはその助言くらいなので」
「……助言、とは……?」
「カプルス共和国は広大ですが、人を探すなら人口が多い国から始めると効率がいいですよ。隣国アルレントなんてお奨めですね。この大陸で一番でかい国じゃないですか」
「…………あ、ああ。ありがとう」

そこでテリーさんが店の外で待機していた獣人配下を呼ぶと、ビクビクしながらビィセェス王子を連れていった。

よし、帰ったな。
アルレントでやり直してこい。

「お嬢ちゃん、やっぱりはっきりとした物言いでしっかりしているな」
「ど、どうも……」

だってもう言ってることがストーカーなんだもん。本能が求めたから連れ帰るって、日本じゃ通用しねーぞ。

さ、オレンジパイ食べよ。
そう思ってフォークを手に横を見たらオレンジパイが微塵切りになっていた。
いや、既にミンチだ。

「……フィックスさん」
「うん?」
「スプーン欲しいです」
「いいよ」

だから私が切るって言ったのに。








「ぁ、あ、ぁあんっ、フィックスさぁん」

強くて重い。
一回の腰の打ち付けで、すぐに達してしまう。
ずるっと引き抜かれて、またすぐに次の波がくる。

今夜はやけに激しい。オレンジパイを食べ終えたらすぐに襲われたのだが、こんなに熱くて太いの、まるで発情期中のあの最後の3日間、ベットから出してもらえなかった時の異常だったあの感じと似てる。

「ァアアアっ!」
「あぁ……わかった。リリーが発情期なんだね。おかしいと思ったんだ」
「ふ、ぁ、ぁあっ」
「……俺の匂いが付いてるのに、あんな犬が寄ってきたからさぁ」

耳元に怒気まじりの吐息が吹きかかり肌がビリビリする。それすらも気持ち良く感じてしまって、思考が真っ白になる。あぁ……また次の波がくる。

「……んッあああっ!」
「さっきはごめんね。あのパイ、食べづらかったでしょ?  いつぐちゃぐちゃにしてやろうか考えてたら、切りすぎちゃった」
「っ、はぁはぁ、ん、はっ」

あぁ……もうなに言われてるのかすら解らない。解らないけどクスクスと笑う低い声が鼓膜から子宮に伝わってお腹がきゅんきゅんする。
早く、早く注いで欲しい。沢山注いで欲しい。

「昨日も、あの犬が寄ってきて怖がらせちゃってたんだね」
「ンっ、ぁあああっ!」
「これからはリリーに発情期がきてもすぐに俺の匂いを一番奥に重ねるから、大丈夫だよ。……聞こえてる、リリー?」
「っ、ふッ、はぁ、ぁ……ふぃくしゅしゃ、ぁん……からだ、あつ、いぃ」
「中に欲しい……?」
「ぁああっ……欲しいっ、ずっとほしいっ……!」
「このまま朝まで一番奥でする?」
「す、りゅ……ずっと、してっ……!」
「可愛い……リリぃ」

わぁ……目がちかちかする。
お部屋真っ暗なのに、フィックスさんの満月みたいな真ん丸お目々が眩しい。髪の蛇さんも眼が光ってちかちかする。

「リリーの髪、俺の眼で反射して、キラキラして凄く綺麗……ふにゃふにゃになったリリーの顔も丸見えだよ」
「ふぃ、くしゅしゃぁん……頭、なか、溶けて、どろどろぉ……ことばぁ、わかんなぁい……」
「ふふ……可愛い」

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